単相電圧形ハーフブリッジインバータ

本記事では、直流を交流に変換する回路の一種である単相電圧形ハーフブリッジインバータについて解説する。





単相電圧形ハーフブリッジインバータの回路構成

単相電圧形ハーフブリッジインバータの回路構成を図1に示す。

 

図1 単相電圧形ハーフブリッジインバータ

 

図1の回路は、スイッチ(図ではトランジスタ)$\mathrm{S}_1,\ \mathrm{S}_2$および逆並列ダイオード(還流ダイオード)$\mathrm{D}_1,\ \mathrm{D}_2$を組み合わせたアームを2セット用いて構成される。

また、電源側は電圧$\displaystyle{\frac{E}{2}}$の直流電源を2つ用いており、この電源の中性点$\mathrm{O}$と各アーム間の端子$\mathrm{A}$に負荷が接続されている。

 

今回は回路に誘導性負荷が接続されているものとし、抵抗成分およびインダクタンス成分の大きさをそれぞれ$R,\ L$とする。

また、端子$\mathrm{A}-\mathrm{O}$間に発生する出力電圧を$v_\mathrm{AO}$,出力電流を$i_\mathrm{a}$とし、それぞれ図1の方向を正とする。

 

単相電圧形ハーフブリッジインバータの動作と出力波形

回路の動作モード

単相電圧形ハーフブリッジインバータの動作モードを図2$(\mathrm{a})\sim(\mathrm{d})$に示す。

これらの動作モードは出力電流$i_\mathrm{a}$および電圧$v_\mathrm{AO}$の正負によって分類されている。

 

$(\mathrm{a})i_\mathrm{a}>0,\ v_\mathrm{AO}>0$($\mathrm{S_1}$オン・$\mathrm{S_2}$オフ)

 

$(\mathrm{b})i_\mathrm{a}>0,\ v_\mathrm{AO}<0$($\mathrm{S_1}$オフ・$\mathrm{S_2}$オン)

 

$(\mathrm{c})i_\mathrm{a}<0,\ v_\mathrm{AO}<0$($\mathrm{S_1}$オフ・$\mathrm{S_2}$オン)

 

$(\mathrm{d})i_\mathrm{a}<0,\ v_\mathrm{AO}>0$($\mathrm{S_1}$オン・$\mathrm{S_2}$オフ)

図2 単相電圧形ハーフブリッジインバータの動作モード

 

図2$(\mathrm{a})$および$(\mathrm{c})$では、オンになっているスイッチを通して電源から負荷に電流が流れている力行運転のモードとなる。

一方、同図$(\mathrm{b})$および$(\mathrm{d})$では、各ダイオードを通して負荷から電源に電力を返還する回生運転のモードとなる。

負荷が電動機の場合、回生運転時は発電機として動作することになり、ブレーキとして作用する(回生制動)。

 

回路の出力波形

図1の回路のスイッチ$\mathrm{S}_1,\ \mathrm{S}_2$を交互にオン・オフしたときの、各電圧および電流の波形を図3に示す。

なお、同図では各スイッチの通流率を等しく$\displaystyle{\frac{1}{2}}$であるとし、スイッチング周期を$T$とする。

また、同図の$(\mathrm{a})\sim(\mathrm{d})$は図2の記号に対応しており、各動作モードにおける挙動であることを示している。

 

図3 単相電圧形ハーフブリッジインバータの出力波形

 

図3では、各スイッチへのオン・オフ信号も示しており、波形が立ち上がった際にスイッチがオンになるとする。

そして、$t=0$の時点でスイッチ$\mathrm{S}_1$がオフ、かつ$\mathrm{S}_2$がオンの状態であったものとし、電流$i_\mathrm{a}$は定常電流$-I_\mathrm{a}$($\mathrm{O}\rightarrow\mathrm{A}$の向き)が流れていたものとする。

(図2の状態でいうと$(\mathrm{c})$の状態であったとする)

 

まず、$t=0$でスイッチ$\mathrm{S}_1$がオン、かつ$\mathrm{S}_2$がオフになっても、負荷のインダクタンス成分の影響により電流$i_\mathrm{a}$の向き($\mathrm{O}\rightarrow\mathrm{A}$の向き)はすぐには反転せず、還流ダイオード$\mathrm{D}_1$を流れることになる(図2$(\mathrm{d})$)。

そして、しばらく時間が経過すると電流$i_\mathrm{a}$の向きは反転($\mathrm{A}\rightarrow\mathrm{O}$の向き)し、スイッチ$\mathrm{S}_1$を流れるようになる(図2$(\mathrm{a})$)。

さらに時間が経過すると、電流$i_\mathrm{a}$は定常値$I_\mathrm{a}$に落ち着く。

 

次に、$t=\displaystyle{\frac{T}{2}}$でスイッチ$\mathrm{S}_1$がオフ、かつ$\mathrm{S}_2$がオンになっても、同様に負荷のインダクタンス成分の影響により電流$i_\mathrm{a}$の向き($\mathrm{A}\rightarrow\mathrm{O}$の向き)はすぐには反転せず、還流ダイオード$\mathrm{D}_2$を流れることになる(図2$(\mathrm{b})$)。

そして、しばらく時間が経過すると電流$i_\mathrm{a}$の向きは反転($\mathrm{O}\rightarrow\mathrm{A}$の向き)し、スイッチ$\mathrm{S}_2$を流れるようになる(図2$(\mathrm{c})$)。

さらに時間が経過すると、電流$i_\mathrm{a}$は定常値$-I_\mathrm{a}$に落ち着く。

 

