直列共振回路の理論

本記事では、抵抗・リアクトル・コンデンサによる$RLC$直列共振回路について解説する。

並列共振回路については、下記「並列共振回路の理論」を参照してほしい。
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直列共振回路の概要

回路の固有振動

図1のような抵抗$R$,リアクトル$L$,コンデンサ$C$が直列に接続された回路を考える。

 

図1 $RLC$直列回路

 

コンデンサが十分充電された状態でスイッチ$\mathrm{S}$を閉じたときの回路方程式は、「RLC直列回路の過渡現象(直流回路)」の記事の$(1)$式と同様に解くことができ、回路に流れる電流$i$は、ある周波数で振動する波形になる。

 

図1の抵抗$R$の値が十分小さいとすると、この振動の周波数$\omega_0$は(同記事の$i$の式における$\omega_0$に等しく)、

$$\omega_0=\frac{1}{\sqrt{LC}} ・・・(1)$$

 

この振動現象は図1の回路の固有振動といい、$(1)$式は回路の固有振動数に等しい。

この固有振動数と、外部からの力で強制的に振動させたときの振動数が一致すると、その振幅は非常に大きくなる(共振現象)

 

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RLC直列回路の共振

図1の回路に、実効値$E$,角周波数$\omega$の正弦波交流電源$\dot{E}$を接続したものを図2に示す。

なお、本記事では特に断りのない限り、$\dot{E}$を位相の基準とする。

図2 $RLC$直列回路(交流電源接続)

 

図2の回路のインピーダンス$\dot{Z}$は、

$$\dot{Z}=R+j\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right) ・・・(2)$$

 

また、回路に流れる電流$\dot{I}$は、

$$\dot{I}=\frac{\dot{E}}{\dot{Z}}=\frac{\dot{E}}{R+j\left(\omega L-\displaystyle{\frac{1}{\omega C}}\right)} ・・・(3)$$

 

ここで、$\omega=\omega_0$となるときの$\dot{Z}$は、$(2)$式に$(1)$式を代入して、

$$\begin{align*}
\dot{Z}|_{\omega=\omega_0}&=R+j\left(\omega_0 L-\frac{1}{\omega_0 C}\right)\\\\
&=R+j\left(\sqrt{\frac{L}{C}}-\sqrt{\frac{L}{C}}\right)\\\\
&=R ・・・(4)
\end{align*}$$

 

また、このときの電流$\dot{I}$,および抵抗・リアクトル・コンデンサの端子電圧$\dot{V}_\mathrm{R},\ \dot{V}_\mathrm{L},\ \dot{V}_\mathrm{C}$は、$(3),\ (4)$式より、

$$\begin{align*}
\dot{I}|_{\omega=\omega_0}&=\frac{\dot{E}}{R} ・・・(5)\\\\
\dot{V}_\mathrm{R}|_{\omega=\omega_0}&=R\dot{I}=\dot{E} ・・・(6)\\\\
\dot{V}_\mathrm{L}|_{\omega=\omega_0}&=j\omega_0 L\dot{I}=j\frac{1}{R}\sqrt{\frac{L}{C}}\dot{E} ・・・(7)\\\\
\dot{V}_\mathrm{C}|_{\omega=\omega_0}&=\frac{\dot{I}}{j\omega_0 C}=-j\frac{1}{R}\sqrt{\frac{L}{C}}\dot{E} ・・・(8)
\end{align*}$$

 

$(5)$式より、$\omega=\omega_0$のとき($(3)$式の分母の虚部が0になり)、電流$\dot{I}$は最大値をとる。

特に、抵抗$R$の値が小さい場合は、$\dot{I}$は非常に大きな値となる。

これが直列共振現象(series resonance)である。

 

また$(6)\sim(8)$式より、$\omega=\omega_0$で$\dot{V}_\mathrm{L}=-\dot{V}_\mathrm{C}\rightarrow\dot{V}_\mathrm{L}+\dot{V}_\mathrm{C}=0$,すなわち$\dot{V}_\mathrm{L}$と$\dot{V}_\mathrm{C}$は互いに大きさが等しく、位相差が$\pi$であるため、回路内で打ち消し合う。

そして、$\dot{V}_\mathrm{R}$は電源電圧$\dot{E}$に等しくなる。

 

以上のことをベクトル図で示すと、図3のようになる。

 

図3 直列共振時における各端子電圧のベクトル図

 

