電気工事士の筆記試験対策として、屋内幹線と分岐回路についてまとめている。
屋内配線における幹線の許容電流
幹線とは『「引込点から分電盤」または「配電盤から分電盤」までの配線』をいい、大きな電流が流れる可能性がある。
図1の幹線の許容電流$I_\mathrm{W}$は、表1に示す負荷の定格電流の合計によって決定される。
ただし、表1において、電動機の定格電流の合計$I_\mathrm{M}=I_\mathrm{M1}+I_\mathrm{M2}$,その他の負荷の定格電流の合計$I_\mathrm{H}=I_\mathrm{H1}+I_\mathrm{H2}$であるとする。
図1 負荷が接続された幹線
表1 屋内配線における幹線の許容電流
定格電流の合計比較 | 許容電流 |
---|---|
$I_\mathrm{H}\geq I_\mathrm{M}$の場合 | $I_\mathrm{W}\geq I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}$ |
$I_\mathrm{H}< I_\mathrm{M}$ かつ $I_\mathrm{M}> 50\mathrm{A}$の場合 | $I_\mathrm{W}\geq 1.1I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}$ |
$I_\mathrm{H}< I_\mathrm{M}$ かつ $I_\mathrm{M}\leq 50\mathrm{A}$の場合 | $I_\mathrm{W}\geq 1.25I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}$ |
過電流遮断器の動作時間
過電流遮断器とは、回路に過大な電流が生じたときに電路を自動的に遮断する装置で、ヒューズと配線用遮断器(ブレーカ)が過電流遮断器の機能を有する。
ヒューズは過電流によるジュール熱で溶断し、一度溶断すると取替えが必要である。
「電気設備の技術基準の解釈 第33条」に定められているヒューズの溶断時間を表2に示す。
表2 ヒューズの溶断時間(定格電流の1.1倍で溶断しないこと)
定格電流の区分 | 溶断時間 | |
---|---|---|
定格電流の$1.6$倍の電流 | 定格電流の$2$倍の電流 | |
$30\mathrm{A}$以下 | $60$分 | $2$分 |
$30\mathrm{A}$を超え$60\mathrm{A}$以下 | $60$分 | $4$分 |
$60\mathrm{A}$を超え$100\mathrm{A}$以下 | $120$分 | $6$分 |
配線用遮断器は熱や電磁力により過電流を検知する素子が内蔵され、動作後も復帰が可能である。
「電気設備の技術基準の解釈」第33条に定められている配線用遮断器の遮断時間を表3に示す。
表3 配線用遮断器の遮断時間(定格電流の1.0倍で動作しないこと)
定格電流の区分 | 遮断時間 | |
---|---|---|
定格電流の$1.25$倍の電流 | 定格電流の$2$倍の電流 | |
$30\mathrm{A}$以下 | $60$分 | $2$分 |
$30\mathrm{A}$を超え$50\mathrm{A}$以下 | $60$分 | $4$分 |
$50\mathrm{A}$を超え$100\mathrm{A}$以下 | $120$分 | $6$分 |
幹線の過電流遮断器の定格電流
過電流遮断器は、幹線を保護するために施設されるので、幹線に施設する過電流遮断器の定格電流は、幹線の許容電流よりも小さくするのが原則である。
図1の負荷が接続された幹線において、幹線の過電流遮断器の定格電流を$I_\mathrm{B}$とすると、$I_\mathrm{B}$と各電流の関係は表4のようになる。
表4 過電流遮断器の定格電流
電動機の有無と定格電流の合計比較 | 過電流遮断器の許容電流 |
---|---|
電動機が接続されていない場合 | $I_\mathrm{B}\leq I_\mathrm{W}$ |
電動機が接続されており、かつ$3I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}\leq 2.5I_\mathrm{W}$の場合 | $I_\mathrm{B}\leq 3I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}$ |
電動機が接続されており、かつ$3I_\mathrm{M}+I_\mathrm{H}> 2.5I_\mathrm{W}$の場合 | $I_\mathrm{B}\leq 2.5I_\mathrm{W}$ |
分岐回路の過電流遮断器の施設位置
