本記事では、電験一種の理論科目(旧制度)で出題された、四端子回路と無損失線路の融合問題を取り上げる。
近年ではこのような融合問題はあまり見られないが、前半は無損失線路(進行波)、後半は四端子定数の基礎問題であり、それぞれの知識を使って丁寧に追っていけば解くことはできる。
四端子回路と無損失線路:問題
出典:電験一種筆記試験 「理論」昭和55年度問1
図1のように、二つの無損失線路(サージインピーダンスはそれぞれ$\dot{Z_1}$および$\dot{Z_2}$とする)の接続点に四端子回路が挿入されている。
進行波が左方より接続点に入射してくるものとして、次の問に答えよ。
図1 無損失線路と四端子回路の接続
$(1)$
電圧反射係数$\dot{\it{\Gamma}_r}$および電圧透過係数$\dot{\it{\Gamma}_t}$を求めよ。ただし、四端子回路の四端子定数は$\dot{A},\ \dot{B},\ \dot{C},\ \dot{D}$とし、すべて定数とする。
$(2)$
四端子回路が図2のような T形の抵抗回路であるとき、$(1)$の結果を用いて、$\dot{\it{\Gamma}_r}$および$\dot{\it{\Gamma}_t}$を計算せよ。
図2 T形抵抗回路
$(3)$
$\dot{Z_1}=\dot{Z_2}=R_a=R_b=R_c$であるとき、$(2)$の結果を用いて、$\it{\Gamma}_r$および$\it{\Gamma}_t$を計算せよ。
各電圧・電流の関係式
$(1)$
四端子回路への入射波(添字$i$)、反射波(添字$r$)、透過波(添字$t$)の電圧・電流をそれぞれ図3のように与える。
図3 四端子回路の進行波による電圧・電流
このとき、各電圧と電流の関係は、各線路のサージインピーダンス$\dot{Z_1},\ \dot{Z_2}$を用いると、
\dot{V_i}&=\dot{Z_1}\dot{I_i} &・・・(1)\\
\dot{V_r}&=\dot{Z_1}\dot{I_r} &・・・(2)\\
\dot{V_t}&=\dot{Z_2}\dot{I_t} &・・・(3)
\end{cases}$$
次に、四端子回路への入力(添字$1$)および出力(添字$2$)の電圧・電流を図4のように与える。
図4 四端子回路の入出力電圧・電流
図3と図4の電圧・電流の関係を考えると、
\dot{V_1}&=\dot{V_i}+\dot{V_r} &・・・(4)\\
\dot{V_2}&=\dot{V_t} &・・・(5)\\
\dot{I_1}&=\dot{I_i}-\dot{I_r} &・・・(6)\\
\dot{I_2}&=\dot{I_t} &・・・(7)
\end{cases}$$
また、回路の四端子定数を用いて、入出力電圧・電流の関係を考えると、
\dot{V_1}&=\dot{A}\dot{V_2}+\dot{B}\dot{I_2} &・・・(8)\\
\dot{I_1}&=\dot{C}\dot{V_2}+\dot{D}\dot{I_2} &・・・(9)\\
\end{cases}$$
電圧反射・透過係数の算出
$(6),\ (7)$式に$(1)~(3)$式を代入して、
\dot{I_1}&=\frac{\dot{V_i}-\dot{V_r}}{\dot{Z_1}} &・・・(10)\\
\dot{I_2}&=\frac{\dot{V_t}}{\dot{Z_2}} &・・・(11)
\end{align*}$$
$(4),\ (5),\ (10),\ (11)$式を$(8),\ (9)$式に代入して$\dot{V_1},\ \dot{V_2},\ \dot{I_1},\ \dot{I_2}$を消去すると、
\dot{V_i}+\dot{V_r}&=\dot{A}\dot{V_t}+\frac{\dot{B}}{\dot{Z_2}}\dot{V_t} &・・・(12)\\\\
\frac{\dot{V_i}-\dot{V_r}}{\dot{Z_1}}&=\dot{C}\dot{V_t}+\frac{\dot{D}}{\dot{Z_2}}\dot{V_t}\\
\dot{V_i}-\dot{V_r}&=\dot{Z_1}\dot{C}\dot{V_t}+\frac{\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}}\dot{V_t} &・・・(13)
\end{align*}$$
$(12)+(13)$とすると、
2\dot{V_i}&=\left(\dot{A}+\frac{\dot{B}}{\dot{Z_2}}+\dot{Z_1}\dot{C}+\frac{\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}}\right)\dot{V_t}\\\\
\therefore \dot{\it{\Gamma}_t}&=\frac{\dot{V_t}}{\dot{V_i}}=\frac{2}{\dot{A}+\displaystyle{\frac{\dot{B}}{\dot{Z_2}}}+\dot{Z_1}\dot{C}+\displaystyle{\frac{\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}}}}\\\\
&=\frac{2\dot{Z_2}}{\dot{Z_2}\dot{A}+\dot{B}+\dot{Z_1}\dot{Z_2}\dot{C}+\dot{Z_1}\dot{D}} ・・・(14)
\end{align*}$$
次に、$(12)-(13)$とすると、
