電気の基礎理論まとめ【電気工事士向け】

電気の基礎理論について、電気工事士の筆記試験に必要な範囲で解説する。

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各電気量について

電圧とは

電圧とは電気を流す能力を表し、一般家庭では$100\mathrm{V}$または$200\mathrm{V}$の電圧が使用される。

ビルや工場などは$6600\mathrm{V}$の高圧で受電し、構内の変電設備で使用電圧に変圧される。

 

電流とは

電流とは電荷の移動する量を表し、1秒間で流れる電荷量で大きさが決まる。

電流の値が大きいほど電球が明るくなったり、発生する熱が多くなる。

人体に関していえば、電圧より電流のほうがはるかに危険で、人は$30\mathrm{mA}$程度のわずかな電流が流れただけでも命を落とす場合がある。

 

抵抗とは

抵抗とは、電流の流れにくさ(または成分)を表すもので、抵抗が大きいほど流れる電流は小さくなる。

抵抗では、電気エネルギーが熱エネルギーになって消費される。

 

電力とは

電力とは1秒間に消費する電気量を表し、仕事量ともいう。

電力は電圧と電圧と電流の積で計算され、電力が大きいほど、電気を多く消費することになる。

 

電力量は電力×使用した時間で表され、実際に消費した総電気量を表す。

電気代は消費電力に使用時間をかけた電力量で計算される。

 

電気量のイメージ

電圧・電流・抵抗・電力をわかりやすく例えるなら、水の入った注射器をイメージするといい。

  • 電圧=注射器を押す力
  • 電流=押し出される水
  • 抵抗=注射器の先端の細さ
  • 電力=1秒間に押し出された水の量

押す力を強くすれば水量も増え、先端を細くして抵抗を大きくすれば水量は減少する。

 

直流と交流

直流とは

直流(Direct Current;DC)とは、プラスからマイナスへ一定方向に電流が流れることである。

携帯の充電器、車のバッテリーなどには直流が使用されている。

また、パソコンやテレビなどは交流を直流に変換して使用されている。

 

交流とは

交流(Alternate Current;AC)とは、電流と電圧がプラスからマイナスへ周期的に変化することである。

モーターを使用する機器や、ビルや一般家庭の送電に使用される。

 

交流は1秒間に何度もプラスとマイナスが入れ替わり、1秒間に入れ替わる回数を周波数という。

日本では新潟県の糸魚川(いといがわ)と、静岡県の富士川(ふじがわ)を結ぶ線を境にして、東日本では周波数は$50\mathrm{Hz}$、西日本では$60\mathrm{Hz}$が使用されている。

 

交流の表現方法としては、実効値が用いられる。

例えば、電圧の最大値を$V_\mathrm{m}[\mathrm{V}]$とすると、電圧の実効値$V[\mathrm{V}]$は次式で求めることができる。

$$V=\frac{V_\mathrm{m}}{\sqrt{2}}$$

 

電流についても同様に求められる。

 

電界とクーロンの法則

電界とは

電界とは、静止電荷の電気力線が働く空間を表す。

電界の強さ$E[\mathrm{V/m}]$は、単位正電荷$1\mathrm{C}$に働く力として定められる。

 

点電荷$Q$から$r[\mathrm{m}]$の距離における電界$E[\mathrm{V/m}]$は次式で表される。

$$E=\frac{Q}{4\pi \epsilon_0 r^2} ・・・(1)$$

ここで、$\epsilon_0$は真空の誘電率で、値は$8.854\times10^{-12}[\mathrm{F/m}]$である。

 

クーロンの法則

図1のように、2つの電荷$Q_1[\mathrm{C}],\ Q_2[\mathrm{C}]$を置く。

 

図1 2つの電荷

 

このとき、電荷間には次式で表される静電気力$F[\mathrm{N}]$がはたらく。このことをクーロンの法則という。

$$F=\frac{1}{4\pi \epsilon_0}\frac{Q_1Q_2}{r^2}[\mathrm{N}] ・・・(2)$$

 

$(2)$式より、2つの電荷間に働く力は距離$r$の$2$乗に反比例し、両方のもつ電気量$Q_1,\ Q_2$の積に比例する。

また、$Q_1,\ Q_2$が同符号のとき反発力がはたらき、異符号のとき吸引力がはたらく。

 

オームの法則

オームの法則の式

オームの法則とは、「電圧」「抵抗」「電流」の関係を示した法則で、電気の世界では最も基本的な法則である。

図2に示す回路の電圧$V[\mathrm{V}]$,電流$I[\mathrm{A}]$,抵抗$R[\Omega]$の間には、次の関係がある。

$$\begin{cases}
\ \\
V=RI\\\\
I=\displaystyle{\frac{V}{R}}\\\\
R=\displaystyle{\frac{V}{I}}
\end{cases} ・・・(3)$$

