供給予備力および発電機出力の例題

発電機の運転に関して、事故が起きた場合に脱落することを考慮して、供給予備力を確保することが必要となる。

本記事ではその例題として、電験一種一次試験の法規科目で出題された問題を取り上げる。

供給予備力および発電機出力:例題

出典:電験一種一次試験「法規」H24問4
(問題の記述を一部変更しています)

ある電力系統には、表1に示す$G1$から$G6$の発電機がある。

 

各発電機は次のような特徴がある。

  • $G1$は最大容量の出力で定運転の制約がある。
  • $G2$は最低運転出力から最大容量までの任意の出力で一定運転の制約がある。
  • $G3$~$G6$は最低運転出力から最大容量までの範囲で調整運転が可能である。なお,$G3$を揚水動力として運転するときは、発電の最大容量と等しい負荷電力で運転するものとする。

 

表1 発電機の運転種別と出力(単位:[$\mathrm{MW}$])

 

この電力系統に並列する発電機は、不意にいずれか1機が脱落したときでも、残りの運転中の発電機で出力を上げて、脱落前と同じ発電電力を保つことが必要である。

したがって、運転中の発電機の総出力は、各発電機の最大容量の合計から調整マージン(上げ余力)を差し引いた出力しか出すことができない。

 

以上の条件で、次の負荷状況における発電機の運転出力および供給できる負荷電力について、次の問に答えよ。

 

$(1)$
負荷が最大のとき、全発電機を運転し、$G1$と$G2$を最大出力一定とする場合、調整運転する$G3$から$G6$の上げ余力を確保した合計最大出力$[\mathrm{MW}]$およびこの系統が供給できる最大出力$[\mathrm{MW}]$を求めよ。

 

$(2)$
負荷が減少するのに合わせて、$G3$を停止し、$G1$は最大出力一定、$G2$を最低出力とし、その他の発電機は上げ余力を確保しながら台数を調整して運転することとして、この系統が供給できる最大電力$[\mathrm{MW}]$および最小電力$[\mathrm{MW}]$を求めよ。

 

$(3)$
負荷が最小となるとき、$G3$を揚水運転して、$G1$は最大出力一定、$G2$を最低出力とし、その他の発電機は上げ余力を確保しながら最小限の台数で運転することとしたとき、この系統が供給できる最小電力$[\mathrm{MW}]$を求めよ。ただし,$G3$は発電に切り替えできないものとする。

 

「上げ余力」の考え方

本問の「上げ余力」とは、系統に並列接続されている発電機が不意にいずれか1機が脱落した場合、系統全体で脱落前と同じ発電出力を持つために、残りの発電機がそれをカバーするための余裕分である。

 

例えば、$G1$~$G6$がすべて運転する場合、$G1$~$G4$を最大出力、$G5,\ G6$を最小出力で運転するとする。この場合、「脱落する出力の最大値」は$G4$が停止した場合の$350\mathrm{MW}$となる。

 

この$350\mathrm{MW}$を$G5,\ G6$の出力を上げてカバーするわけだが、この場合の「上げ余力」は、

$$(250-25)+(150-15)=360\mathrm{MW}\geq350\mathrm{MW}$$

となり、$G4$脱落分をカバーできるため、系統全体の運転条件を満たしている。

 

なお、上記の場合でもし$G5$も最大運転しており、$G6$のみが最小出力で運転するとすれば、この場合の上げ余力は、

$$150-15=135\mathrm{MW}\leq350\mathrm{MW}$$

となり、条件を満たさない。

 

負荷最大時の供給最大出力

$(1)$
問題文の条件は、「負荷が最大で、全発電機を運転し、このうち$G1$と$G2$は最大一定出力とする」ことである。

 

まず、$G1$と$G2$の合計出力は、

$$300+200=500\mathrm{MW}$$

 

一方、$G1$~$G6$のうち最大出力が最も大きいのは$G4$の$350\mathrm{MW}$であり、$G4$を最大出力、かつ脱落した場合にカバーできるようその他の発電機であげ余力を確保しながら運転する、という状態のときが系統全体で最大出力となる。

 

具体的には、$G5$および$G6$の出力合計は$400\mathrm{MW}$であるから、このうち$350\mathrm{MW}$を上げ余力として残しながら運転する。

