系統の電圧・電力計算の例題 その2

送電線の送電能力を向上させる方策として、静止形無効電力補償装置(SVC)などの電圧維持装置を、送電線途中の開閉所などに設置することが考えられる。
今回はSVCのような調相設備の接続にからめた電圧・電力計算の例題を取り上げる。

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系統の電圧・電力計算:例題

出典:電験一種二次試験「電力・管理」H12問3
(問題文の一部を変更しています)

図1に示すような送電線があり、両端$S$および$R$の電圧の大きさは一定値$V$に維持されている。この送電線の左端$S$から全長の$\alpha[\%]$の地点$M$に静止形無効電力補償装置($\mathrm{SVC}$)を設置し、その設置地点の電圧の大きさを送電線両端の電圧と同じ値$V$に理想的に一定に維持した場合について、次の問に答えよ。

ただし.送電線の全長のリアクタンスを$X$とし、送電線には損失がなく、対地静電容量は無視するものとする。

図1 送電線

$(1)$
この送電線の$M$点において、$S$点から受電する有効電力$P_1$および$R$点へ送出する有効電力$P_2$を表す式を示せ。ただし、$\dot{V_s}\dot{V_m}$間の相差角を$\delta_1$、$\dot{V_m}\dot{V_r}$間の相差角を$\delta_2$とする。次に、この送電線の静的な最大送電電力(定態安定極限電力)$P_{\mathrm{max}}$を$\alpha$の関数として求め、それを図示せよ。

$(2)$
この送電線の$M$点において$S$点から受電する遅れ無効電力$Q_1$および$R$点へ送出する遅れ無効電力$Q_2$を表す式を示せ。
次に、$\mathrm{SVC}$から系統に供給される遅れ無効電力$Q_{\mathrm{SVC}}$を求めよ。

$(3)$
$\alpha$が$50\%$および$\displaystyle{\frac{100}{3}}\%$のときの$P_{\mathrm{max}}$及び$Q_{\mathrm{SVC}}$を求めよ。

有効電力の計算

$(1)$
図1の送電線に電圧・電流・電力の各諸量を追記したものを図2に示す。

図2 図1の送電線における各諸量

$S-M$間に流れる電流$\dot{I_1}$は、$M$点の電圧$\dot{V_M}=V\angle 0$を基準として、

$$\dot{I_1}=\frac{V\angle\delta_1-V\angle 0}{j\sqrt{3}\frac{\alpha}{100}X}$$

したがって、$S$点から受電する有効電力$P_1$は、

$$\begin{align*}
P_1=\mathrm{Re}\left(\sqrt{3}\dot{V_M}\overline{\dot{I_1}}\right)&=\mathrm{Re}\left\{\frac{V^2\left(\cos\delta_1-j\sin\delta_1-1\right)}{-j\frac{\alpha}{100}X}\right\}\\\\
&=\frac{100V^2}{\alpha X}\sin\delta_1 ・・・(1)
\end{align*}$$

同様に$M-R$間に流れる電流$\dot{I_2}$は、同じく$M$点の電圧$\dot{V_M}=V\angle 0$を基準として、

$$\dot{I_2}=\frac{V\angle 0-V\angle(-\delta_2)}{j\sqrt{3}\frac{100-\alpha}{100}X}$$

したがって、$R$点へ送電する有効電力は、

$$\begin{align*}
P_2=\mathrm{Re}\left(\sqrt{3}\dot{V_M}\overline{\dot{I_2}}\right)&=\mathrm{Re}\left\{\frac{V^2\left(1-\cos\delta_2-j\sin\delta_2\right)}{-j\frac{100-\alpha}{100}X}\right\}\\\\
&=\frac{100V^2}{\left(100-\alpha\right)X}\sin\delta_2 ・・・(2)
\end{align*}$$

最大送電電力の考え方

図3に各点の電圧およびリアクタンスによる電圧降下を表したベクトル図を図3に示す。

図3 送電線の各点の電圧
(左:$\alpha<50\%$の場合、右:$\alpha>50\%$の場合)

同左図は$\alpha<50\%$の場合であるが、$S-M$間のリアクタンスを$X_{SM}$, $M-R$間のリアクタンスを$X_{MR}$とすると、このとき$X_{SM}<X_{MR}$であるため、$M-R$間の電圧降下$jX_{MR}\dot{I_2}$の方が大きくなる。したがって、同図のベクトル図の大きさから相差角の関係は$\delta_1<\delta_2$となる。

題意より、線路損失を無視しているため、送電線内で最大送電電力は等しく、一意に決まる。よって、$\alpha<50\%$の場合、$\delta_2=\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$のとき送電電力は最大となり、その大きさは$(2)$式より、

$$P_{\mathrm{max}}=\frac{100V^2}{\left(100-\alpha\right)X}\sin\frac{\pi}{2}=\frac{100V^2}{\left(100-\alpha\right)X}$$