図2 抵抗が接続された直流回路

 

回路の電力と電力量

図2の回路において、抵抗$R[\Omega]$で消費される電力$P[\mathrm{W}]$および消費電力量$W[\mathrm{W\cdot s}]$は、電流$I$が流れる時間を$t[\mathrm{s}]$とすると、次式で表すことができる。

$$\begin{cases}
P=VI=I^2R=\displaystyle{\frac{V^2}{R}}\\\\
W=P\cdot t
\end{cases} ・・・(4)$$

 

キルヒホッフの法則

キルヒホッフの法則は、電気回路において任意の分岐点に流れ込む電流の総和、および任意の閉路の電圧の総和に関する法則である。

第一法則(電流に関する法則)

電気回路の任意の分岐点について、そこに流れ込む電流の和は、そこから流れ出る電流の和に等しい。

図3中心の分岐点において、各電流の関係式は次式で表される。

$$I_1+I_2=I_3+I_4 ・・・(5)$$

 

図3 キルヒホッフの第一法則

 

第二法則(電圧に関する法則

電気回路の任意のひと回りの閉じた経路について、起電力の和と電圧降下の和は等しい。

図2の回路において、起電力が$V[\mathrm{V}]$,抵抗$R[\Omega]$における電圧降下は$R\times I$で表されるので、次式が成り立つ。

$$V-RI=0 ・・・(6)$$

なお、$(6)$式は$(3)$式のオームの法則$V=RI$と等しい。

 

コンデンサの電荷と充電エネルギー

コンデンサは蓄えた電荷を充電および放電する事ができる素子である。

コンデンサの静電容量を$C[\mathrm{F}]$,印加される電圧を$V[\mathrm{V}]$とすると、コンデンサに蓄えられる電荷$Q[\mathrm{C}]$および充電エネルギー$W_C[\mathrm{J}]$は下記の式で表される。

 

$$\begin{cases}
Q=CV\\\\
W_C=\displaystyle{\frac{1}{2}CV^2}
\end{cases} ・・・(7)$$

 

回路素子の接続

合成抵抗

回路素子の接続方法として、直列接続並列接続がある。

抵抗に関して、それぞれの接続において合成抵抗を求めることができる。

 

直列接続の場合

図4のような直列接続回路では、合成抵抗$R_s[\Omega]$は各抵抗の和で求められる。

$$R_s=R_1+R_2+\cdots+R_n ・・・(8)$$

 

図4 抵抗の直列接続

並列接続の場合

図5のような並列接続回路では、合成抵抗$R_p[\Omega]$は各抵抗の逆数の和をとり、さらに逆数をとったもので求められる。

$$R_p=\frac{1}{\displaystyle{\frac{1}{R_1}}+\frac{1}{R_2}+\cdots+\frac{1}{R_n}} ・・・(9)$$

 

図5 抵抗の並列接続

 

コンデンサの合成静電容量

コンデンサも同様に、各接続において合成静電容量を求めることができる。

 

直列接続の場合

図6のような直列接続回路では、合成静電容量$C_s[\mathrm{F}]$は各静電容量の逆数の和をとり、さらに逆数をとったもので求められる。

$$C_p=\frac{1}{\displaystyle{\frac{1}{C_1}}+\frac{1}{C_2}+\cdots+\frac{1}{C_n}} ・・・(10)$$

 

図6 コンデンサの直列接続

 

並列接続の場合

図7のような直列接続回路では、合成静電容量$C_p[\mathrm{F}]$は各静電容量の和で求められる。

$$C_p=C_1+C_2+\cdots+C_n ・・・(11)$$

 

図7 コンデンサの並列接続

 

 

分圧・分流

分圧の式

抵抗$R_1[\Omega]$および$R_2[\Omega]$が直列接続された図8の回路において、電圧$V[\mathrm{V}],\ V_1[\mathrm{V}],\ V_2[\mathrm{V}]$の関係は各抵抗の大きさに比例して、次式のように分圧される。

$$V=V_1+V_2 ・・・(12)$$

$$\begin{cases}
V_1=\displaystyle{\frac{R_1}{R_1+R_2}V}\\\\
V_2=\displaystyle{\frac{R_2}{R_1+R_2}V}
\end{cases} ・・・(13)$$

図8 抵抗が直列接続された回路

 

分流の式

抵抗$R_1[\Omega]$および$R_2[\Omega]$が並列接続された図9の回路において、各抵抗に流れる電流$I_1[\mathrm{A}],\ I_2[\mathrm{A}]$は抵抗の大きさの逆比で、次式のように分流される。

$$I=I_1+I_2 ・・・(14)$$

$$\begin{cases}
I_1=\displaystyle{\frac{R_2}{R_1+R_2}I}\\\\
I_2=\displaystyle{\frac{R_1}{R_1+R_2}I}
\end{cases} ・・・(15)$$

