本記事では、キルヒホッフの電流則および電圧則について解説し、法則が成り立つ理由を電磁気的観点から考える。
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キルヒホッフの第一法則(電流則)
法則の概要
キルヒホッフの第一法則、または電流則(KCL;Kirchhoff’s Current Law)とは、
「電気回路の任意の節点に流れ込む電流の和は、その節点から流れ出る電流の和に等しい」
という法則である。
図1のように、回路上の任意の節点に流れ込む電流(赤色)を$I_1,\ I_2,\ $節点から流れ出る電流(青色)を$I_3,\ I_4$とすると、下記の関係が成り立つ。
$$I_1+I_2=I_3+I_4 ・・・(1)$$
図1 回路上の任意の節点を流れる電流
一般式で書くと、回路上の任意の節点において、
$$\sum_{i=1}^{n}I_i=0 ・・・(2)$$
$(2)$式では、節点に流れ込む電流の方向を正、流れ出す電流の方向を負としている。
KCLは「回路上の任意の節点において、分岐する各線に流れる電流の総和はゼロになる」と言い換えることもできる。
KCLの電磁気学的な解釈
KCLが成立する理由を電磁気的観点から考えてみる。
図2のように、回路の中の任意の閉曲面$S$を、電流密度$J$である電流が流れているとする。
図2 任意の閉曲面を流れる電流
このとき、閉曲面$S$内の電荷$Q$は時間変化しない、すなわち$\displaystyle{\frac{dQ}{dt}=0}$であるとすると、マクスウェル方程式における連続の式から、
$$\nabla\cdot\boldsymbol{J}=0 ・・・(3)$$
が成り立つ。
$(3)$式の両辺を体積積分し、ガウスの定理を用いて式変形すると、
$$\int_v{\nabla\cdot\boldsymbol{J}}dv=\int_S{\boldsymbol{J}}\cdot d\boldsymbol{S}=0 ・・・(4)$$
$(4)$式は、任意の閉曲面$S$内に流れ込む電流の総和がゼロであることを示しており、まさにKCLそのものである。
なお、$\displaystyle{\frac{dQ}{dt}≠0}$、すなわち電荷$Q$に時間変化がある場合(コンデンサを接続した場合など)は、KCLは適用できない。
キルヒホッフの第二法則(電圧則)
法則の概要
キルヒホッフの第二法則、または電圧則(KVL;Kirchhoff’s Voltage Law)とは、
「電気回路の任意の閉じた電路において、各回路素子に発生する電位差の和は 0 である」
という法則である。
図3のような電源$E$と抵抗$R_1,\ R_2,\ R_3$が接続された回路を考える。
図3 電源および抵抗で構成された回路
図3の回路において、電流の経路を形成する閉路を色分けしたものを図4に示す。
図4 図3の回路における電流の経路
図4に示す各閉路についてKVLを適用すると、下記の式が成り立つ。
$$\begin{cases}
E-R_1 I_1-R_2 I_2&=0 ・・・(5)\\\\
E-R_1 I_1-R_3 I_3&=0 ・・・(6)\\\\
R_2 I_2-R_3 I_3&=0 ・・・(7)
\end{cases}$$
$(5)$~$(7)$式はそれぞれ図4の赤・青・緑の閉路に対応した式である。
一般式で書くと、任意の閉路において、
$$\sum_{i=1}^{n}V_i=0 ・・・(8)$$
KVLの電磁気学的な解釈
KVLが成立する理由を電磁気的観点から考えてみる。
回路内の任意の閉路において、ファラデーの電磁誘導の法則より、
$$\nabla\times\boldsymbol{E}=-\frac{\partial\boldsymbol{B}}{\partial t} ・・・(9)$$
ここで、磁束密度$B$の時間変化がない、すなわち$\displaystyle{\frac{\partial\boldsymbol{B}}{\partial t}}=0$であるとすると、$(9)$式は、
$$\nabla\times\boldsymbol{E}=0 ・・・(10)$$
$(10)$式の両辺を面積分し、ストークスの定理を適用して書き換えると、
$$\int_S{(\nabla\times\boldsymbol{E})}\cdot d\boldsymbol{S}=\oint{\boldsymbol{E}}\cdot d\boldsymbol{s}=0 ・・・(11)$$
$(11)$式の線積分はまさに電位の定義である。
この閉路を適当な区間に分割し、各区間の電位を$V_1,\ V_2,\cdots,\ V_n$とすると、$(11)$式の線積分はこれらの和となり、$(8)$式の左辺と等しくなる。
すなわち、閉路中の電位の和はゼロとなることを示しており、まさにKVLそのものである。
なお、回路内で磁束密度$B$の時間変化がある場合でも、$(10)$式を、
$$\nabla\times\boldsymbol{E}+\frac{\partial\boldsymbol{B}}{\partial t}=0 ・・・(12)$$
と置き換えて計算する。
すなわち、磁束密度$B$の変化も込みで誘導起電力と考えることにより、同様の結果が得られる。
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参考文献
- 大久保ほか『電気磁気学』昭晃堂,1993
- 天野浩『平成22年度 電磁気学Ⅰ』名古屋大学講義資料
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