電気回路の法則・定理まとめ

本記事では、電気工学の基礎となる電気回路の法則・定理のうち、本サイトで解説したものについてまとめる。

電気回路とは

電気回路(electric(またはelectrical) circuit)とは「各々の性質をもつ回路素子を、それぞれの端子にて相互に接続することで、全体として所定の性質が満たされるように構成されたシステム」を示す。

回路素子を他の素子と接続する点を端子(terminal)といい、図1のように2つの端子を持つ素子は2端子素子(Two-terminal element)という。

 

また、電気回路を構成する素子には、流入する電流および端子間の電圧(電位差)に関して様々な特性をもつものがある。

例えば、図1に示す端子間の電圧が一定である電圧源、流れる電流が一定である電流源がある。

 

さらに、供給された電気エネルギーを消費・蓄積・放出する素子は受動素子といい、抵抗、コイル(インダクタ)、コンデンサ(キャパシタ)が含まれる。

(なお、ダイオードやトランジスタのように供給された電気エネルギーを整流・増幅する素子は能動素子という)

 

図1 2端子素子

 

各種電気回路法則・定理の概要

ここでは、本サイトで解説した電気回路理論の概要を示す。

詳しい解説および式の導出・証明については、リンク先の個別の記事を参照のこと。

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オームの法則

オームの法則(Ohm’s law)は「均一の物質から成る導線の2点間の電位差は、2点間に流れる電流に比例する」という法則である。

 

電圧$V$と電流$I$の間には、比例定数である電気抵抗$R$を用いると、次の関係が成り立つ。

$$V=RI\ \Leftrightarrow\ I=\frac{V}{R}$$

 

 

オームの法則

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キルヒホッフの法則

キルヒホッフの第一法則

キルヒホッフの第一法則(または電流則、KCL;Kirchhoff’s current law)は「電気回路の任意の節点に流れ込む電流の和は、その節点から流れ出る電流の和に等しい」という法則である。

 

回路上の任意の節点におけるKCLの一般式は、次の通り。

$$\sum_{i=1}^{n}I_i=0$$

 

 

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キルヒホッフの第二法則

キルヒホッフの第二法則(または電圧則、KVL;Kirchhoff’s voltage law)は「電気回路の任意の閉じた電路において、各回路素子に発生する電位差の和は0である」という法則である。

 

任意の閉路におけるKVLの一般式は、次の通り。

$$\sum_{i=1}^{n}V_i=0$$

 

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ジュールの法則

ジュールの法則(ジュールの第一法則、Joule’s law)は「導体内で単位時間あたりに発生する熱は、(電圧)×(電流)または(抵抗)×(電流の2乗)に比例する」という法則である。

 

ジュールの法則を式で表すと、次の通り。

$$P=VI=RI^2$$

 

ジュールの法則

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重ね合わせの理

重ね合わせの理(または重ねの理、重畳の理、superposition principle)「複数の電源を持つ線形回路において、任意の点における電流および任意の点の間の電圧は、各電源が単独に存在していた場合の電流および電圧の和に等しい」というものである。

 

下式はその一例で「複数の電圧源が存在する回路の電流は、各電圧源が単独に存在する場合の電流の総和に等しい」ということを示している。

$$\begin{eqnarray} \left( \begin{array}{c} I_1 \\ I_2 \\ \vdots \\ I_n \end{array}\right) = \left( \begin{array}{c} {_1}I_1+ {_2}I_1+\ldots+{_n}I_1 \\ {_1}I_2+ {_2}I_2+\ldots+{_n}I_2 \\ \vdots \\ {_1}I_n+ {_2}I_n+\ldots+{_n}I_n \end{array}\right)\end{eqnarray}$$

 

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鳳・テブナンの定理

鳳・テブナンの定理(Thevenin’s theorem)は「複数の電源を含む電気回路の中の一対の端子間の抵抗に流れる電流を求めるとき、回路の他の部分を一つの等価電源とみなして計算を行うことができる」というものである。

 

下図のように端子$\mathrm{a-b}$間に抵抗$R$を接続したとき、端子間に流れる電流$I$は次式で表され、「回路中の電源および抵抗の配置がどのようであっても、回路全体を等価電圧源$E_0$および合成抵抗$R_0$で置き換えることができる」ということを表している。

$$I=\frac{E_0}{R_0+R}$$

 

 

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ノートンの定理

ノートンの定理(Norton’s theorem)は「複数の電源を含む電気回路を、1つの電流源と1つの内部コンダクタンスで表すことができる」という定理である。

 

下図の回路において、端子$\mathrm{a-b}$間にコンダクタンス$G$を接続した場合の端子間電圧$V$は次式で表される。

$$V=\frac{J_0}{G_0+G}$$

 

 

ノートンの定理

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ミルマンの定理

ミルマンの定理(帆足−ミルマンの定理、全電圧の定理、Millman’s theoremは、複数の電圧源および直列アドミタンスが並列接続された回路の開放電圧を求めるために使用される。

 

下図のような$n$個の電圧源$\dot{E}_1,\ \dot{E}_2,\ \dot{E}_3,\ \cdots,\ \dot{E}_n$および直列アドミタンス$\dot{Y}_1,\ \dot{Y}_2,\ \dot{Y}_3,\ \cdots,\ \dot{Y}_n$の並列接続で構成される回路において、端子$\mathrm{A-B}$間の開放電圧$\dot{V}_\mathrm{AB}$は、次式で表される。

$$\dot{V}_\mathrm{AB}=\frac{\displaystyle \sum_{k=1}^n \dot{Y}_k\dot{E}_k}{\displaystyle \sum_{k=1}^n \dot{Y}_k}$$