図9 抵抗が並列接続された回路

 

倍率器と分流器

倍率器の式

倍率器とは、電圧計の測定範囲を広げるために、図10のように電圧計と直列に接続した抵抗のことをいう。

 

図10 倍率器

 

図10において、倍率器の抵抗を$R_v[\Omega]$、電圧計の内部抵抗を$r_v[\Omega]$とすると、電圧計の読み$V_0[\mathrm{V}]$から端子間電圧$V[\mathrm{V}]$を求めることができる。

$$V=\frac{R_v+r_v}{r_v}V_0 ・・・(16)$$

 

分流器の式

分流器とは、電流計の測定範囲を広げるために、図11のように電流計と並列に接続した抵抗のことをいう。

図11 分流器

 

図11において、分流器の抵抗を$R_i[\Omega]$,電流計の内部抵抗を$r_i[\Omega]$とすると、電流計の読み$I_0[\mathrm{A}]$から端子間に流れる合成電流$I[\mathrm{A}]$を求めることができる。

$$I=\frac{R_i+r_i}{R_i}I_0 ・・・(17)$$

 

単相交流回路

抵抗のみの回路

図12のように抵抗$R[\Omega]$のみの回路に交流電圧(実効値$V[\mathrm{V}]$)を加えた場合、回路に流れる電流(実効値$I[\mathrm{A}]$)と電圧は同位相となり、次式で表される。

$$I=\frac{V}{R} ・・・(18)$$

 

また、消費電力$P[\mathrm{W}]$は、

$$P=VI=I^2R ・・・(19)$$

図12 抵抗のみが接続された交流回路

 

コイルのみの回路

交流回路において、コイルおよびコンデンサにおける電圧と電流の比をリアクタンスという。

図13の回路において、インダクタンスが$L[\mathrm{H}]$であるコイルによるリアクタンス$X_L[\Omega]$は、周波数$f[\mathrm{Hz}]$を用いて、

$$X_L=2\pi fL ・・・(20)$$

 

図13 コイルのみが接続された交流回路

 

また、回路に流れる電流の大きさ$I[\mathrm{A}]$は、電圧の大きさ$V[\mathrm{V}]$を用いて、

$$I=\frac{V}{X_L}=\frac{V}{2\pi fL} ・・・(21)$$

 

図13のようにコイルのみが接続された回路では、電流の位相が電圧より$\displaystyle{\frac{\pi}{2}}(90^\circ)$遅れるのが特徴である。

 

コンデンサのみの回路

図14の回路において、静電容量が$C[\mathrm{F}]$であるコンデンサによるリアクタンス$X_C[\Omega]$は、周波数$f[\mathrm{Hz}]$を用いて、

$$X_C=\frac{1}{2\pi fC} ・・・(22)$$

 

図14 コンデンサのみが接続された交流回路

 

また、回路に流れる電流の大きさ$I[\mathrm{A}]$は、電圧の大きさ$V[\mathrm{V}]$を用いて、

$$I=\frac{V}{X_C}=2\pi fCV ・・・(23)$$

 

図14のようにコンデンサのみが接続された回路では、電流の位相が電圧より$\displaystyle{\frac{\pi}{2}}(90^\circ)$進むのが特徴である。

 

抵抗とリアクタンスの直列回路

抵抗とリアクタンスが混在する回路において、各値を合成したものをインピーダンスという。

 

図15のような抵抗$R[\Omega]$とリアクタンス$X[\Omega]$(コイルでもコンデンサでもよい)が直列接続された回路において、インピーダンス$Z[\Omega]$は、

$$Z=\sqrt{R^2+X^2} ・・・(24)$$

 

図15 抵抗とリアクタンスが直列接続された交流回路

 

回路に流れる電流の大きさ$I[\mathrm{A}]$は、

$$I=\frac{V}{Z}=\frac{V}{\sqrt{R^2+X^2_L}} ・・・(25)$$

 

また、各素子における電圧の大きさをそれぞれ$V_R[\mathrm{V}],\ V_X[\mathrm{V}]$とすると、

$$\begin{cases}
V_R=\displaystyle{\frac{R}{\sqrt{R^2+X^2_L}}}V\\\\
V_X=\displaystyle{\frac{X}{\sqrt{R^2+X^2_L}}}V
\end{cases} ・・・(26)$$

 

さらに、皮相電力(みかけの電力)と有効電力の比率を力率といい、$\cos\theta$で表す。

図15の回路の力率$\cos\theta$は、

$$\begin{align*}
\cos\theta&=\frac{R}{Z}\\\\
&=\frac{R}{\sqrt{R^2+X^2}} ・・・(27)\\\\\\
\cos\theta&=\frac{V_R}{V}\\\\
&=\frac{V_R}{\sqrt{V^2_R+V^2_X}} ・・・(28)
\end{align*}$$

