三相電圧形3レベルインバータ

本記事では、インバータ出力の高調波抑制・大容量化を図るための構成となる「三相電圧形3レベルインバータ」について解説する。





マルチレベルインバータとは

直流電圧を交流電圧に変換するインバータの場合、回路の出力としては「直流電圧の値」および「その正負を反転した値」の合計2種類の値を出力するのが通常となる。

例えば本サイトで解説している三相電圧形インバータの場合、入力となる直流電圧を$E$とすると、出力側の相電圧として$\pm\displaystyle\frac{E}{2}$の2値を交互にとる波形となる。

 

しかし上記の場合、出力波形は方形波状となることから、純粋な正弦波交流波形と比較すると高調波が含有し、歪みの大きい波形となってしまう。

そこで、このような波形の改善を目的として、入力となる直流電圧を複数の値に分割し、3種類以上の値を出力できるようにした回路マルチレベルインバータ(Multilevel Inverter)という。

 

三相電圧形$N$レベルインバータ($N$は整数)の場合、分割数は$\left(N-1\right)$となり、出力相電圧は$N$種類、出力線間電圧の値は$\left(2N-1\right)$種類の値をとる。

例えば今回解説する3レベルインバータの場合、$N=3$($3-1=2$分割)となり、出力相電圧は$\pm\displaystyle\frac{E}{2},\ 0$の$3$種類、出力線間電圧は$\pm E,\ \pm\displaystyle\frac{E}{2},\ 0$の$2\cdot 3-1=5$種類の値をとることができる。

なお、通常の三相電圧形インバータは「2レベルインバータ」ともいう。

 

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三相電圧形3レベルインバータの回路構成

三相電圧形3レベルインバータの回路構成(1相分)を図1に示す。

 

図1 三相電圧形3レベルインバータ(1相分)

 

図1の回路は$\mathrm{u}$相のものを示しており、スイッチ(図ではトランジスタ)$\mathrm{S_{u1}}\sim\mathrm{S_{u4}}$および逆並列ダイオード$\mathrm{D_{u1}}\sim\mathrm{D_{u4}}$を組み合わせたアーム4セットに加え、クランプダイオード$\mathrm{D_{u5}},\ \mathrm{D_{u6}}$が中性点$\mathrm{O}$と$\mathrm{S_{u1}}-\mathrm{S_{u2}}$間または$\mathrm{S_{u3}}-\mathrm{S_{u4}}$間に接続されることによって構成されている。

 

また、これに$\mathrm{v}$相および$\mathrm{w}$相分の回路を組み合わせた3レベルインバータ全体の回路を図2に示す。

 

図2 三相電圧形3レベルインバータ

 

図2において、電源側には直流電圧$E$の直流電源を用いており、並列接続された分圧用コンデンサによって電圧が中性点$\mathrm{O}$を挟んで$\displaystyle{\frac{E}{2}}$ずつに分割される。

一方、負荷側には各相のアーム間にある端子$\mathrm{u},\ \mathrm{v},\ \mathrm{w}$に誘導性の平衡負荷が接続されている。

 

そして、今回考える回路の電圧については次のとおりとし、図2の方向を正とする。

  • $v_\mathrm{uO},\ v_\mathrm{vO},\ v_\mathrm{wO}$:電源側の中性点$\mathrm{O}$を基準としたときの各相端子$\mathrm{u},\ \mathrm{v},\ \mathrm{w}$の電位(出力相電圧
  • $v_\mathrm{uv},\ v_\mathrm{vw},\ v_\mathrm{wu}$:各相端子$\mathrm{u},\ \mathrm{v},\ \mathrm{w}$間の電圧(出力線間電圧
  • $i_\mathrm{u},\ i_\mathrm{v},\ i_\mathrm{w}$:各相の出力電流

 

回路の動作と出力波形

回路の動作モード

三相電圧形3レベルインバータの動作モードについて、図1の1相分の回路におけるパターンを図3$(\mathrm{a})\sim(\mathrm{c})$に示す。

 

 

$(\mathrm{a})\ v_\mathrm{uO}=\displaystyle\frac{E}{2}$($\mathrm{S_{u1}},\ \mathrm{S_{u2}}$オン・$\mathrm{S_{u3}},\ \mathrm{S_{u4}}$オフ)

 

 