2\dot{V_r}&=\left(\dot{A}+\frac{\dot{B}}{\dot{Z_2}}-\dot{Z_1}\dot{C}-\frac{\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}}\right)\dot{V_t}\\\\
&=\left(\dot{A}+\frac{\dot{B}}{\dot{Z_2}}-\dot{Z_1}\dot{C}-\frac{\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}}\right)\times\frac{2}{\dot{A}+\displaystyle{\frac{\dot{B}}{\dot{Z_2}}}+\dot{Z_1}\dot{C}+\displaystyle{\frac{\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}}}}\dot{V_i}\\\\
\therefore \dot{\it{\Gamma}_r}=\frac{\dot{V_r}}{\dot{V_i}}&=\frac{\dot{A}+\displaystyle{\frac{\dot{B}}{\dot{Z_2}}}-\dot{Z_1}\dot{C}-\displaystyle{\frac{\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}}}}{\dot{A}+\displaystyle{\frac{\dot{B}}{\dot{Z_2}}}+\dot{Z_1}\dot{C}+\displaystyle{\frac{\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}}}}\\\\
&=\frac{\dot{Z_2}\dot{A}+\dot{B}-\dot{Z_1}\dot{Z_2}\dot{C}-\dot{Z_1}\dot{D}}{\dot{Z_2}\dot{A}+\dot{B}+\dot{Z_1}\dot{Z_2}\dot{C}+\dot{Z_1}\dot{D}} ・・・(15)
\end{align*}$$
T形抵抗回路
$(2)$
次に、図2のT形抵抗回路に図4の入出力電圧・電流を記したものを図5に示す。
図5 T形抵抗回路と入出力電圧・電流
図5における電圧・電流の関係式をたてると、
\dot{V_1}&=R_a\dot{I_1}+R_c\left(\dot{I_1}-\dot{I_2}\right) &・・・(16)\\\\
R_c\left(\dot{I_1}-\dot{I_2}\right)&=R_b\dot{I_2}+\dot{V_2} &・・・(17)
\end{align*}$$
$(17)$式を$\dot{I_1}$の式として変形すると、
R_c\dot{I_1}&=\left(R_b+R_c\right)\dot{I_2}+\dot{V_2}\\\\
\therefore \dot{I_1}&=\frac{1}{R_c}\dot{V_2}+\frac{R_b+R_c}{R_c}\dot{I_2} ・・・(18)
\end{align*}$$
$(18)$式を$(16)$式に代入すると、
\dot{V_1}&=\frac{R_a}{R_c}\dot{V_2}+\frac{R_aR_b+R_cR_a}{R_c}\dot{I_2}+\dot{V_2}+\left(R_b+R_c\right)\dot{I_2}-R_c\dot{I_2}\\\\
&=\frac{R_c+R_a}{R_c}\dot{V_2}+\frac{R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a}{R_c}\dot{I_2} ・・・(19)
\end{align*}$$
$(18),\ (19)$を行列表記にして、四端子定数を求めると、
\left(\begin{array}{c} \dot{V_1} \\ \dot{I_1} \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc} \displaystyle{\frac{R_c+R_a}{R_c}} & \displaystyle{\frac{R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a}{R_c}} \\ \displaystyle{\frac{1}{R_c}} & \displaystyle{\frac{R_b+R_c}{R_c}} \end{array}\right)\left(\begin{array}{c} \dot{V_2} \\ \dot{I_2} \end{array}\right)
\end{align*}$$
\dot{A}&=\displaystyle{\frac{R_c+R_a}{R_c}}\\\\
\dot{B}&=\displaystyle{\frac{R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a}{R_c}}\\\\
\dot{C}&=\displaystyle{\frac{1}{R_c}}\\\\
\dot{D}&=\displaystyle{\frac{R_b+R_c}{R_c}}
\end{cases} ・・・(20)$$
この四端子定数$\dot{A},\ \dot{B},\ \dot{C},\ \dot{D}$は、図2の回路をインピーダンス回路およびアドミタンス回路に分解して、それぞれの四端子定数を掛け合わせることで導く方法もある(下記、電気うさぎ氏のツイート参照)。
アップありがとうございます!
