本記事では、第二種電気工事士筆記試験のうち「平成30年度上期 問1~10」について解説する。
問1
図のような回路で、スイッチSを閉じたとき、端子a-b間の電圧[V]は。
イ.$30$ ロ.$40$ ハ.$50$ ニ.$60$
解説
スイッチSが閉じた場合、下図のように赤×の抵抗が無視できる。
このとき、電圧$100\mathrm{V}$に対し、抵抗$30\Omega$が$2$個直列になっており、端子$\mathrm{a-b}$間の電圧$[\mathrm{V}]$はそのうち片方の抵抗にかかる電圧を計算すればよく、
$$100\times\frac{30}{30+30}=50\mathrm{V}$$
よって「ハ」が正解となる。
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問2
コイルに$100\mathrm{V}$,$50\mathrm{Hz}$の交流電圧を加えたら$6\mathrm{A}$の電流が流れた。
このコイルに$100\mathrm{V}$,$60\mathrm{Hz}$の交流電圧を加えたときに流れる電流$[\mathrm{A}]$は。
ただし、コイルの抵抗は無視できるものとする。
イ.$4$ ロ.$5$ ハ.$6$ ニ.$7$
解説
コイルの自己インダクタンスを$L[\mathrm{H}]$とし、周波数$f[\mathrm{Hz}]$の交流電圧$V[\mathrm{V}]$を加えたときに流れる電流$I[\mathrm{A}]$は、
$$I=\frac{V}{2\pi fL}$$
上式を変形して、問題文で与えられた数値を代入すると、
$$\begin{align*}
L&=\frac{V}{2\pi fL}\\\\
&=\frac{100}{2\pi\times50\times 6}\\\\
&=\frac{1}{6\pi}
\end{align*}$$
したがって、$f=60\mathrm{Hz},V=100\mathrm{V}$の場合の電流$I'[\mathrm{A}]$は、
$$I’=\frac{100}{2\pi\times60\times\displaystyle{\frac{1}{6\pi}}}=5\mathrm{A}$$
よって「ロ」が正解となる。
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問3
ビニル絶縁電線(単心)の導体の直径を$D$,長さを$L$とするとき、この電線の抵抗と許容電流に関する記述として、誤っているものは。
イ.許容電流は、周囲の温度が上昇すると、大きくなる。
ロ.許容電流は、$D$が大きくなると、大きくなる。
ハ.電線の抵抗は、$L$に比例する。
ニ.電線の抵抗は、$D^2$に反比例する。
解説
抵抗率$\rho[\Omega\cdot\mathrm{m}]$ ,直径$D[\mathrm{mm}]$ ,長さ$L[\mathrm{m}]$の導線の電気抵抗$R$は、
$$R=\frac{4\rho L}{\pi D^2}$$
選択肢の文章をそれぞれ検証すると、
- 電線の抵抗は温度上昇すると増加するので、オームの法則より許容電流は小さくなる。したがって、イは誤っている。
- 許容電流は、抵抗$R$の式とオームの法則により、直径$D$が大きくなると比例して大きくなる。したがって、ロは正しい。
- 抵抗$R$の式より、電線の抵抗は$L$に比例する。したがって、ハは正しい。
- 抵抗$R$の式より、電線の抵抗は$D^2$に反比例する。したがって、ニは正しい。
よって「イ」が正解となる。
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問4
電線の接続不良により、接続点の接触抵抗が$0.2\Omega$となった。
この電線に$15\mathrm{A}$の電流が流れると、接続点から1時間に発生する熱量$[\mathrm{kJ}]$は。
ただし、接触抵抗の値は変化しないものとする。
イ.$11$ ロ.$45$ ハ.$72$ ニ.$162$
解説
電線の接続点の接触抵抗を$R[\Omega]$,流れる電流を$I[\mathrm{A}]$,流れた時間を$t[\mathrm{s}]$とすると、その点に発生する熱量は$W=I^2Rt[\mathrm{J}]$で表される。
したがって、発生熱量$W$は、
$$W=15^2\times0.2\times3600=162000\mathrm{J}\rightarrow\boldsymbol{162\mathrm{kJ}}$$
よって「ニ」が正解となる。
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問5
図のような三相負荷に三相交流電圧を加えたとき、各線に$20\mathrm{A}$の電流が流れた。
線間電圧$E[\mathrm{V}]$は。
イ.$120$ ロ.$173$ ハ.$208$ ニ.$240$
解説
図の$\mathrm{Y}$結線の抵抗負荷で、線電流を$I_l[\mathrm{A}]$,相電流を$I_p[\mathrm{A}]$,相電圧を$E_p[\mathrm{V}]$とした場合、$I_p=I_l=20\mathrm{A},\ E=\sqrt{3}E_p[\mathrm{V}]$となるから、回路の抵抗を$R[\Omega]$とすると、線間電圧$E[\mathrm{V}]$は、
$$\begin{align*}
E&=\sqrt{3}RI_p\\\\
&\fallingdotseq1.73\times120\\\\
&=207.6\mathrm{V}\\\\
&\fallingdotseq\boldsymbol{208\mathrm{V}}
\end{align*}$$
よって「ハ」が正解となる。
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問6
図のように、電線のこう長$16\mathrm{m}$の配線により、消費電力$2000\mathrm{W}$の抵抗負荷に電力を供給した結果、負荷の両端の電圧は$100\mathrm{V}$であった。