$(\mathrm{b})\ v_\mathrm{uO}=0$($\mathrm{S_{u2}},\ \mathrm{S_{u3}}$オン・$\mathrm{S_{u1}},\ \mathrm{S_{u4}}$オフ)

 

 

$(\mathrm{c})\ v_\mathrm{uO}=-\displaystyle\frac{E}{2}$($\mathrm{S_{u3}},\ \mathrm{S_{u4}}$オン・$\mathrm{S_{u1}},\ \mathrm{S_{u2}}$オフ)

図3 三相電圧形3レベルインバータの動作モード(1相分)

 

図3の各動作モードは、各スイッチのオン・オフの状態によって次のように成り立っている(なお、今回は電流$i_\mathrm{u}$におけるモードの区分けは行わない)。

$(\mathrm{a})$:4つのアームのうち上側2つに位置する$\mathrm{S_{u1}},\ \mathrm{S_{u2}}$がオンになり、出力端子$\mathrm{u}$の中性点$\mathrm{O}$に対する電位が$\displaystyle\frac{E}{2}$となる。このとき、電流は$i_\mathrm{u}>0$であれば$\mathrm{S_{u1}},\ \mathrm{S_{u2}}$を、$i_\mathrm{u}<0$であれば$\mathrm{D_{u1}},\ \mathrm{D_{u2}}$を通過する。

$(\mathrm{b})$:4つのアームのうち中央2つに位置する$\mathrm{S_{u2}},\ \mathrm{S_{u3}}$がオンになり、出力端子$\mathrm{u}$と中性点$\mathrm{O}$が導通する(電位差は$0$となる)。このとき、電流は$i_\mathrm{u}>0$であれば$\mathrm{D_{u5}},\ \mathrm{S_{u2}}$を、$i_\mathrm{u}<0$であれば$\mathrm{S_{u3}},\ \mathrm{D_{u6}}$を通過する。

$(\mathrm{c})$:4つのアームのうち下側2つに位置する$\mathrm{S_{u3}},\ \mathrm{S_{u4}}$がオンになり、出力端子$\mathrm{u}$の中性点$\mathrm{O}$に対する電位が$-\displaystyle\frac{E}{2}$となる。このとき、電流は$i_\mathrm{u}>0$であれば$\mathrm{S_{u3}},\ \mathrm{S_{u4}}$を、$i_\mathrm{u}<0$であれば$\mathrm{D_{u3}},\ \mathrm{D_{u4}}$を通過する。

 

クランプダイオードの役割

図1の$\mathrm{D_{u5}},\ \mathrm{D_{u6}}$はクランプダイオード(クランピングダイオード)と呼ばれる。

例として図1の上側の2アームについて考えると、$\mathrm{S_{u1}}$と$\mathrm{S_{u2}}$の接続点の電位が中性点$\mathrm{O}$の電位以下になるとき、クランプダイオード$\mathrm{D_{u5}}$が導通することで、その点は中性点$\mathrm{O}$の電位に固定(クランプ)される。

図1の下側の2アームについても同様に、$\mathrm{S_{u3}}$と$\mathrm{S_{u4}}$の接続点の電位が中性点$\mathrm{O}$の電位以上になるとき、クランプダイオード$\mathrm{D_{u6}}$が導通することで、その点は中性点$\mathrm{O}$の電位に固定(クランプ)される。

 

いずれの場合でも、各アームのスイッチへの印加電圧は最大でも$\displaystyle\frac{E}{2}$に維持される。

このようにクランプダイオードには、その接続により各アームへの印加電圧のバランスをとり、過度な電圧が印加されないようにする役割がある。

なお、図1および図2のマルチレベルインバータの回路構成は「ダイオードクランプ形」と呼ばれ、クランプ要素としてダイオードが用いられているのが特徴である。

このタイプのものは接続点の電位を「中性点のものに固定」することからNPC(Neutral Point Clamped)インバータとも呼ばれる。

その他、クランプ要素としてコンデンサを用いる「フライングキャパシタ形」、クランプ要素を持たず複数の2レベルインバータを組み合わせて使用する「チェーンリンク形」がある。

 

回路の出力電圧波形(相電圧のパルス幅2π/3)

本記事では、出力相電圧の波形幅(パルス幅)が異なる2種類の波形についてみていく。

 