以上の動作が周期$T$で繰り返されることにより、電流$i_\mathrm{a}$の波形は図3のようになる。

また、端子$\mathrm{A}-\mathrm{O}$間の電圧$v_\mathrm{AO}$は、2つの電源$\displaystyle{\frac{E}{2}}$が負荷に交互に接続される形になるため、$\mathrm{O}$点の電圧を基準とした場合は図3のように正負が反転する交流波形になる(電圧波形が直流→交流に変換されている)。

 

なお、スイッチ$\mathrm{S_1}$と$\mathrm{S_2}$のオン・オフのタイミングには図3の信号が入力されてから若干の遅延があるため、これらのスイッチが同時にオンになってしまう状態があり得る。この場合は電源との短絡回路が形成されてしまう(短絡によりスイッチが焼損するなどの恐れがある)。

実際には、スイッチ$\mathrm{S_1}$および$\mathrm{S_2}$のオン・オフのタイミングをずらし、片方のスイッチがオフになってからもう一方がオンになるまでに余裕時間(デッドタイム)が設けられる。

 

 

単相電圧形ハーフブリッジインバータの出力電流の式

ここで、図3の電流$i_\mathrm{a}$の式を導出する。

図1の誘導性負荷を接続している場合は、$RL$直列回路の過渡現象を考えることで導くことができる。

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ここでは$0\leq t\leq\displaystyle{\frac{T}{2}}$の場合の$i_\mathrm{a}$の式を求めることとして、上記「$RL$直列回路の過渡現象(直流回路)」$(6)$式より、電源電圧が$\displaystyle{\frac{E}{2}}$であることに注意して、

$$i_\mathrm{a}=Ae^{-\frac{R}{L}t}+\frac{E}{2R} ・・・(1)$$

ただし、$A$は定数とする。

 

次に図3より、$t=0$および$t=\displaystyle{\frac{T}{2}}$のときの$i_\mathrm{a}$の値はそれぞれ$-I_\mathrm{a},\ I_\mathrm{a}$であるから、$(1)$式より、

$$\begin{align*}
i_\mathrm{a}|_{t=0}&=A+\frac{E}{2R}=-I_\mathrm{a} ・・・(2)\\\\
i_\mathrm{a}|_{t=\frac{T}{2}}&=Ae^{-\frac{RT}{2L}}+\frac{E}{2R}=I_\mathrm{a} ・・・(3)
\end{align*}$$

 

$(2),\ (3)$式より、定数$A$を求めると、

$$\begin{align*}
Ae^{-\frac{RT}{2L}}+\frac{E}{2R}&=-\left(A+\frac{E}{2R}\right)\\\\
A\left(1+e^{-\frac{RT}{2L}}\right)&=-\frac{E}{R}\\\\
\therefore A&=-\frac{E}{R}\cdot\frac{1}{1+e^{-\frac{RT}{2L}}} ・・・(4)
\end{align*}$$

 

$(4)$式を$(1)$式に代入して、電流$i_\mathrm{a}$について求めると、

$$\begin{align*}
i_\mathrm{a}&=-\frac{E}{R}\cdot\frac{e^{-\frac{R}{L}t}}{1+e^{-\frac{RT}{2L}}}+\frac{E}{2R}\\\\
&=\frac{E}{2R}\left(1-\frac{2e^{-\frac{R}{L}t}}{1+e^{-\frac{RT}{2L}}}\right)\\\\
&=\frac{E}{2R}\left\{1-\frac{\left(1+e^{-\frac{RT}{2L}}\right)+\left(1-e^{-\frac{RT}{2L}}\right)}{1+e^{-\frac{RT}{2L}}}e^{-\frac{R}{L}t}\right\}\\\\
&=\frac{E}{2R}\left(1-e^{-\frac{R}{L}t}-\frac{1-e^{-\frac{RT}{2L}}}{1+e^{-\frac{RT}{2L}}}e^{-\frac{R}{L}t}\right) ・・・(5)
\end{align*}$$

 

$(5)$式が$0\leq t\leq\displaystyle{\frac{T}{2}}$における$i_\mathrm{a}$の式となる。

 

なお、定常値$I_\mathrm{a}$を$(2),\ (4)$式から求めると、

$$\begin{align*}
i_\mathrm{a}|_{t=0}&=\frac{E}{2R}\left(1-1-\frac{1-e^{-\frac{RT}{2L}}}{1+e^{-\frac{RT}{2L}}}\right)=-I_\mathrm{a}\\\\
\therefore I_\mathrm{a}&=\frac{E}{2R}\cdot\frac{1-e^{-\frac{RT}{2L}}}{1+e^{-\frac{RT}{2L}}}
\end{align*}$$

であることから、$(5)$式は、次のようにも書ける。

$$i_\mathrm{a}=\frac{E}{2R}\left(1-e^{-\frac{R}{L}t}\right)-I_\mathrm{a}e^{-\frac{R}{L}t} ・・・(5)’$$

 

ちなみに、$\displaystyle{\frac{T}{2}}\leq t\leq T$における$i_\mathrm{a}$の式は、$(5)’$式の符号を反転し、時間$t\rightarrow\displaystyle{t-\frac{T}{2}}$とスライドさせることで求めることができて、

$$\begin{align*}
i_\mathrm{a}=-\frac{E}{2R}\left\{1-e^{-\frac{R}{L}\left(t-\frac{T}{2}\right)}\right\}+I_\mathrm{a}e^{-\frac{R}{L}\left(t-\frac{T}{2}\right)}
\end{align*}$$

 

$t>T$以降も符号の反転と時間$t$のスライドに注意すれば、各$t$の範囲の$i_\mathrm{a}$の式を導出することができる。

 

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参考文献