なお、$(7)$または$(8)$式を変形すると、

$$\left|\dot{V}_\mathrm{L}\right|_{\omega=\omega_0}=\left|\dot{V}_\mathrm{C}\right|_{\omega=\omega_0}=\frac{1}{R}\sqrt{\frac{L}{C}}\left|\dot{E}\right|\equiv Q\left|\dot{E}\right| ・・・(9)$$

 

なお、$(9)$式で、

$$Q\equiv\displaystyle{\frac{1}{R}\sqrt{\frac{L}{C}}}=\displaystyle{\frac{\omega_0 L}{R}}=\displaystyle{\frac{1}{\omega_0 CR}} ・・・(10)$$

は振動の状態を表す指標で「$\mathrm{Q}$値」という。

 

 

直列共振回路の共振曲線

RLC直列回路のインピーダンス

前節で$\omega=\omega_0$のとき、電流$\dot{I}$は最大値をとることがわかった。

次に、$\omega$に対する$\dot{I}$の変化の度合いを考える。

 

$(2)$式で表される図2の回路のインピーダンス$\dot{Z}$について、$(1)$式の$\omega_0$および$(10)$式の$Q$を用いて変形すると、

$$\begin{align*}
\dot{Z}&=R+j\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right)\\\\
&=\frac{\omega_0 L}{Q}+j\left(\omega\cdot\frac{\omega_0}{\omega_0}\cdot L-\frac{1}{\omega}\cdot\frac{\omega_0}{\omega_0}\cdot\frac{1}{C}\right)\\\\
&=\frac{\omega_0 L}{Q}+j\left(\frac{\omega}{\omega_0}\cdot\omega_0 L-\frac{\omega_0}{\omega}\cdot\frac{1}{\omega_0C}\right)\\\\
&=\frac{\omega_0 L}{Q}+j\left(\frac{\omega}{\omega_0}\cdot\omega_0 L-\frac{\omega_0}{\omega}\cdot\omega_0 L\right)\\\\
&=\omega_0 L\left\{\frac{1}{Q}+j\left(\frac{\omega}{\omega_0}-\frac{\omega_0}{\omega}\right)\right\} ・・・(11)
\end{align*}$$

 

ここで、$\omega=\omega_0\pm\Delta\omega$(ただし、$\Delta\omega\ll\omega_0$)であるとすると、

$$\begin{align*}
\frac{\omega}{\omega_0}&=1\pm\frac{\Delta\omega}{\omega_0} ・・・(12)\\\\
\frac{\omega_0}{\omega}&=\frac{1}{1\pm\displaystyle{\frac{\Delta\omega}{\omega_0}}}\\\\
&=\left(1\pm\displaystyle{\frac{\Delta\omega}{\omega_0}}\right)^{-1}\\\\
&\fallingdotseq 1\mp\frac{\Delta\omega}{\omega_0} ・・・(13)
\end{align*}$$

(ただし、$(12)$および$(13)$式は互いに複号同順)

 

$(13)$式の計算では、$x\ll1$のときの二項定理の近似式

$$\left(1+x\right)^a\fallingdotseq 1+ax$$

を用いている(参考)。

 

$(12)$および$(13)$式を$(11)$式に代入すると、

$$\begin{align*}
\dot{Z}&=\omega_0 L\left\{\frac{1}{Q}+j\left(\frac{\omega}{\omega_0}-\frac{\omega_0}{\omega}\right)\right\}\\\\
&\fallingdotseq\omega_0 L\left(\frac{1}{Q}\pm j2\frac{\Delta\omega}{\omega_0}\right) ・・・(14)
\end{align*}$$

となり、インピーダンス$\dot{Z}$は$\mathrm{Q}$値、$\omega$および$\omega_0$を用いて表される。

 

共振曲線と位相特性

ここで、$\omega_1\equiv\omega_0-\Delta\omega,\ \omega_2\equiv\omega_0+\Delta\omega$とすると、$(14)$式で(実部)=(虚部)となるとき、

$$\begin{align*}
\frac{1}{Q}&=2\frac{\Delta\omega}{\omega_0}=\frac{\omega_2-\omega_1}{\omega_0}\\\\
\rightarrow Q&=\frac{\omega_0}{\omega_2-\omega_1} ・・・(15)
\end{align*}$$

 

