本記事では、直流電源が接続された$RC$並列回路における過渡現象について解説する。
回路方程式(スイッチ開→閉)
直流電源$E$,抵抗$R_0$および$R$,静電容量$C$が接続された$RC$並列回路にて、時間$t=0$でスイッチを閉じた状態のものを図1に示す。
(図1の回路では、$C$に過大な電流が流れるのを防ぐため抵抗$R_0$を挿入している)
図1 $RC$並列回路(スイッチ閉)
図1の回路では$t=0$でスイッチが閉じた後、電源から抵抗$R_0$を介した電流$i$が、抵抗$R$と静電容量$C$にそれぞれ$i_\mathrm{R}$および$i_\mathrm{C}$として分流している。
この電流$i$に関して、キルヒホッフの第一法則および第二法則を適用すると、回路方程式は、
$$\begin{cases}
i=i_\mathrm{R}+i_\mathrm{C} &・・・(1)\\\\
R_0i+Ri_\mathrm{R}=E &・・・(2)\\\\
Ri_\mathrm{R}=\displaystyle{\frac{1}{C}\int i_\mathrm{C}}\ \mathrm{d}t &・・・(3)
\end{cases}$$
$(2)$式の$i$に$(1)$式を代入すると、
$$\begin{align*}
R_0\left(i_\mathrm{R}+i_\mathrm{C}\right)+Ri_\mathrm{R}&=E\\\\
\therefore\left(R_0+R\right)i_\mathrm{R}+R_0i_\mathrm{C}&=E ・・・(4)
\end{align*}$$
$(3)$および$(4)$式より、$i_\mathrm{R}$を消去すると、
$$\frac{R_0+R}{RC}\int i_\mathrm{C}\ \mathrm{d}t+R_0i_\mathrm{C}=E ・・・(5)$$
ここで、$C$に蓄えられる電荷を$q$とすると、電流$i_\mathrm{C}$と$\displaystyle{i_\mathrm{C}=\frac{\mathrm{d}q}{\mathrm{d}t}}$の関係があることを利用して、$(5)$式を$q$の式に書き換えれば、
$$\frac{R_0+R}{RC}q+R_0\frac{\mathrm{d}q}{\mathrm{d}t}=E ・・・(6)$$
回路方程式(スイッチ開→閉)の解法
過渡解と定常解
$(6)$式を電荷$q$について解く場合、過渡解を$q_\mathrm{t}$,定常解を$q_\mathrm{s}$とすると、$(6)$式の解は、
$$q=q_\mathrm{t}+q_\mathrm{s} ・・・(7)$$
と表すことができる。
$(7)$式を$(6)$式に代入すると、
$$\begin{align*}
\frac{R_0+R}{RC}\left(q_\mathrm{t}+q_\mathrm{s}\right)+R_0\left(\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{t}}{\mathrm{d}t}+\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{s}}{\mathrm{d}t}\right)&=E\\\\
\therefore\left(\frac{R_0+R}{RC}q_\mathrm{t}+R_0\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{t}}{\mathrm{d}t}\right)+\left(\frac{R_0+R}{RC}q_\mathrm{s}+R_0\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{s}}{\mathrm{d}t}\right)&=E ・・・(8)
\end{align*}$$
$(8)$式をそれぞれ$q_\mathrm{t}$と$q_\mathrm{s}$についての2つの式に分離すると、
$$\begin{cases}
\displaystyle{\frac{R_0+R}{RC}}q_\mathrm{t}+R_0\displaystyle{\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{t}}{\mathrm{d}t}}=0 &・・・(8.1)\\\\
\displaystyle{\frac{R_0+R}{RC}}q_\mathrm{s}+R_0\displaystyle{\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{s}}{\mathrm{d}t}}=E &・・・(8.2)
\end{cases}$$
$(8.1)$式は過渡状態においてのみ考慮すべき式であり、$t\rightarrow\infty$で両辺は$0$に収束する。
同式は右辺が$0$であり、数学的には斉次方程式である。
一方、$(8.2)$式は定常状態において成立する式であり、右辺が$0$でない非斉次方程式である。
