本記事では、抵抗測定に用いられるブリッジ回路について解説する。
ホイートストンブリッジ回路
ホイートストンブリッジ回路(Wheatstone bridge circuit)は、図1のように既知の抵抗$R_1,\ R_2$および可変抵抗$R_\mathrm{s}$を用いて、未知の抵抗$R_x$を測定する回路である。
図1 ホイートストンブリッジ回路
未知の抵抗$R_x$の値を測定するため、図1の可変抵抗$R_\mathrm{s}$の値を調整して、検流計に電流が流れない平衡状態をつくる。
このとき、ブリッジの平衡条件の式から、未知の抵抗$R_x$を求めると、
$$\begin{align*}
R_1\cdot R_x&=R_2\cdot R_\mathrm{s}\\\\
\therefore R_x&=\frac{R_2}{R_1}R_\mathrm{s}
\end{align*}$$
なお、回路の測定可能な抵抗の範囲は$0.1\Omega~1000\mathrm{M}\Omega$で、幅広い範囲の抵抗を測定することができる。
コールラウシュブリッジ回路
コールラウシュブリッジ回路(Kohlrausch bridge circuit)は、ホイートストンブリッジ回路を応用したもので、図2のように直流電源ではなく交流電源を用いるのが特徴である。
図2 コールラウシュブリッジ回路
図2の回路の未知の抵抗$R_x$は電解液や大地に埋められた電極の接地抵抗などが想定されている。
このとき、直流電源を用いてしまうと測定物の電気分解反応が進んでしまい、組成が変化してしまって上手く測定できない場合にこの回路が使用される。
未知の抵抗$R_x$の値を測定するため、図2のすべり抵抗が接点$\mathrm{C}$において平衡状態となったとして、接点間の抵抗を$R_\mathrm{AC},\ R_\mathrm{CB}$とする。
このとき、ブリッジの平衡条件の式から、未知の抵抗$R_x$を求めると、
$$\begin{align*}
R_x\cdot R_\mathrm{CB}&=R\cdot R_\mathrm{AC}\\\\
\therefore R_x&=\frac{R_\mathrm{AC}}{R_\mathrm{CB}}R
\end{align*}$$
なお、図2の検出器$\mathrm{D}$にはイヤホンや受話器といった受信機や、電圧計が接続される。
ケルビンダブルブリッジ回路
ケルビンダブルブリッジ回路(Kelvin double bridge circuit)は、図3のようにホイートストンブリッジを2つ重ねたような形状の回路である。
主にホイートストンブリッジの測定範囲外となる数$\mathrm{m\Omega}$以下の低抵抗を測定するために使用される。
図3 ケルビンダブルブリッジ回路
図3のうち、$R_1,\ R_2,\ R_3,\ R_4,\ R_5,\ R_6$は既知の抵抗、$R_\mathrm{s}$は可変抵抗、$R_x$は未知の抵抗である。
このうち、$R_5$や$R_6$はリード線などの抵抗を想定しており、未知の抵抗$R_x$を測定するのにこれらの影響をなくすことを考える。
ここで、図3の$R_5$に接点$\mathrm{B’}$を、接点$\mathrm{B}$と$\mathrm{B’}$が同電位となる(=内側のブリッジ回路が平衡状態になる)ように設ける。
接点左右の抵抗については、$R_\mathrm{CB’}+R_\mathrm{B’D}=R_5$の関係がある。
このとき、図3の内側の$R_3,\ R_4,\ R_\mathrm{CB’},\ R_\mathrm{B’D}$で形成されるブリッジ回路において、平衡条件の式は、
$$\begin{align*}
R_3\cdot R_\mathrm{B’D}&=R_4\cdot R_\mathrm{CB’}\\\\
\therefore \frac{R_3}{R_\mathrm{CB’}}&=\frac{R_4}{R_\mathrm{B’D}} ・・・(1)
\end{align*}$$
また、接点$\mathrm{B-B’}$間を導線で接続したときの並列合成抵抗を$R_\mathrm{M},\ R_\mathrm{N}$とすると、
$$\begin{cases}
R_\mathrm{M}&=\displaystyle{\frac{R_3R_\mathrm{CB’}}{R_3+R_\mathrm{CB’}}}\\\\
R_\mathrm{N}&=\displaystyle{\frac{R_4R_\mathrm{B’D}}{R_4+R_\mathrm{B’D}}}
\end{cases} ・・・(2)$$
$(2)$の$R_\mathrm{M},\ R_\mathrm{N}$を用いると、図3の等価回路は図4のようになる。
図4 ケルビンダブルブリッジ回路の等価回路
図4で可変抵抗$R_\mathrm{s}$の値を調整して、検流計に電流が流れない平衡状態をつくる。
このとき、ブリッジの平衡条件の式は、
$$\begin{align*}
R_1\cdot\left(R_x+R_\mathrm{N}\right)&=R_2\cdot\left(R_\mathrm{s}+R_\mathrm{M}\right)\\\\
\therefore R_x&=\frac{R_2}{R_1}\left(R_\mathrm{s}+R_\mathrm{M}\right)-R_\mathrm{N} ・・・(3)
\end{align*}$$
さらに、図3の回路の既知の抵抗$R_1,\ R_2,\ R_3,\ R_4$について、あらかじめ
$$\frac{R_2}{R_1}=\frac{R_4}{R_3} ・・・(4)$$
と設定しておけば、未知の抵抗$R_x$は、$(1)\sim(4)$式より、
$$\begin{align*}
R_x&=\frac{R_2}{R_1}\left(R_\mathrm{s}+R_\mathrm{M}\right)-R_\mathrm{N}\\\\
&=\frac{R_2}{R_1}\left(R_\mathrm{s}+\frac{R_3R_\mathrm{CB’}}{R_3+R_\mathrm{CB’}}\right)-\frac{R_4R_\mathrm{B’D}}{R_4+R_\mathrm{B’D}}\\\\
&=\frac{R_2}{R_1}R_\mathrm{s}+\frac{R_2}{R_1}\cdot\frac{R_3R_\mathrm{CB’}}{R_3+R_\mathrm{CB’}}-\frac{R_4R_\mathrm{B’D}}{R_4+R_\mathrm{B’D}}\\\\
&=\frac{R_2}{R_1}R_\mathrm{s}+\frac{R_4R_\mathrm{CB’}}{R_3+R_\mathrm{CB’}}-\frac{R_4R_\mathrm{B’D}}{R_4+R_\mathrm{B’D}}\\\\
&=\frac{R_2}{R_1}R_\mathrm{s}+R_4\left(\frac{1}{\displaystyle{\frac{R_3}{R_\mathrm{CB’}}}+1}-\frac{1}{\displaystyle{\frac{R_4}{R_\mathrm{B’D}}}+1}\right)\\\\
&=\frac{R_2}{R_1}R_\mathrm{s} ・・・(5)
\end{align*}$$
以上より、周りのリード線の抵抗$R_5,\ R_6$を含まない$(5)$式により、未知の抵抗$R_x$の値を求めることができる。
なお、回路の測定可能な抵抗の範囲は$0.1\mathrm{m\Omega}~100\Omega$程度となる。
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参考文献
- 電気学会『電気工学ハンドブック 第7版』オーム社,2013
- 大下眞二郎『詳解電気回路演習(上)』共立出版,1979
- Friedrich Kohlrausch: “An Introduction to Physical Measurements, With Appendices on Absolute Electrical Measurements, Etc.”, D. Appleton(1891)
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