同様に、$\alpha>50\%$の場合は図3右図より、$X_{SM}>X_{MR}$であるため、$S-M$間の電圧降下$jX_{SM}\dot{I_1}$の方が大きくなる。相差角の関係は$\delta_1>\delta_2$となる。したがって、最大送電電力は$\delta_1=\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$のとき、$(1)$式より、

$$P_{\mathrm{max}}=\frac{100V^2}{\alpha X}\sin\frac{\pi}{2}=\frac{100V^2}{\alpha X}$$

$\alpha=50\%$のときは$X_{SM}=X_{MR}$となるため、$\delta_1=\delta_2=\frac{\pi}{2} $であり、上記で求めた$P_{\mathrm{max}}$は等しくなる。

図4に$\alpha$と$P_{\mathrm{max}}$の関係をグラフに表したものを示す。このグラフは、$\alpha$の範囲によって、$P_1$と$P_2$のうち相差角が先に$\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$となる方の値で頭打ちになるというイメージである。

図4 $P_{\mathrm{max}}$のグラフ

無効電力の計算

$(2)$
遅れ無効電力$Q_1,\ Q_2$は、

$$\begin{align*}
Q_1=\mathrm{Im}\left(\sqrt{3}\dot{V_M}\overline{\dot{I_1}}\right)&=\mathrm{Im}\left\{\frac{V^2\left(\cos\delta_1-j\sin\delta_1-1\right)}{-j\frac{\alpha}{100}X}\right\}\\\\
&=-\frac{100V^2\left(1-\cos\delta_1\right)}{\alpha X}\\\\
Q_2=\mathrm{Im}\left(\sqrt{3}\dot{V_M}\overline{\dot{I_2}}\right)&=\mathrm{Im}\left\{\frac{V^2\left(1-\cos\delta_2-j\sin\delta_2\right)}{-j\frac{100-\alpha}{100}X}\right\}\\\\
&=\frac{100V^2\left(1-\cos\delta_2\right)}{\left(100-\alpha\right)X}
\end{align*}$$

$Q_{\mathrm{SVC}}$は、図2の無効電力の流れから、

$$\begin{align*}
Q_{\mathrm{SVC}}=Q_2-Q_1&=\frac{100V^2\left(1-\cos\delta_2\right)}{\left(100-\alpha\right)X}+\frac{100V^2\left(1-\cos\delta_1\right)}{\alpha X}\\\\
&=\frac{100V^2}{X}\left(\frac{1-\cos\delta_1}{\alpha}+\frac{1-\cos\delta_2}{100-\alpha}\right)  ・・・(3)
\end{align*}$$

αの具体例における計算

$(3)$
$\alpha$が具体的な値をとる場合について、それぞれ計算する。

α=50%の場合

$\alpha=50\%$の場合、前々項より$\delta_1=\delta_2=\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$であり、$(2)$および$(3)$式より、

$$\begin{align*}
P_{\mathrm{max}}&=\frac{100V^2}{50X}=\frac{2V^2}{X}\\\\
Q_{\mathrm{SVC}}&=\frac{100V^2}{X}\left(\frac{1-\cos\frac{\pi}{2}}{50}+\frac{1-\cos\frac{\pi}{2}}{50}\right)=\frac{4V^2}{X}
\end{align*}$$

α=100/3%の場合

$\alpha=\displaystyle{\frac{100}{3}}\%$の場合、$\alpha<50\%$であるから$\delta_2=\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$であり、$P_{\mathrm{max}}$は$(2)$式より、

$$\begin{align*}
P_{\mathrm{max}}&=\frac{100V^2}{\left(100-\frac{100}{3}\right)X}\\\\
&=\frac{3V^2}{2X}
\end{align*}$$

題意より、線路損失を無視しているため、送電線内で最大送電電力は等しく、常に$P_1=P_2$であることから、$(2)$式より、

$$\begin{align*}
P_{\mathrm{max}}=\frac{100V^2}{\frac{100}{3} X}\sin\delta_1&=\frac{3V^2}{2X}\\\\
\therefore\sin\delta_1=\frac{1}{2}\rightarrow\delta_1&=\frac{\pi}{6}
\end{align*}$$

これを$(3)$式に代入して、

$$\begin{align*}
Q_{\mathrm{SVC}}&=\frac{100V^2}{X}\left(\frac{1-\cos\frac{\pi}{6}}{\frac{100}{3}}+\frac{1-\cos\frac{\pi}{2}}{100-\frac{100}{3}}\right)\\\\
&=\frac{3V^2}{2X}\left(3-\sqrt{3}\right)
\end{align*}$$

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