本記事では、静電容量測定に用いられるブリッジ回路について解説する。
キャパシタンスブリッジ(デソーティブリッジ)回路
キャパシタンスブリッジ回路(Capacitance bridge circuit)は、図1のように既知の抵抗$R_1,\ R_2$および可変容量$C_\mathrm{s}$を用いて、未知の静電容量$C_x$を測定する回路である。
デソーティブリッジ回路(De Sauty’s bridge circuit)ともいう。
図1 キャパシタンスブリッジ(デソーティブリッジ)回路
未知の静電容量$C_x$の値を測定するため、図1の可変容量$C_\mathrm{s}$の値を調整して、ブリッジ回路の平衡状態をつくる。
このとき、ブリッジの平衡条件の式から$C_x$を求めると、
$$\begin{align*}
\frac{1}{j\omega C_x}\cdot R_1&=\frac{1}{j\omega C_\mathrm{s}}\cdot R_2\\\\
\therefore C_x&=\frac{R_1}{R_2}C_\mathrm{s}
\end{align*}$$
直列キャパシタンスブリッジ回路
直列キャパシタンスブリッジ回路(Series resistance-capacitance bridge circuit)は、図1のキャパシタンスブリッジ回路の応用で、図2のように容量成分を含んだ未知のインピーダンス(抵抗成分$R_x$および容量成分$C_x$)を測定する回路である。
図2 直列キャパシタンスブリッジ回路
未知のインピーダンスの抵抗成分$R_x$および容量成分$C_x$の値を測定するため、図2の可変抵抗$R_\mathrm{s1}$および$R_\mathrm{s2}$の値を調整して、ブリッジ回路の平衡状態をつくる。
このとき、ブリッジの平衡条件の式から、$C_x$を求めると、
$$\begin{align*}
\left(R_x+\frac{1}{j\omega C_x}\right)\cdot R_\mathrm{s2}&=\left(R_\mathrm{s1}+\frac{1}{j\omega C_1}\right)\cdot R_1\\\\
\therefore R_xR_\mathrm{s2}-j\frac{R_\mathrm{s2}}{\omega C_x}&=R_\mathrm{s1}R_1-j\frac{R_1}{\omega C_1}
\end{align*}$$
上式で両辺の実部と虚部同士を比較すると、$R_x$および$C_x$を求めることができて、
$$\begin{align*}
R_xR_\mathrm{s2}&=R_\mathrm{s1}R_1\\\\
\therefore R_x&=\frac{R_\mathrm{s1}}{R_\mathrm{s2}}R_1\\\\\\\\
-\frac{R_\mathrm{s2}}{\omega C_x}&=-\frac{R_1}{\omega C_1}\\\\
\therefore C_x&=\frac{R_\mathrm{s2}}{R_1}C_1
\end{align*}$$
ウィーンブリッジ回路
ウィーンブリッジ回路(Wine bridge circuit)は、図3に示すような抵抗と静電容量の直列回路と並列回路が各種1つずつ(かつそれらの回路が対向していない)、および2つの純抵抗で構成されるブリッジ回路である。
静電容量の測定のほか、数$\mathrm{Hz}$~数$\mathrm{kHz}$の比較的低い周波数の測定に用いられる。
また、発振回路にも用いられる。
図3 ウィーンブリッジ回路
図3において、$R_2$と$C_2$で構成される並列回路部の合成インピーダンスは、
$$\frac{\displaystyle{\frac{R_2}{j\omega C_2}}}{R_2+\displaystyle{\frac{1}{j\omega C_2}}}=\frac{R_2}{1+j\omega C_2R_2}$$
したがって、ブリッジ回路の平衡条件は、
$$\begin{align*}
\left(R_1+\frac{1}{j\omega C_1}\right)\cdot R_4&=\frac{R_2}{1+j\omega C_2R_2}\cdot R_3\\\\
\left(1+j\omega C_1R_1\right)\left(1+j\omega C_2R_2\right)R_4&=j\omega C_1R_2R_3\\\\
\therefore R_4-\omega^2C_1C_2R_1R_2R_4+j\omega\left(C_1R_1+C_2R_2\right)R_4&=j\omega C_1R_2R_3 ・・・(1)
\end{align*}$$
例えば、$C_2$が未知の静電容量であるとすると、これを求める式は、$(1)$式において両辺の虚部同士を比較して、
$$\begin{align*}
\omega\left(C_1R_1+C_2R_2\right)R_4&=\omega C_1R_2R_3\\\\
C_1R_1R_4-C_1R_2R_3&=-C_2R_2R_4\\\\