図2の分岐回路において、原則として幹線の分岐点から$3\mathrm{m}$以下の場所に分岐開閉器を施設しなければならないが、分岐点からの電線の許容電流$I_\mathrm{W}$と幹線の過電流遮断器の定格電流$I_\mathrm{B}$の割合で、表5に示すように$3\mathrm{m}$を超える位置に施設することができる。
図2 分岐回路
表5 分岐回路の過電流遮断器の施設位置
$I_B$に対する$I_W$の割合 | 施設位置 |
---|---|
$I_\mathrm{W}$が$I_\mathrm{B}$の$35\%$以上の場合 | 分岐点から$8\mathrm{m}$以下の位置 |
$I_\mathrm{W}$が$I_\mathrm{B}$の$55\%$以上の場合 | 施設位置に制限なし |
分岐回路の電線の太さおよびコンセントの定格電流
図3のように、分岐回路にコンセントが接続されている場合を考える。
この場合、表6のように、各分岐回路に施設する過電流遮断器の定格電流の大きさによって、電線の太さや接続できるコンセントの容量が決められている。
図3 コンセントが接続された分岐回路
表6 分岐回路の電線の太さとコンセントの定格電流
配電用遮断器の定格電流 | 電線の太さ | コンセントの定格電流 |
---|---|---|
$15\mathrm{A}$以下 | 直径$1.6\mathrm{mm}$以上 (断面積$2.0\mathrm{mm^2}$以上) | $15\mathrm{A}$以下 |
$20\mathrm{A}$ | 直径$1.6\mathrm{mm}$以上 (断面積$2.0\mathrm{mm^2}$以上) | $20\mathrm{A}$以下 |
$30\mathrm{A}$ | 直径$2.6\mathrm{mm}$以上 (断面積$5.5\mathrm{mm^2}$以上) | $20\mathrm{A}$以上$30\mathrm{A}$以下 |
$40\mathrm{A}$ | 断面積$8\mathrm{mm^2}$以上 | $30\mathrm{A}$以上$40\mathrm{A}$以下 |
$50\mathrm{A}$ | 断面積$14\mathrm{mm^2}$以上 | $40\mathrm{A}$以上$50\mathrm{A}$以下 |
第二種電気工事士の筆記試験において、分岐回路の電線の太さとコンセントの定格電流に関する問題は頻出であり、平成21~29年度の試験で90%以上の確率で出題されている。
この問題は本記事の表を用いれば解ける問題であるため、是非マスターしてほしい。
特に$20\mathrm{A}$と$30\mathrm{A}$の項目は頻出であり、ぜひ覚えてほしい。
例題:平成29年度上期 問9
低圧屋内配線の分岐回路の設計で、図4に示す配線用遮断器の定格電流、分岐回路の電線の太さおよびコンセントの組み合わせとして、不適切なものはどれか。
ただし、分岐点から配線用遮断器までは$3\mathrm{m}$、配線用遮断器からコンセントまでは$8\mathrm{m}$とし、電線の数値は分岐回路の電線(軟銅線)の太さを示す。
また、コンセントは兼用コンセントではないものとする。
図4 配線用遮断器の定格電流、分岐回路の電線の太さおよびコンセントの組み合わせ
解説
「ロ」の電線の太さは$2.0\mathrm{mm}$となっているが、$30\mathrm{A}$の分岐回路では、表6より電線の太さは$2.6\mathrm{mm}\left(5.5\mathrm{mm^2}\right)$以上でなければならない。
よって「ロ」が不適切である。
※この問題は表6を覚えていれば簡単に解答することができる。
漏電遮断器とその省略条件
漏電遮断器とは、漏電事故からの保護のため、地絡電流の値が一定値を超えた時点で回路を遮断する役割をもつ遮断器のことをいう。
電気設備の技術基準の解釈 第36条によると、金属製外箱を有する使用電圧が$60\mathrm{V}$を超える低圧の機械器具に接続する電路において、漏電遮断器等の電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設することが義務付けられている。
ただし、次の条件に当てはまる場合は、漏電遮断器の施設を省略することができる。
- 機械器具を乾燥した場所に施設する場合
- 対地電圧が$150\mathrm{V}$以下の機械器具を水気のない場所に施設する場合
- 2重絶縁構造(電気用品安全法の適用を受ける)のもの
- 機械器具に施されたC種接地工事、又は種接地工事の接地抵抗値が$3\mathrm{\Omega}$以下の場合
- 電路の電源側に絶縁変圧器を施設し、機械器具側の電路を非接地とする場合
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