(2)は行列の演算を用いると計算が少し楽になります。 pic.twitter.com/syrkGcCduV— 電気うさぎ (@ElectricUsagi) May 21, 2019
本記事では、四端子定数の概要と、各頻出回路における四端子定数について導出する。四端子回路の概要図1のように、入力端子および出力端子を各2端子備えた回路網を四端子回路という。 本記事では、入力端子[…]
$(20)$式を$(14),\ (15)$式に代入すると、
\dot{\it{\Gamma}_r}&=\frac{\dot{Z_2}\displaystyle{\frac{R_c+R_a}{R_c}}+\displaystyle{\frac{R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a}{R_c}}-\displaystyle{\frac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{R_c}}-\dot{Z_1}\displaystyle{\frac{R_b+R_c}{R_c}}}{\dot{Z_2}\displaystyle{\frac{R_c+R_a}{R_c}}+\displaystyle{\frac{R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a}{R_c}}+\displaystyle{\frac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{R_c}}+\dot{Z_1}\displaystyle{\frac{R_b+R_c}{R_c}}}\\\\
&=\frac{\left(R_c+R_a\right)\dot{Z_2}+\left(R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a\right)-\dot{Z_1}\dot{Z_2}-\left(R_b+R_c\right)\dot{Z_1}}{\left(R_c+R_a\right)\dot{Z_2}+\left(R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a\right)+\dot{Z_1}\dot{Z_2}+\left(R_b+R_c\right)\dot{Z_1}} ・・・(21)\\\\
\dot{\it{\Gamma}_t}&=\frac{2\dot{Z_2}}{\dot{Z_2}\displaystyle{\frac{R_c+R_a}{R_c}}+\displaystyle{\frac{R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a}{R_c}}+\displaystyle{\frac{\dot{Z_1}\dot{Z_2}}{R_c}}+\dot{Z_1}\displaystyle{\frac{R_b+R_c}{R_c}}}\\\\
&=\frac{2R_c\dot{Z_2}}{\left(R_c+R_a\right)\dot{Z_2}+\left(R_aR_b+R_bR_c+R_cR_a\right)+\dot{Z_1}\dot{Z_2}+\left(R_b+R_c\right)\dot{Z_1}} ・・・(22)
\end{align*}$$
回路定数がすべて同じ値の場合
$(3)$
$\dot{Z_1}=\dot{Z_2}=R_a=R_b=R_c$を$(21),\ (22)$に代入すると、
\dot{\it{\Gamma}_r}&=\frac{2{R_a}^2+3{R_a}^2-{R_a}^2-2{R_a}^2}{2{R_a}^2+3{R_a}^2+{R_a}^2+2{R_a}^2}
\\\\&=\frac{2{R_a}^2}{8{R_a}^2}=\frac{1}{4}\\\\
\dot{\it{\Gamma}_t}&=\frac{2{R_a}^2}{2{R_a}^2+3{R_a}^2+{R_a}^2+2{R_a}^2}
\\\\&=\frac{2{R_a}^2}{8{R_a}^2}=\frac{1}{4}
\end{align*}$$
となり、全ての回路定数が同じ値の場合は$\dot{\it{\Gamma}_r}=\dot{\it{\Gamma}_t}$となる。
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