\therefore C_2&=\frac{R_2R_3-R_1R_4}{R_2R_4}C_1
\end{align*}$$
一方、回路定数はすべて既知の値であるとして、電源周波数$f$を求める式は、$(1)$式において実部同士を比較することと、$\omega=2\pi f$の関係式を用いて、
$$\begin{align*}
R_4-\omega^2C_1C_2R_1R_2R_4&=0\\\\
\omega&=\frac{1}{\sqrt{C_1C_2R_1R_2}}\\\\
\therefore f&=\frac{1}{2\pi\sqrt{C_1C_2R_1R_2}}
\end{align*}$$
特に、$C_1=C_2,\ R_1=R_2$であるとすれば、周波数$f$は、
$$f=\frac{1}{2\pi C_1R_1}$$
シェーリングブリッジ回路
シェーリングブリッジ回路(Schering bridge circuit)は、図4に示すような抵抗と静電容量の直列回路と並列回路が各種1つずつ(かつそれらの回路が対向している)と、純抵抗および純静電容量が1つずつで構成されるブリッジ回路である。
主にコンデンサの静電容量および誘電正接$\tan\delta$を測定するために用いられる。
図4 シェーリングブリッジ回路
図4において、$R_3$と$C_3$で構成される並列回路部の合成インピーダンスは、
$$\frac{\displaystyle{\frac{R_3}{j\omega C_3}}}{R_3+\displaystyle{\frac{1}{j\omega C_3}}}=\frac{R_3}{1+j\omega C_3R_3}$$
したがって、ブリッジ回路の平衡条件は、
$$\begin{align*}
\left(R_1+\frac{1}{j\omega C_1}\right)\cdot\left(\frac{R_3}{1+j\omega C_3R_3}\right)&=R_2\cdot\frac{1}{j\omega C_2}\\\\
j\omega C_2\left(1+j\omega C_1R_1\right)R_3&=j\omega C_1\left(1+j\omega C_3R_3\right)R_2\\\\
\therefore-\omega^2C_1C_2R_1R_3+j\omega C_2R_3&=-\omega^2C_1C_3R_2R_3+j\omega C_1R_2 ・・・(2)\\\\
\end{align*}$$
図4で$R_1$および$C_1$が測定対象であるとすると、これらを求める式は、$(2)$式において両辺の虚部同士を比較して、
$$\begin{align*}
-\omega^2C_1C_2R_1R_3&=-\omega^2C_1C_3R_2R_3\\\\
\therefore R_1&=\frac{C_3}{C_2}R_2\\\\\\\\
\omega C_2R_3&=\omega C_1R_2\\\\
\therefore C_1&=\frac{R_3}{R_2}C_2
\end{align*}$$
また、$R_1$および$C_1$の端子電圧をそれぞれ$\dot{V}_\mathrm{R},\ \dot{V}_\mathrm{C}$,これらの直列回路における電圧および電流を$\dot{V},\ \dot{I}$とし、ベクトル図を示すと図5のようになる。
図5 $R_1$と$C_1$の直列回路におけるベクトル図
ここで、誘電正接$\tan\delta$は、図5のベクトル図より$\displaystyle{\frac{\left|\dot{V}_\mathrm{R}\right|}{\left|\dot{V}_\mathrm{C}\right|}}$で求めることができて、
$$\begin{align*}
\tan\delta&=\frac{\left|\dot{V}_\mathrm{R}\right|}{\left|\dot{V}_\mathrm{C}\right|}\\\\
&=\frac{R_1I}{\displaystyle{\frac{I}{\omega C_1}}}\\\\
&=\omega C_1R_1
\end{align*}$$
本記事では、ブリッジの平衡条件について触れ、本サイトで解説した各種ブリッジ回路についてまとめた。ブリッジの平衡条件図1のように、電源の接続点から2つのインピーダンスの並列回路に分岐し、その中間に「橋を渡す」ように検出計(検流計やオシ[…]
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電験二種
参考文献
- 電気学会『電気工学ハンドブック 第7版』オーム社,2013
- 大下眞二郎『詳解電気回路演習(上)』共立出版,1979
- De Sauty Bridge Construction Circuit and Theory|About Circuit
- Series Resistance Capacitance Bridge Circuit|Electrical Academia
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