まず、図4に三相電圧形3レベルインバータの出力電圧波形(出力相電圧$v_\mathrm{uO},\ v_\mathrm{vO},\ v_\mathrm{wO}$・出力線間電圧$v_\mathrm{uv},\ v_\mathrm{vw},\ v_\mathrm{wu}$)の一例を示す。

同図は、次のような条件で出力した場合の波形となる。

  • 各相電圧のパルス幅は$\displaystyle\frac{2}{3}\pi\left(120^\circ\right)$とする。
  • 各相電圧の位相差はそれぞれ$\displaystyle{\frac{2}{3}\pi}$とする。

 

なお、グラフの点線間の位相差はそれぞれ$\displaystyle{\frac{\pi}{6}}$で区切られている。

 

図4 三相電圧形インバータ(3レベルインバータ)の出力電圧波形(相電圧のパルス幅$\displaystyle\frac{2}{3}\pi$)

 

図4では、図3$(\mathrm{a})\sim(\mathrm{c})$の動作モードが順々に切り換わることにより出力がなされるため、出力相電圧$v_\mathrm{uO},\ v_\mathrm{vO},\ v_\mathrm{wO}$は、その周期$2\pi$において$\pm\displaystyle{\frac{E}{2}},\ 0$の3レベルの値をとる方形波となる。

 

また、出力線間電圧$v_\mathrm{uv}=v_\mathrm{uO}-v_\mathrm{vO},\ v_\mathrm{vw}=v_\mathrm{vO}-v_\mathrm{wO},\ v_\mathrm{wu}=v_\mathrm{wO}-v_\mathrm{uO}$は各位相における相電圧の差によって計算でき、同図の例の場合は$\pm E,\ \displaystyle\frac{E}{2}$の計4レベルの値をとる周期$2\pi$の階段状の交流波形となる。

そして、これらの線間電圧の波形も位相差がそれぞれ$\displaystyle{\frac{2}{3}\pi}$となっており、三相平衡な電圧が出力されていることがわかる。

 

回路の出力電圧波形(相電圧のパルス幅5π/6)

次に図4とは別の出力電圧波形(出力相電圧$v_\mathrm{uO},\ v_\mathrm{vO},\ v_\mathrm{wO}$・出力線間電圧$v_\mathrm{uv},\ v_\mathrm{vw},\ v_\mathrm{wu}$)を図5に示す。

同図は、次のような条件で出力した場合の波形となる。

  • 各相電圧のパルス幅は$\displaystyle\frac{5}{6}\pi\left(150^\circ\right)$とする。
  • 各相電圧の位相差はそれぞれ$\displaystyle{\frac{2}{3}\pi}$とする。

 

なお、グラフの点線間の位相差はそれぞれ$\displaystyle{\frac{\pi}{6}}$で区切られている。

 

図5 三相電圧形インバータ(3レベルインバータ)の出力電圧波形(相電圧のパルス幅$\displaystyle\frac{5}{6}\pi$)

 

図5でも図4と同様、図3$(\mathrm{a})\sim(\mathrm{c})$の動作モードが順々に切り換わることにより出力がなされるため、出力相電圧$v_\mathrm{uO},\ v_\mathrm{vO},\ v_\mathrm{wO}$は、その周期$2\pi$において$\pm\displaystyle{\frac{E}{2}},\ 0$の3レベルの値をとる方形波となる。

 

ただ、出力線間電圧$v_\mathrm{uv}=v_\mathrm{uO}-v_\mathrm{vO},\ v_\mathrm{vw}=v_\mathrm{vO}-v_\mathrm{wO},\ v_\mathrm{wu}=v_\mathrm{wO}-v_\mathrm{uO}$は各位相における相電圧の差によって計算できるが、同図の例の場合は$\pm E,\ \displaystyle\frac{E}{2},\ 0$の計5レベルの値をとる周期$2\pi$の階段状の交流波形となる。

また、これらの線間電圧の波形も位相差がそれぞれ$\displaystyle{\frac{2}{3}\pi}$となっており、三相平衡な電圧が出力されていることがわかる。

 

このような階段状の交流波形を得られる他の例としては、複数台のインバータを接続した多重インバータがある。
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回路の電圧のフーリエ級数展開と実効値