また、$\dot{Z}$の実部と虚部が等しく、$(15)$式が成り立つときの電流の大きさ(実効値)$I=\left|\dot{I}\right|$は、$(3)$式より、

$$\begin{align*}
\left.I\right|_{\omega=\omega_1,\omega_2}&=\left.\frac{E}{\sqrt{R^2+\left(\omega L-\displaystyle{\frac{1}{\omega C}}\right)^2}}\right|_{\omega=\omega_1,\omega_2}\\\\
&=\frac{E}{\sqrt{R^2+R^2}}\\\\
&=\frac{E}{\sqrt{2}R}
\end{align*}$$

 

すなわち、$\omega_1,\ \omega_2$は、電流の大きさが$(5)$式で表される最大値の$\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{2}}}$になるときの周波数であるといえる。

 

さらに、同様の条件における電流の位相角$\theta$は、$(3)$式より、

$$\begin{align*}
\left.\theta\right|_{\omega=\omega_1,\omega_2}&=\left.-\tan^{-1}\frac{\omega L-\displaystyle{\frac{1}{\omega C}}}{R}\right|_{\omega=\omega_1,\omega_2}\\\\
&=-\tan^{-1}\frac{\mp R}{R}\\\\
&=\pm\frac{\pi}{4}\mathrm{(複号同順)}
\end{align*}$$

 

以上より、図2の回路の共振曲線および電流の位相特性は、図4および図5のようになる。

 

図4 $RLC$直列共振回路の共振曲線

 

図5 $RLC$直列共振回路の位相特性

 

図4の共振曲線より、$\omega=\omega_0$の共振状態で電流は非常に大きな値をとる。

また、$(15)$式で表される$\mathrm{Q}$値は$\omega_1<\omega<\omega_2$の区間における尖鋭度を表す。

尖鋭度$Q$が大きいほど、短い区間で急激に値が上昇することになるため、図4の共振曲線の尖り方は鋭くなる。

 

さらに、図5より、電流$\dot{I}$の位相角$\theta$は低周波領域では$\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$進み(インピーダンスが誘導性)、$\omega=\omega_0$で同相となった後、高周波領域で$\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$遅れ(インピーダンスが容量性)となることがわかる。

なお、$\Delta f=\displaystyle{\frac{\Delta\omega}{2\pi}}=\displaystyle{\frac{\omega_2-\omega_1}{2\pi}}$を帯域幅という。

 

直列共振時のエネルギーとQ値の関係

最後に、図2の回路の直列共振時のエネルギーと、$\mathrm{Q}$値との関係を考える。

電流の最大値を$I_\mathrm{m}$とすると、実効値$I$との関係$I_\mathrm{m}=\sqrt{2}I$を考慮して、$(10)$式を変形すると、

$$\begin{align*}
Q&=\frac{\omega_0 L}{R}=\frac{\omega_0 L}{R}\cdot\frac{I^2}{I^2}\\\\
&=\frac{\omega_0 LI^2}{RI^2}\\\\
&=\frac{2\pi}{T_0}\cdot\frac{L\left(\displaystyle{\frac{I_\mathrm{m}}{\sqrt{2}}}\right)^2}{RI^2}\\\\
&=2\pi\frac{\displaystyle{\frac{1}{2}}LI^2_\mathrm{m}}{RI^2\times T_0} ・・・(16)
\end{align*}$$

 

$(16)$式の分子は共振時における回路の蓄積エネルギー、分母は共振時における1周期$T_0$中の消費エネルギーを表している。

 

すなわち、$\mathrm{Q}$値は次のように表すことができる。

$$Q=2\pi\frac{\mathrm{共振時における回路の蓄積エネルギー}}{\mathrm{共振時における1周期中の消費エネルギー}}$$

 

電流の瞬時値を$i=I_\mathrm{m}\sin\left(\omega_0 t+\phi\right)$とすると、図2の回路の共振時における蓄積エネルギーは、次のように計算できる。

$$\begin{align*}
\frac{1}{2}Li^2+\frac{1}{2}C\left(\frac{1}{C}\int i\mathrm{d}t\right)^2&=\frac{1}{2}LI^2_\mathrm{m}\sin^2\left(\omega_0 t+\phi\right)+\frac{1}{2C}\cdot\frac{I^2_\mathrm{m}}{\omega^2_0}\cos^2\left(\omega_0 t+\phi\right)\\\\
&=\frac{1}{2}LI^2_\mathrm{m}
\end{align*}$$

 

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