本記事では、第二種電気工事士筆記試験のうち「令和2年度下期(午前) 問1~10」について解説する。
問1
図のような直流回路に流れる電流I[A]は。
イ.$1$ ロ.$2$ ハ.$4$ ニ.$8$
解説
次の図のように、合成抵抗を順に計算していく。
まず、①の部分の計算をすると、$4\Omega$の抵抗が並列で2つあるから、この部分の合成抵抗は$2\Omega$となる。
次に、②の部分の計算をすると、$2\Omega$の抵抗が直列で2つあるから、合成抵抗は$4\Omega$となる。
さらに、③の部分の計算をすると、$4\Omega$と$4\Omega$の抵抗が並列となっていることから、合成抵抗は$2\Omega$となる。
したがって、残りの$2\Omega$は直列となっているから、回路全体の合成抵抗は$4\Omega$となる。
電流$I$はオームの法則により、
$$I=\frac{16}{4}=\boldsymbol{4\mathrm{A}}$$
よって、「ハ」が正解となる。
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問2
$\mathrm{A,B}$ $2$本の同材質の銅線がある。$\mathrm{A}$は直径$1.6\mathrm{mm}$,長さ$20\mathrm{m}$,$\mathrm{B}$は直径$3.2\mathrm{mm}$,長さ$40\mathrm{m}$である。
$\mathrm{A}$の抵抗は$\mathrm{B}$の抵抗の何倍か。
イ.$2$ ロ.$3$ ハ.$4$ ニ.$5$
解説
電線の抵抗は$R=\displaystyle{\frac{4\rho L}{\pi D^2}}$で求めることができる。
各銅線の抵抗は、
$$\begin{align*}
A&:\frac{4\rho\times20}{\pi\times(1.6\times10^{-3})^2}=\frac{80\rho}{2.56\pi}\times10^6\\\\
B&:\frac{4\rho\times40}{\pi\times(3.2\times10^{-3})^2}=\frac{160\rho}{10.24\pi}\times10^6
\end{align*}$$
2つの抵抗の比を求めると
$$\frac{\displaystyle{\frac{80\rho}{2.56\pi}\times10^6}}{\displaystyle{\frac{160\rho}{10.24\pi}\times10^6}}=\boldsymbol{2}$$
よって「イ」が正解となる。
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問3
電線の接続不良により、接続点の接触抵抗が$0.2\Omega$となった。
この電線に$15\mathrm{A}$の電流が流れると、接続点から1時間に発生する熱量$[\mathrm{kJ}]$は。
ただし、接触抵抗の値は変化しないものとする。
イ.$11$ ロ.$45$ ハ.$72$ ニ.$162$
解説
電線の接続点の接触抵抗を$R[\Omega]$,流れる電流を$I[\mathrm{A}]$,流れた時間を$t[\mathrm{s}]$とすると、その点に発生する熱量は$W=I^2Rt[\mathrm{J}]$で表される。
したがって、発生熱量$W$は、
$$W=15^2\times0.2\times3600=162000\mathrm{J}\rightarrow\boldsymbol{162\mathrm{kJ}}$$
よって「ニ」が正解となる。
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類題
問4
図のような交流回路の力率$[\%]$を示す式は。
イ.$\displaystyle{\frac{100RX}{R^2+X^2}}$ ロ.$\displaystyle{\frac{100R}{\sqrt{R^2+X^2}}}$ ハ.$\displaystyle{\frac{100X}{\sqrt{R^2+X^2}}}$ ニ.$\displaystyle{\frac{100R}{R+X}}$
解説
電源電圧を$V$とすると、回路に流れる電流の大きさ$I$は、
$$I=\frac{V}{\sqrt{R^2+X^2}}$$
また、抵抗$R$で消費される電力(有効電力)$P$は、
$$P=RI^2=\frac{RV^2}{R^2+X^2}$$
さらに、皮相電力(みかけの電力)$S$は、
$$S=\sqrt{R^2+X^2}I^2=\frac{\sqrt{R^2+X^2}V^2}{R^2+X^2}$$
力率はこの有効電力$P$と皮相電力$S$の比率であるから、回路の力率$\cos\theta[\%]$は、
$$\begin{align*}
\cos\theta&=\frac{P}{S}\times100\\\\
&=\boldsymbol{\frac{100R}{\sqrt{R^2+X^2}}}
\end{align*}$$
よって「ロ」が正解となる。
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調査中
問5
定格電圧$V[\mathrm{V}]$,定格電流$I[\mathrm{A}]$の三相誘導電動機を定格状態で時間$t[\mathrm{h}]$の間、連続運転したところ、消費電力量が$W[\mathrm{kW\cdot h}]$であった。
この電動機の力率$[\%]$を表す式は。
イ.$\displaystyle{\frac{W}{3VIt}}\times10^5$ ロ.$\displaystyle{\frac{\sqrt{3}VI}{Wt}}\times10^5$ ハ.$\displaystyle{\frac{3VI}{W}}\times10^5$ ニ.$\displaystyle{\frac{W}{\sqrt{3}VIt}}\times10^5$
解説
三相誘導電動機の消費電力量$W$は、線間電圧を$V_l$、線電流を$I_l$,力率を$\cos\theta$,運転時間を$t[\mathrm{h}]$とすると、
$$W=\sqrt{3}V_lI_lt\cos\theta[\mathrm{W\cdot h}]\rightarrow\sqrt{3}V_lI_lt\cos\theta\times10^{-3}[\mathrm{kW\cdot h}]$$
上式より、
$$\cos\theta=\frac{W}{\sqrt{3}\times VIt\times10^{-3}}=\frac{W}{\sqrt{3}VIt}\times10^3$$
上式を$\%$で表すと
$$\frac{W}{\sqrt{3}VIt}\times10^3\times10^2=\boldsymbol{\frac{W}{\sqrt{3}VIt}\times10^5[\%]}$$