ここでは、図4および図5で波形で示した各出力線間電圧について、フーリエ級数展開した式および実効値を算出する。

今回はフーリエ級数展開の計算を簡略化するため、これらの図の個々の波形ではなく、軸の位置を調整した波形について計算を行う(つまり、位相の位置は考慮せず、同一の波形形状の場合の計算結果についてみていくこととする)。

相電圧のパルス幅2π/3の場合

フーリエ級数展開

まず、図4の出力線間電圧と同一形状となるような、階段状の交流電圧$v_\mathrm{l}$の波形を図6に示す。

 

図6 三相電圧形インバータ(3レベルインバータ)の線間電圧$v_\mathrm{l}$の波形(相電圧のパルス幅$\displaystyle\frac{2}{3}\pi$)

 

図4より、$v_\mathrm{l}$は奇関数であるため、フーリエ級数における係数$a_0=0,\ a_n=0,\ b_n$はフーリエ級数展開の記事の$(5)$式より、

$$\begin{align*}
b_n&=\frac{4}{2\pi}\int^{\pi}_{0}v_\mathrm{l}\sin n\omega t\ \mathrm{d}\omega t\\\\
&=\frac{2}{\pi}\left\{\int^{\frac{\pi}{3}}_{0}\frac{E}{2}\sin n\omega t\ \mathrm{d}\omega t+\int^{\frac{2}{3}\pi}_{\frac{\pi}{3}}E\sin n\omega t\ \mathrm{d}\omega t+\int^{\pi}_{\frac{2}{3}\pi}\frac{E}{2}\sin n\omega t\ \mathrm{d}\omega t\right\}\\\\
&=\frac{E}{\pi}\left\{\left[-\frac{1}{n}\cos n\omega t\right]^{\frac{\pi}{3}}_{0}+\left[-\frac{2}{n}\cos n\omega t\right]^{\frac{2}{3}\pi}_{\frac{\pi}{3}}+\left[-\frac{1}{n}\cos n\omega t\right]^{\pi}_{\frac{2}{3}\pi}\right\}\\\\
&=\frac{E}{n\pi}\left\{-\left(\cos\frac{n\pi}{3}-\cos0\right)-2\left(\cos\frac{2n\pi}{3}-\cos\frac{n\pi}{3}\right)-\left(\cos n\pi-\cos\frac{2n\pi}{3}\right)\right\}\\\\
&=\frac{E}{n\pi}\left\{1-\cos n\pi-\left(\cos\frac{2n\pi}{3}-\cos\frac{n\pi}{3}\right)\right\}\\\\
&=\frac{2E}{n\pi}\left(\sin^2\frac{n\pi}{2}+\sin\frac{n\pi}{2}\sin\frac{n\pi}{6}\right)\\\\
&=\frac{2E}{n\pi}\sin\frac{n\pi}{2}\left(\sin\frac{n\pi}{2}+\sin\frac{n\pi}{6}\right)\\\\
&=\frac{4E}{n\pi}\sin\frac{n\pi}{2}\sin\frac{n\pi}{3}\cos\frac{n\pi}{6} ・・・(1)
\end{align*}$$

 

$(1)$式および後に示す$(3)$式の計算では、三角関数の倍角の公式、および和積の公式「cos 〇 –cos △」「sin 〇 +sin △」の変換を用いている。

 

ここで、$n$が偶数のとき、$\sin\displaystyle{\frac{n\pi}{2}}=0$であることから、$(1)$式$=0$となる。

また、$n$が3の倍数のとき、$\sin\displaystyle{\frac{n\pi}{3}}=0,\ \cos\displaystyle{\frac{n\pi}{6}}=0$であることから、こちらも$(1)$式$=0$となる。

 

以上より、各$n$における係数の符号にも注意すると、図6の波形$v_\mathrm{l}$のフーリエ級数展開は、

$$\begin{align*}
v_\mathrm{l}&=\displaystyle \sum_{n=1}^\infty b_n\sin n\omega t \left(n=1,\ 5,\ 7,\ 11,\cdots\right)\\\\
&=\frac{4E}{\pi}\left(\sin \omega t+\frac{1}{5}\sin 5\omega t+\frac{1}{7}\sin 7\omega t+\frac{1}{11}\sin 11\omega t+\cdots\right) ・・・(2)
\end{align*}$$

 