過渡解の導出
$(6)$式を解くために、まず
$$\frac{R_0+R}{RC}q_\mathrm{t}+R_0\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{t}}{\mathrm{d}t}=0 ・・・(8.1)$$
を解き、過渡解$q_\mathrm{t}$を求める。
$(8.1)$式を変形すると、
$$\begin{align*}
R_0\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{t}}{\mathrm{d}t}&=-\frac{R_0+R}{RC}q_\mathrm{t}\\\\
\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{t}}{q_\mathrm{t}}&=-\frac{R_0+R}{R_0RC}\mathrm{d}t\\\\
\int{\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{t}}{q_\mathrm{t}}}&=-\frac{R_0+R}{R_0RC}\int{\mathrm{d}t}\\\\
\ln{\left|q_\mathrm{t}\right|}&=-\frac{R_0+R}{R_0RC}t+D\\\\
\therefore q_\mathrm{t}&=Ae^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t} \left(A=\pm e^D\right) ・・・(9)
\end{align*}$$
上記の導出において、$D,\ A$は積分定数である。
$(9)$式が$(8)$式における過渡解となる。
定常解の導出
次に、
$$\frac{R_0+R}{RC}q_\mathrm{s}+R_0\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{s}}{\mathrm{d}t}=E ・・・(8.2)$$
を解き、$(6)$式の定常解を求める。
$(8.2)$式は定常状態、すなわち$t\rightarrow\infty$としたときにも成り立つ式である。
この場合、過渡的な電流値の遷移がない状態であるから、
$$\frac{\mathrm{d}q_\mathrm{s}}{\mathrm{d}t}=0$$
したがって、$(8.2)$式から、
$$q_\mathrm{s}=\frac{RC}{R_0+R}E ・・・(10)$$
$(10)$式が$(6)$式における定常解となる。
電流・電圧の式
$(9),\ (10)$式を$(7)$式に代入すると、$(6)$式の一般解を求めることができて、
$$q=Ae^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}+\frac{RC}{R_0+R}E ・・・(11)$$
ここで、初期状態$t=0$において、静電容量$C$に蓄えられている電荷は$0$であるとすると、
$$\begin{align*}
q|_{t=0}=A+\frac{RC}{R_0+R}E=0\\\\
\therefore A=-\frac{RC}{R_0+R}E
\end{align*}$$
したがって、$(11)$式は、
$$q=\frac{RC}{R_0+R}E\left(1-e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right) ・・・(12)$$
$(12)$式が$(6)$式における特殊解となる。
また、静電容量$C$に流れる電流$i_\mathrm{C}$は、$(12)$式の両辺を$t$で微分して、
$$\begin{align*}
i_\mathrm{C}&=\frac{\mathrm{d}q}{\mathrm{d}t}\\\\
&=-\frac{RC}{R_0+R}E\cdot\left(-\frac{R_0+R}{R_0RC}\right)e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\\\\
&=\frac{E}{R_0}e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t} ・・・(13)
\end{align*}$$
さらに、抵抗$R$に流れる電流$i_\mathrm{R}$は、$(13)$式を$(4)$式の左辺に代入して、
$$\begin{align*}
\left(R_0+R\right)i_\mathrm{R}+R_0\cdot\frac{E}{R_0}e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}&=E\\\\
\left(R_0+R\right)i_\mathrm{R}&=E\left(1-e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right)\\\\