配線における電圧降下$[\mathrm{V}]$は。
ただし、電線の電気抵抗は長さ$1000\mathrm{m}$当たり$3.2\Omega$とする。
イ.$1$ ロ.$2$ ハ.$3$ ニ.$4$
解説
回路に流れる電流$I$は
$$I=\frac{2000}{100}=20\mathrm{A}$$
また、$16\mathrm{m}$の電線1本の電気抵抗は、
$$\frac{3.2}{1000}\times16=0.0512\Omega$$
単相2線式回路の電圧降下は、
$$V=2rl=2\times0.0512\times20=2.048\rightarrow\boldsymbol{2\mathrm{V}}$$
よって「ロ」が正解となる。
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問7
図のような単相3線式回路において、電線1線当たりの抵抗が$0.1\Omega$のとき、$\mathrm{a-b}$間の電圧$[\mathrm{V}]$は。
イ.$96$ ロ.$100$ ハ.$102$ ニ.$106$
解説
図の左端の端子に点$\mathrm{A}$および点$\mathrm{B}$を定めて、電線1線当たりの抵抗を$r[\Omega]$とする。
また、抵抗負荷に流れる電流をそれぞれ$I_1[\mathrm{A}],\ I_2[\mathrm{A}]$とする。
点$\mathrm{A-B}$間の電圧降下$v_{\mathrm{AB}}[\mathrm{V}]$は、
$$\begin{align*}
v_{\mathrm{AB}}&=rI_1+r\left(I_1-I_2\right)\\\\
&=0.2\times10+0.2\times\left(10-10\right)\\\\
&=2\mathrm{V}
\end{align*}$$
$\mathrm{a-b}$間の電圧$V_{\mathrm{ab}}[\mathrm{V}]$は、$\mathrm{A-B}$間の電圧$V_{\mathrm{AB}}=103\mathrm{V}$から電圧降下$v_{\mathrm{AB}}[\mathrm{V}]$を差し引いたものであるから、
$$\begin{align*}
V_{\mathrm{ab}}&=V_{\mathrm{AB}}-v_{\mathrm{AB}}\\\\
&=104-2\\\\
&=102\mathrm{V}
\end{align*}$$
よって「ハ」が正解となる。
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問8
金属管による低圧屋内配線工事で、管内に直径$2.0\mathrm{mm}$の$600\mathrm{V}$ビニル絶縁電線(軟銅線)4本を収めて施設した場合、電線1本当たりの許容電流$[\mathrm{A}]$は。
ただし、周囲温度は$30^\circ\mathrm{C}$以下、電流減少係数は$0.63$とする。
イ.$17$ ロ.$22$ ハ.$30$ ニ.$35$
解説
直径$2.0\mathrm{mm}$の$600\mathrm{V}$ビニル絶縁電線(軟銅線)の許容電流は$35\mathrm{A}$である。
電流減少係数が$0.63$であるから、電線1本当たりの許容電流$[\mathrm{A}]$は、
$$35\times0.63=22.05\mathrm{A}\rightarrow\boldsymbol{\underline{22\mathrm{A}}}$$
よって「ロ」が正解となる。
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- 平成29年度上期 問7
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問9
図のように定格電流$100\mathrm{A}$の過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐して、$6\mathrm{m}$の位置に過電流遮断器を施設するとき、$\mathrm{a-b}$間の電線の許容電流の最小値$[\mathrm{A}]$は。
イ.$25$ ロ.$35$ ハ.$45$ ニ.$55$
解説
幹線の過電流遮断器の定格電流を$I_B$,分岐点から電線の許容電流を$I_W$とすると、電技解釈第149条により、分岐回路の過電流遮断器を分岐点から$3\mathrm{m}$を超え$8\mathrm{m}$以下の位置に施設する場合は、$I_W$を$I_B$の$\boldsymbol{35\%}$以上にしなければならない。
上記より、許容電流の最小値は、
$$0.35\times100=\boldsymbol{35\mathrm{A}}$$
よって「ロ」が正解となる。
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問10
低圧屋内配線の分岐回路の設計で、配線用遮断器の定格電流とコンセントの組合せとして、不適切なものは。
解説
電技解釈第149条により、$20\mathrm{A}$分岐回路では、
- 電線の太さ$1.6\mathrm{mm}$(または$2.0\mathrm{mm^2}$)以上
- コンセントの定格電流は$20\mathrm{A}$以下
$30\mathrm{A}$分岐回路では、
- 電線の太さ$2.6\mathrm{mm}$(または$5.5\mathrm{mm^2}$)以上
- コンセントの定格電流は$20\mathrm{A}$以上$30\mathrm{A}$以下
でなければならない。
選択肢について検証すると、
- イは適切である。
- ロは適切である。
- ハは適切である。
- ニは定格電流$\boldsymbol{15\mathrm{A}}$のコンセントなので不適切である。
よって「ニ」が正解である。
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