このときの2つの発電機出力の合計は、$400-350=50\mathrm{MW}$である。

 

したがって、 $G3$~$G6$の合計最大出力は、

$$100+350+50=\boldsymbol{\underline{500\mathrm{MW}}}$$

となり、$G1$~$G6$の合計最大出力は、

$$500+500=\boldsymbol{\underline{1000\mathrm{MW}}}$$

 

 

負荷減少時の供給最大・最小出力

$(2)$

「$G3$停止、$G1$最大出力一定、$G2$最低出力」のときの$G1$~$G3$の出力合計値は、

$$300+80+0=380\mathrm{MW}$$

 

ここで、残りの$G4$~$G6$の出力を調整するわけであるが、最大出力の考え方は$(1)$と同じで、$G4$は最大出力、かつ$G5$および$G6$の出力合計を$50\mathrm{MW}$としたときが、系統供給可能な最大出力である。

 

したがって、その出力は、

$$380+350+50=\boldsymbol{\underline{780\mathrm{MW}}}$$

 

次に、最小出力を考えるのだが、まず$G4$~$G6$をすべて最小出力としてみる。

これらのうち、最小出力が一番大きいのは$G4$の$35\mathrm{MW}$であり、この状態のときに$G4$が脱落した時が系統全体として最小出力になる。

 

したがって、その出力は、

$$380+25+15=\boldsymbol{\underline{420\mathrm{MW}}}$$

 

揚水発電がある場合

$(3)$

「$G3$揚水運転、$G1$最大出力一定、$G2$最低出力、その他上げ余力を確保しながら最小限の台数で運転する」ときの$G1$~$G3$の出力合計値は、

$$300+80-100=280\mathrm{MW}$$

 

ここで、残りの$G4$~$G6$の台数を調整しながら出力を最小に調整するわけであるが、この中のどれか1台だけ運転させることを考えてみる。

 

まず、最小出力が最も小さい$G6$のみ運転させる場合、上げ余力は$150-15=135\mathrm{MW}$である。

この場合、$G1$が脱落した場合、$G3$の揚水発電を停止した場合でも供給不足分は$300-100=200\mathrm{MW}$であり、$G6$1台ではカバー不可となるため、不適である。

 

次に、$G5$を1台のみ運転させる場合、上げ余力は$250-25=225\mathrm{MW}$である。このときは上記の「$G1$脱落、$G3$揚水発電停止」にも対応できる。

また、$G5$自体が脱落した場合にも、やはり$G3$の揚水発電を停止することにより、カバー可能である。

 

以上より、求める系統の最小出力は、

$$300+80-100+25=\boldsymbol{\underline{305\mathrm{MW}}}$$

 

関連記事

自分が電験一種を受験した際、一次試験で最も勉強したのが法規である(受験1年目でそれ以外の三科目を合格したというだけの理由であるが)。その際、平成7年〜28年度までの過去問を徹底調査し、オリジナルまとめノートを作り[…]

 

著書・製品のご紹介『書籍×動画』が織り成す、未だかつてない最高の学習体験があなたを待っている!
電験戦士教本

※本ページはプロモーションが含まれています。―『書籍×動画』が織り成す、未だかつてない最高の学習体験があなたを待っている― 当サイト「電気の神髄」をいつもご利用ありがとうございます。管理人の摺り足の加藤です。[…]

 この講座との出会いは、数学が苦手なあなたを救う!
一般社団法人 建設業教育協会

電験アカデミアにテキストを書き下ろしてもらい、電験どうでしょうの川尻将先生により動画解説を行ない、電験3種受験予定者が電…

 すべての電験二種受験生の方に向けて「最強の対策教材」作りました!
SAT二種講座

※本ページはプロモーションが含まれています。すべての電験二種受験生の方に向けて「最強の対策教材」作りました! 当サイト「電気の神髄」をいつもご愛読ありがとうございます。管理人の摺り足の加藤です。 […]

 初学者が躓きがちなギモンを、電験アカデミアがスッキリ解決します!
電験カフェ

※本ページはプロモーションが含まれています。 当サイト「電気の神髄」をいつもご利用ありがとうございます。管理人の摺り足の加藤です。 2022年5月18日、オーム社より「電験カフェへようこそ[…]