\therefore i_\mathrm{R}&=\frac{E}{R_0+R}\left(1-e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right) ・・・(14)
\end{align*}$$
以上より、回路に流れる電流$i$は、$(1),\ (13),\ (14)$式より、
$$\begin{align*}
i&=i_\mathrm{R}+i_\mathrm{C}\\\\
&=\frac{E}{R_0+R}\left(1-e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right)+\frac{E}{R_0}e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\\\\
&=\frac{E}{R_0\left(R_0+R\right)}\left\{R_0\left(1-e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right)+\left(R_0+R\right)e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right\}\\\\
&=\frac{E}{R_0\left(R_0+R\right)}\left(R_0+Re^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right) ・・・(15)
\end{align*}$$
なお、抵抗$R$および静電容量$C$の並列回路に発生する電圧を$v$とすると、$(14)$式を用いて、
$$v=Ri_\mathrm{R}=\frac{RE}{R_0+R}\left(1-e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right) ・・・(16)$$
で表される。
ラプラス変換による解法
ラプラス変換を用いると、$(6)$式から直接$(12)$式を導出できる。
$(6)$式の両辺をラプラス変換すると、$Q(s)=\mathcal{L}\left\{q\right\}$として、
$$\begin{align*}
\frac{R_0+R}{RC}Q(s)&+R_0sQ(s)-R_0q|_{t=0}=\frac{E}{s}\\\\
Q(s)&=\frac{E}{s\left(R_0s+\displaystyle{\frac{R_0+R}{RC}}\right)} \left(\because q|_{t=0}=0\right)\\\\
&=\frac{E}{R_0}\cdot\frac{1}{s\left(s+\displaystyle{\frac{R_0+R}{R_0RC}}\right)}\\\\
&=\frac{E}{R_0}\cdot\frac{R_0RC}{R_0+R}\left(\frac{1}{s}-\frac{1}{s+\displaystyle{\frac{R_0+R}{R_0RC}}}\right)\\\\
&=\frac{RCE}{R_0+R}\left(\frac{1}{s}-\frac{1}{s+\displaystyle{\frac{R_0+R}{R_0RC}}}\right)\\\\
\therefore q&=\mathcal{L}^{-1}\left\{Q(s)\right\}=\frac{RC}{R_0+R}E\left(1-e^{-\frac{R_0+R}{R_0RC}t}\right)
\end{align*}$$
となり、$(12)$式と同じ結果が得られる。
回路方程式(スイッチ閉→開)
図1の$RC$並列回路にて、スイッチを閉じてから十分に経過した時間$t=T$にてスイッチを開けた状態を図2に示す。
図2 $RC$並列回路(スイッチ開)
スイッチを開くことで、電源と抵抗$R$および静電容量$C$の回路は切り離され、図2のように閉回路を形成し、電流$i$が還流する。
図2の$i$の向きを正として、$t=T$以降でスイッチを開いた状態における回路方程式は、キルヒホッフの第二法則より、
$$\frac{1}{C}\int i\ \mathrm{d}t+Ri=0 ・・・(17)$$
回路方程式(スイッチ閉→開)の解法
$(17)$式は「RC直列回路の過渡現象(直列回路)」の$(3.1)$式と同じ形であり、その解は定数$A$を用いて($t=T$が時間$t$の基準値であることに注意すると)、
$$i=Ae^{-\frac{t-T}{CR}} ・・・(18)$$
本記事では、直流電源が接続された$RC$直列回路における過渡現象について解説する。回路方程式図1に直流電源$E$,抵抗$R$,静電容量$C$が接続された$RC$直列回路を示す。このとき、スイッチが入る前には$C$は充[…]
次に、$t=T$でスイッチを開く直前に流れていた電流$i$は、$(15)$式で十分に時間が経った場合($t\rightarrow\infty$)の値と等しくなり、その向きに注意して、
$$i|_{t=T}=-\frac{E}{R_0+R} ・・・(19)$$