$(2)$式より、$n$が3の倍数、すなわち第3高調波を含む3の倍数の周波数成分が含まれない形になる。

 

なお、$(2)$式で$n=1$,すなわち$v_\mathrm{l}$の基本波成分$v_\mathrm{l1}$は、

$$v_\mathrm{l1}=\frac{4E}{\pi}\sin \omega t$$

 

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実効値

次に、実効値の定義式より、$v_\mathrm{l}$の実効値を計算する。

図6の$v_\mathrm{l}$の波形は「正負で対称性があり、かつ最大値を通る縦軸に平行な直線に対して線対称な波形」であるため、$\displaystyle{\frac{1}{4}}$周期である位相$0\sim\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$について計算を行うと、

$$\begin{align*}
\sqrt{\frac{1}{\displaystyle{\frac{\pi}{2}}}\int^{\frac{\pi}{2}}_{0}v^2\ \mathrm{d}\omega t}&=\sqrt{\frac{2}{\pi}\left\{\int^{\frac{\pi}{3}}_{0}\left(\frac{E}{2}\right)^2\ \mathrm{d}\omega t+\int^{\frac{\pi}{2}}_{\frac{\pi}{3}}E^2\ \mathrm{d}\omega t\right\}}\\\\
&=\sqrt{\frac{1}{2\pi}\left\{\left[E^2\omega t\right]^{\frac{\pi}{3}}_{0}+\left[4E^2\omega t\right]^{\frac{\pi}{2}}_{\frac{\pi}{3}}\right\}}\\\\
&=\sqrt{\frac{E^2}{2\pi}\left\{\left(\frac{\pi}{3}-0\right)+4\left(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{3}\right)\right\}}\\\\
&=\sqrt{\frac{E^2}{2\pi}\cdot\pi}\\\\
&=\frac{E}{\sqrt{2}}\fallingdotseq0.707E
\end{align*}$$

となり、正弦波交流の場合の実効値と等しくなる。

 

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相電圧のパルス幅5π/6の場合

フーリエ級数展開

次に、図5の出力線間電圧と同一形状となるような、階段状の交流電圧$v_\mathrm{l}$の波形を図7に示す。

 

図7 三相電圧形インバータ(3レベルインバータ)の線間電圧$v_\mathrm{l}$の波形(相電圧のパルス幅$\displaystyle\frac{5}{6}\pi$)

 

図5より、$v_\mathrm{l}$は奇関数であるため、フーリエ級数における係数$a_0=0,\ a_n=0,\ b_n$はフーリエ級数展開の記事の$(5)$式より、

$$\begin{align*}
b_n&=\frac{4}{2\pi}\int^{\pi}_{0}v_\mathrm{l}\sin n\omega t\ \mathrm{d}\omega t\\\\
&=\frac{2}{\pi}\left\{\int^{\frac{\pi}{4}}_{\frac{\pi}{12}}\frac{E}{2}\sin n\omega t\ \mathrm{d}\omega t+\int^{\frac{3}{4}\pi}_{\frac{\pi}{4}}E\sin n\omega t\ \mathrm{d}\omega t+\int^{\frac{11}{12}\pi}_{\frac{3}{4}\pi}\frac{E}{2}\sin n\omega t\ \mathrm{d}\omega t\right\}\\\\
&=\frac{E}{\pi}\left\{\left[-\frac{1}{n}\cos n\omega t\right]^{\frac{\pi}{4}}_{\frac{\pi}{12}}+\left[-\frac{2}{n}\cos n\omega t\right]^{\frac{3}{4}\pi}_{\frac{\pi}{4}}+\left[-\frac{1}{n}\cos n\omega t\right]^{\frac{11}{12}\pi}_{\frac{3}{4}\pi}\right\}\\\\
&=\frac{E}{n\pi}\left\{-\left(\cos\frac{n\pi}{4}-\cos\frac{n\pi}{12}\right)-2\left(\cos\frac{3n\pi}{4}-\cos\frac{n\pi}{4}\right)-\left(\cos\frac{11n\pi}{12}-\cos\frac{3n\pi}{4}\right)\right\}\\\\
&=\frac{E}{n\pi}\left\{\left(\cos\frac{n\pi}{12}-\cos\frac{11n\pi}{12}\right)+\left(\cos\frac{n\pi}{4}-\cos\frac{3n\pi}{4}\right)\right\}\\\\
&=\frac{2E}{n\pi}\left(\sin\frac{n\pi}{2}\sin\frac{5n\pi}{12}+\sin\frac{n\pi}{2}\sin\frac{n\pi}{4}\right)\\\\
&=\frac{2E}{n\pi}\sin\frac{n\pi}{2}\left(\sin\frac{5n\pi}{12}+\sin\frac{n\pi}{4}\right)\\\\
&=\frac{4E}{n\pi}\sin\frac{n\pi}{2}\sin\frac{n\pi}{3}\cos\frac{n\pi}{12} ・・・(3)
\end{align*}$$