 

 

ミルマンの定理

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Y⇔Δ回路のインピーダンス変換(Y-Δ変換)

下図のような$\mathrm{A,\ B,\ C}$の各端子間のインピーダンス$\dot{Z}_\mathrm{a},\ \dot{Z}_\mathrm{b},\ \dot{Z}_\mathrm{c}$($\mathrm{Y}$結線)および$\dot{Z}_1,\ \dot{Z}_2,\ \dot{Z}_3$($\Delta$結線)の間には、次の変換式が成り立つ。

 

 

Y回路→Δ回路への変換

$$\begin{align*}
\dot{Z}_1&=\frac{\dot{Z}_\mathrm{a}\dot{Z}_\mathrm{b}+\dot{Z}_\mathrm{b}\dot{Z}_\mathrm{c}+\dot{Z}_\mathrm{c}\dot{Z}_\mathrm{a}}{\dot{Z}_\mathrm{c}}\\\\
\dot{Z}_2&=\frac{\dot{Z}_\mathrm{a}\dot{Z}_\mathrm{b}+\dot{Z}_\mathrm{b}\dot{Z}_\mathrm{c}+\dot{Z}_\mathrm{c}\dot{Z}_\mathrm{a}}{\dot{Z}_\mathrm{a}}\\\\
\dot{Z}_3&=\frac{\dot{Z}_\mathrm{a}\dot{Z}_\mathrm{b}+\dot{Z}_\mathrm{b}\dot{Z}_\mathrm{c}+\dot{Z}_\mathrm{c}\dot{Z}_\mathrm{a}}{\dot{Z}_\mathrm{b}}
\end{align*}$$

 

Δ回路→Y回路への変換

$$\begin{align*}
\dot{Z}_\mathrm{a}&=\frac{\dot{Z}_{3}\dot{Z}_{1}}{\dot{Z}_{1}+\dot{Z}_{2}+\dot{Z}_{3}}\\\\
\dot{Z}_\mathrm{b}&=\frac{\dot{Z}_{1}\dot{Z}_{2}}{\dot{Z}_{1}+\dot{Z}_{2}+\dot{Z}_{3}}\\\\
\dot{Z}_\mathrm{c}&=\frac{\dot{Z}_{2}\dot{Z}_{3}}{\dot{Z}_{1}+\dot{Z}_{2}+\dot{Z}_{3}}
\end{align*}$$

 

Y-Δ変換

電気回路の計算を行う際、Y結線の回路とΔ結線の回路を相互に変換することが必要になる場合がある(電験でも「理論」科目等で頻出の計算にもなっている)。本記事では、そんなY回路⇔Δ回路の変換式(Y-Δ変換またはΔ-Y変換の式)を導出する。[…]

 

共振回路

直列共振

直列共振現象(series resonance)は、下図のような$RLC$直列回路において、

$$\omega=\omega_0=\frac{1}{\sqrt{LC}}$$

のとき、電流$\dot{I}$が最大値をとる現象のこと。

 

このときの電流$\dot{I}$および抵抗・リアクトル・コンデンサの端子電圧$\dot{V}_\mathrm{R},\ \dot{V}_\mathrm{L},\ \dot{V}_\mathrm{C}$は、次式のようになる。

$$\begin{align*}
\dot{I}|_{\omega=\omega_0}&=\frac{\dot{E}}{R}\\\\
\dot{V}_\mathrm{R}|_{\omega=\omega_0}&=R\dot{I}=\dot{E}\\\\
\dot{V}_\mathrm{L}|_{\omega=\omega_0}&=j\omega_0 L\dot{I}=j\frac{1}{R}\sqrt{\frac{L}{C}}\dot{E}\\\\
\dot{V}_\mathrm{C}|_{\omega=\omega_0}&=\frac{\dot{I}}{j\omega_0 C}=-j\frac{1}{R}\sqrt{\frac{L}{C}}\dot{E}
\end{align*}$$

 

 

直列共振

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並列共振

並列共振現象(反共振、parallel resonance)は、下図のような$RLC$並列回路において、

$$\omega=\omega_0=\frac{1}{\sqrt{LC}}$$

のとき、端子電圧$\dot{V}$が最大値をとる現象のこと。

 

このときの端子電圧$\dot{V}$,および抵抗・リアクトル・コンデンサに流れ込む電流$\dot{I}_\mathrm{R},\ \dot{I}_\mathrm{L},\ \dot{I}_\mathrm{C}$は、次式のようになる。

$$\begin{align*}
\dot{V}|_{\omega=\omega_0}&=R\dot{I} ・・・(4)\\\\
\dot{I}_\mathrm{R}|_{\omega=\omega_0}&=\frac{\dot{V}}{R}=\dot{I} ・・・(5)\\\\
\dot{I}_\mathrm{L}|_{\omega=\omega_0}&=\frac{\dot{V}}{j\omega_0 L}=-jR\sqrt{\frac{C}{L}}\dot{I} ・・・(6)\\\\
\dot{I}_\mathrm{C}|_{\omega=\omega_0}&=j\omega_0 C\dot{V}=jR\sqrt{\frac{C}{L}}\dot{I} ・・・(7)
\end{align*}$$

 

 

並列共振

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参考文献

 
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