したがって、$(18),\ (19)$式より、定数$A$は、
$$\begin{align*}
i|_{t=T}=A=-\frac{E}{R_0+R}
\end{align*}$$
以上より、$(17)$式の特殊解は、
$$i=-\frac{E}{R_0+R}e^{-\frac{t-T}{CR}} ・・・(20)$$
なお、静電容量$C$に発生する電圧$v$は、$(20)$式を用いて、
$$\begin{align*}
v&=\frac{1}{C}\int i\ \mathrm{d}t\\\\
&=-\frac{1}{C}\cdot\frac{E}{R_0+R}\cdot\left(-CR\right)e^{-\frac{t-T}{CR}}+F\\\\
&=\frac{RE}{R_0+R}e^{-\frac{t-T}{CR}}+F ・・・(21)
\end{align*}$$
ただし、$F$は積分定数である。
ここで、$T$は十分大きい値であるとして、$(16)$および$(21)$式で$t=T$のときの電圧$v$を求めると、
$$\begin{align*}
v|_{t=T}=\frac{RE}{R_0+R}&=\frac{RE}{R_0+R}+F\\\\
\therefore F&=0
\end{align*}$$
以上より、電圧$v$は、
$$v=\frac{RE}{R_0+R}e^{-\frac{t-T}{CR}} ・・・(22)$$
電流・電圧のグラフ
$(13)\sim(15)$式および$(20)$式に基づいた電流$i,\ i_\mathrm{R},\ i_\mathrm{C}$のグラフを図3に示す。
図3 $RC$並列回路の電流
また、$(16)$および$(22)$式に基づいた、静電容量$C$の両端の電圧$v$のグラフを図4に示す。
図4 $RC$並列回路における静電容量$C$の両端の電圧
図3より、スイッチを閉じた$t=0$の直後は静電容量$C$に電流$i_\mathrm{C}$が流れ込むが、時間が経過にするにつれ充電されていくため、抵抗$R$に分流する$i_\mathrm{R}$の比重が大きくなる。
そして、十分に時間が経過すると回路の電流はすべて$R$に流れ込むことになる。
このとき、静電容量$C$には、電源から供給されるエネルギーが静電エネルギーとして充電される。
電圧$v$に関しても、抵抗$R$に流れ込む電流$i_\mathrm{R}$の割合が増加するに伴い、抵抗$R_0$および$R$の直列回路において、電源電圧$E$が$R$に分圧される分の値$\displaystyle{\frac{RE}{R_0+R}}$に近づいていく。
次に、$t=T$でスイッチを開くと、静電容量$C$に充電されたエネルギーが抵抗$R$へ流れ込む。
このとき、電流$i$はスイッチを開く前とは逆($C$から流れ出す)向きになり、抵抗$R$ではそのエネルギーが消費され、それに伴い電流$i$は減少していく。
電圧$v$に関しては、静電容量$C$から抵抗$R$へのエネルギー流出に伴って減少していく。
ここで、$t=T$以降で抵抗$R$で消費される電力$P$は、$(20)$式より、
$$\begin{align*}
P&=Ri^2\\\\
&=R\left(-\frac{E}{R_0+R}e^{-\frac{t-T}{CR}}\right)^2\\\\
&=\frac{RE^2}{\left(R_0+R\right)^2}e^{-\frac{2\left(t-T\right)}{CR}}
\end{align*}$$
$t=T$でスイッチを開いてから十分に時間が経過する($t\rightarrow\infty$)までの抵抗$R$の全消費電力$W$は、
$$\begin{align*}
W&=\int^{\infty}_{T}P\ \mathrm{d}t\\\\
&=\frac{RE^2}{\left(R_0+R\right)^2}\int^{\infty}_{T}e^{-\frac{2\left(t-T\right)}{CR}}\mathrm{d}t\\\\
&=\frac{RE^2}{\left(R_0+R\right)^2}\left[-\frac{CR}{2}e^{-\frac{2\left(t-T\right)}{CR}}\right]^{\infty}_{T}\\\\
&=\frac{RE^2}{\left(R_0+R\right)^2}\cdot\frac{CR}{2}\\\\
&=\frac{1}{2}C\left(\frac{RE}{R_0+R}\right)^2\\\\
&=\frac{1}{2}C\left\{v|_{t=T}\right\}^2
\end{align*}$$
となり、スイッチを開く直前まで静電容量$C$に充電されていた静電エネルギーが、スイッチを開いた後に流れだし、抵抗$R$で消費されることを示している。
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- 大下眞二郎『詳解電気回路演習(下)』共立出版,1980
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