よって「ニ」が正解となる。
類題
問6
図のような三相3線式回路で、電線1線当たりの抵抗が$r[\Omega]$,線電流が$I[\mathrm{A}]$のとき、この電線路の電力損失$[\mathrm{W}]$を示す式は。
イ.$\sqrt{3}I^2r$ ロ.$3Ir$ ハ.$3I^2r$ ニ.$\sqrt{3}Ir$
解説
1線に流れる電流が$I[\mathrm{A}]$であるとき、三相3線式では線が3本となるため、全体の電力損失$P_\mathrm{l}[\mathrm{W}]$は1線の電力損失$I^2r$の3倍となり、
$$P_\mathrm{l}=\boldsymbol{3I^2r[\mathrm{W}]}$$
よって「ハ」が正解となる。
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問7
図のような単相3線式回路において、電線1線当たりの抵抗が$0.1\Omega$,抵抗負荷に流れる電流がともに$15\mathrm{A}$のとき、この電線路の電力損失$[\mathrm{W}]$は。
イ.$45$ ロ.$60$ ハ.$90$ ニ.$135$
解説
図において、各抵抗負荷に流れる電流は等しいため、中性線に流れる電流は$0\mathrm{A}$となる。
したがって、電線路の電力損失$W[\mathrm{W}]$は、
$$\begin{align*}
W&=0.1\times15^2+0.1\times15^2\\\\
&=22.5+22.5\\\\
&=\boldsymbol{45\mathrm{W}}
\end{align*}$$
よって「イ」が正解となる。
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問8
金属管による低圧屋内配線工事で、管内に断面積$5.5\mathrm{mm^2}$の$600\mathrm{V}$ビニル絶縁電線(軟銅線)4本を収めて施設した場合、電線1本当たりの許容電流$[\mathrm{A}]$は。
ただし、周囲温度は$30^\circ\mathrm{C}$以下、電流減少係数は$0.63$とする。
イ.$19$ ロ.$24$ ハ.$31$ ニ.$49$
解説
断面積$5.5\mathrm{mm^2}$の$600\mathrm{V}$ビニル絶縁電線(軟銅線)の許容電流は$49\mathrm{A}$である。
電流減少係数が$0.63$であるから、電線1本当たりの許容電流$[\mathrm{A}]$は、
$$49\times0.63=30.87\mathrm{A}\rightarrow\boldsymbol{31\mathrm{A}}$$
よって「ハ」が正解となる。
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問9
図のように、三相の電動機と電熱器が低圧屋内幹線に接続されている場合、幹線の太さを決める根拠となる電流の最小値$[\mathrm{A}]$は。
ただし、需要率は$100\%$とする。
イ.$95$ ロ.$103$ ハ.$115$ ニ.$255$
解説
電技・解釈第148条により、幹線の太さを決める根拠となる電流の最小値$I_\mathrm{W}$を求める式は、下表のとおりとなる。
定格電流の合計比較 | 許容電流 |
---|---|
$I_\mathrm{H}\geq I_\mathrm{M}$の場合 | $I_\mathrm{W}\geq I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}$ |
$I_\mathrm{H}< I_\mathrm{M}$ かつ $I_\mathrm{M}> 50\mathrm{A}$の場合 | $I_\mathrm{W}\geq 1.1I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}$ |
$I_\mathrm{H}< I_\mathrm{M}$ かつ $I_\mathrm{M}\leq 50\mathrm{A}$の場合 | $I_\mathrm{W}\geq 1.25I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}$ |
電動機の定格電流の合計$I_\mathrm{M}$は、
$$I_\mathrm{M}=30+30+20=80\mathrm{A}$$
その他の負荷の定格電流の合計$I_\mathrm{H}$は、
$$I_\mathrm{H}=15\mathrm{A}$$
$I_\mathrm{H}<I_\mathrm{M}$で$I_\mathrm{M}> 50\mathrm{A}$の場合、表より$I_\mathrm{W}=1.1I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}$となるから、求める電流の最小値$I_\mathrm{W}$は、
$$I_W=1.1\times80+15=\boldsymbol{103\mathrm{A}}$$
よって「ロ」が正解となる。
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問10
低圧屋内配線の分岐回路の設計で、配線用遮断器、分岐回路の電線の太さ及びコンセントの組合せとして、適切なものは。
ただし、分岐点から配線用遮断器までは$3\mathrm{m}$,配線用遮断器からコンセントまでは$8\mathrm{m}$とし、電線の数値は分岐回路の電線(軟銅線)の太さを示す。
また、コンセントは兼用コンセントではないものとする。
解説
電技・解釈第149条により、$20\mathrm{A}$分岐回路では、
- 電線の太さ$1.6\mathrm{mm}$(または$2.0\mathrm{mm^2}$)以上
- コンセントの定格電流は$20\mathrm{A}$以下
$30\mathrm{A}$分岐回路では、
- 電線の太さ$2.6\mathrm{mm}$(または$5.5\mathrm{mm^2}$)以上
- コンセントの定格電流は$20\mathrm{A}$以上$30\mathrm{A}$以下
$50\mathrm{A}$分岐回路では、
- 電線の太さ$14\mathrm{mm^2}$以上
- コンセントの定格電流は$40\mathrm{A}$以上$50\mathrm{A}$以下
でなければならない。
選択肢について検証すると、
- イは定格電流$30\mathrm{A}$のコンセントなので不適切である。
- ロは電線の太さが不適切である。
- ハは定格電流$15\mathrm{A}$のコンセントなので不適切である。
- ニは適切である。
よって「ニ」が正解である。
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