という2通りの式で表せる。

 

また、抵抗$R[\Omega]$における消費電力$P[\mathrm{W}]$は、

$$\begin{align*}
P&=VI\cos\theta\\\\
&=\sqrt{R^2+X^2}\times I^2\times\frac{R}{\sqrt{R^2+X^2}}\\\\
&=I^2R ・・・(29)
\end{align*}$$

 

抵抗とリアクタンスの並列回路

図15のような抵抗$R[\Omega]$とリアクタンス$X[\Omega]$(コイルでもコンデンサでもよい)が並列接続された回路において、インピーダンス$Z[\Omega]$は、

$$Z=\frac{RX}{\sqrt{R^2+X^2}} ・・・(30)$$

図16 抵抗とリアクタンスが並列接続された交流回路

 

回路に流れる電流$I[\mathrm{A}]$の大きさは、$(30)$式より、

$$\begin{align*}
I&=\frac{V}{Z}\\\\
&=\frac{\sqrt{R^2+X^2}}{RX}V ・・・(31)
\end{align*}$$

 

また、各素子に流れる電流の大きさをそれぞれ$I_R[\mathrm{A}],\ I_X[\mathrm{A}]$とすると、

$$\begin{cases}
I_R=\displaystyle{\frac{V}{R}}\\\\
I_X=\displaystyle{\frac{V}{X}}
\end{cases} ・・・(32)$$

 

これらの2乗の和の平方根をとると、

$$\begin{align*}
I&=\sqrt{I^2_R+I^2_X}\\\\
&=\sqrt{\left(\frac{V}{R}\right)^2+\left(\frac{V}{X}\right)^2}\\\\
&=\frac{\sqrt{R^2+X^2}}{RX}V
\end{align*}$$

となり、$(31)$式に等しくなる。

 

さらに、力率$\cos\theta$は、

$$\begin{align*}
\cos\theta&=\frac{Z}{R}\\\\
&=\frac{X}{\sqrt{R^2+X^2}} ・・・(33)\\\\\\
\cos\theta&=\frac{I_R}{I}\\\\
&=\frac{I_R}{\sqrt{I^2_R+I^2_X}} ・・・(34)
\end{align*}$$

という2通りの式で表せる(直列回路の場合と異なることに注意)。

 

また、抵抗$R[\Omega]$における消費電力$P[\mathrm{W}]$は、

$$\begin{align*}
P&=VI\cos\theta\\\\
&=\frac{\sqrt{R^2+X^2}}{RX}V^2\times\frac{X}{\sqrt{R^2+X^2}}\\\\
&=\frac{V^2}{R} ・・・(35)
\end{align*}$$

 

三相交流回路

Y(スター)結線

図17のように、抵抗(インピーダンス)を「$\mathrm{Y}$」の形に接続することを$\mathrm{Y}$(スター)結線という。

 

図17 $\mathrm{Y}$結線回路

 

同図において、線間電圧を$V_l[\mathrm{V}]$,相電圧を$V_p[\mathrm{V}]$とすると、両者には下記の関係がある。

$$V_l=\sqrt{3}\times V_p ・・・(36)$$

 

また、線電流を$I_l[\mathrm{A}]$,相電流を$I_p[\mathrm{A}]$とすると、

$$I_l=I_p ・・・(37)$$

 

さらに、3つの抵抗$R[\Omega]$で消費される電力$P[\mathrm{W}]$は、

$$\begin{align*}
P&=3V_pI_p\cos\theta\\\\
&=\sqrt{3}V_lI_l\cos\theta\\\\
&=3I^2_pR ・・・(38)
\end{align*}$$

 

Δ(デルタ)結線

図18のように、抵抗(インピーダンス)を「$\Delta$」の形に接続することを$\Delta$(デルタ)結線という。

 

図18 $\Delta$結線回路

 

同図において、線間電圧を$V_l[\mathrm{V}]$,相電圧を$V_p[\mathrm{V}]$とすると、下記の関係がある。

$$V_l=V_p ・・・(39)$$

 

また、線電流を$I_l[\mathrm{A}]$,相電流を$I_p[\mathrm{A}]$とすると、

$$I_l=\sqrt{3}\times I_p ・・・(40)$$

 

さらに、3つの抵抗$R[\Omega]$で消費される電力$P[\mathrm{W}]$は、

$$\begin{align*}
P&=3V_pI_p\cos\theta\\\\
&=\sqrt{3}V_lI_l\cos\theta\\\\
&=3I^2_pR ・・・(41)
\end{align*}$$

 

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