 

ここで、$n$が偶数のとき、$\sin\displaystyle{\frac{n\pi}{2}}=0$であることから、$(3)$式$=0$となる。

また、$n$が3の倍数のとき、$\sin\displaystyle{\frac{n\pi}{3}}=0$であることから、こちらも$(3)$式$=0$となる。

 

さらに、$n=6k+1\left(k=0,\ 1,\ 2,\cdots\right)$のとき、

$$\left|\cos\frac{\left(6k+1\right)\pi}{12}\right|=\frac{\sqrt{6}\pm\sqrt{2}}{4}$$

$n=6k+5\left(k=0,\ 1,\ 2,\cdots\right)$のとき、

$$\left|\cos\frac{\left(6k+5\right)\pi}{12}\right|=\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$$

 

以上より、各$n$における係数の符号にも注意すると、図7の波形$v_\mathrm{l}$のフーリエ級数展開は、

$$\begin{align*}
v_\mathrm{l}&=\displaystyle \sum_{n=1}^\infty b_n\sin n\omega t \left(n=1,\ 5,\ 7,\ 11,\cdots\right)\\\\
&=\frac{4E}{\pi}\left\{\frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}\left(\sin \omega t+\frac{1}{7}\sin 7\omega t-\cdots\right)+\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}\left(-\frac{1}{5}\sin 5\omega t-\frac{1}{11}\sin 11\omega t+\cdots\right)\right\} ・・・(4)
\end{align*}$$

 

$(4)$式より、こちらも$n$が3の倍数、すなわち第3高調波を含む3の倍数の周波数成分が含まれない形になる。

 

なお、$(4)$式で$n=1$,すなわち$v_\mathrm{l}$の基本波成分$v_\mathrm{l1}$は、

$$v_\mathrm{l1}=\frac{4E}{\pi}\frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}\sin \omega t$$

 

実効値

次に、実効値の定義式より、$v_\mathrm{l}$の実効値を計算する。

図7の$v_\mathrm{l}$の波形は「正負で対称性があり、かつ最大値を通る縦軸に平行な直線に対して線対称な波形」であるため、$\displaystyle{\frac{1}{4}}$周期である位相$0\sim\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$について計算を行うと、

$$\begin{align*}
\sqrt{\frac{1}{\displaystyle{\frac{\pi}{2}}}\int^{\frac{\pi}{2}}_{0}v^2\ \mathrm{d}\omega t}&=\sqrt{\frac{2}{\pi}\left\{\int^{\frac{\pi}{4}}_{\frac{\pi}{12}}\left(\frac{E}{2}\right)^2\ \mathrm{d}\omega t+\int^{\frac{\pi}{2}}_{\frac{\pi}{4}}E^2\ \mathrm{d}\omega t\right\}}\\\\
&=\sqrt{\frac{1}{2\pi}\left\{\left[E^2\omega t\right]^{\frac{\pi}{4}}_{\frac{\pi}{12}}+\left[4E^2\omega t\right]^{\frac{\pi}{2}}_{\frac{\pi}{4}}\right\}}\\\\
&=\sqrt{\frac{E^2}{2\pi}\left\{\left(\frac{\pi}{4}-\frac{\pi}{12}\right)+4\left(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{4}\right)\right\}}\\\\
&=\sqrt{\frac{E^2}{2\pi}\cdot\left(\frac{\pi}{24}+\frac{\pi}{4}\right)}\\\\
&=\sqrt{\frac{7}{12}}E\fallingdotseq0.764E
\end{align*}$$

 

図6の波形の計算結果と比較すると、$v_\mathrm{l}=E$となる位相範囲が広いため、少し値が大きくなっている。

 

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