高調波の例題 その1

高調波の例題 その1-①

問題

出典:電験二種二次試験「電力・管理」 平成25年度問5
(問題文の記述を一部変更しています)

図1のような三相$3$線式$6\mathrm{kV}$高圧配電系から受電している需要家がある。負荷の一部に三相の高調波発生機器があり、高調波電流$I_n$を流出している。

また、進相コンデンサにはそのリアクタンスの$6\%$のリアクタンスを有する直列リアクトルが接続されている。

ただし、基準容量により換算した各部のリアクタンスは、$X_{L0}=0.20\mathrm{p.u.}$, $X_C=30.0\mathrm{p.u.}$,$X_T=0.05\mathrm{p.u.}$とする。

このとき、次の問に答えよ。

 

図1 高圧需要家と高調波発生機器

 

$(1)$
進相コンデンサに直列リアクトルを接続する理由を2つ述べよ。

$(2)$
流出している高調波電流を高圧配電系に換算した第5調波電流$I_5$が$10\mathrm{A}$であったとき、高圧配電系に流出する電流$I_{Ln}$のうち第5調波電流$I_{L5}[\mathrm{A}]$を求めよ。

$(3)$
$6\%$の直列リアクトルを接続しない場合の高圧配電系に流出する第5調波電流を$I’_{L5}[\mathrm{A}]$とすると、$I’_{L5}$は接続時の流出電流$I_{L5}$の何$\%$となるか求めよ。

 

解答

$(1)$
進相コンデンサに直列リアクトルを接続する理由には、下記が挙げられる[1]

  • 進相コンデンサを接続した系統において、高調波による波形のひずみの拡大を防止する。
  • 開閉器投入時に、回路の$L$と$C$で決まる固有周波数で振動する突入電流を抑制する。
    (リアクトルを付属しない設備においては、定格電流の数十倍にも及ぶ場合がある)

 

$(2)$
$6\mathrm{kV}$高圧配電系およびコンデンサ設備の第5高調波リアクタンスを$X_{L5}$および$X_{SC5}$とすると、

$$\begin{align*}
X_{L5}&=j5X_{L0}\\\\
&=j5\times0.20\\\\
&=j1.0\mathrm{p.u.}\\\\\\
X_{SC5}&=j5X_{L}-j\frac{X_{C5}}{5}\\\\
&=j5\times\left(30.0\times0.06\right)-j\frac{30.0}{5}\\\\
&=j3.0\mathrm{p.u.}
\end{align*}$$

 

高圧配電系に流出する第5高調波電流$I_{L5}$は、高調波発生機器から流出する第5高調波電流$I_5$が、$X_{L5}$および$X_{SC5}$のうち$X_{L5}$の方に分流して流れる、という計算で求めることができるので、

$$\begin{align*}
I_{L5}&=\frac{X_{SC5}}{X_{L5}+X_{SC5}}\times I_5\\\\
&=\frac{j3.0}{j1.0+j3.0}\times10\\\\
&=\boldsymbol{\underline{7.50\mathrm{A}}}
\end{align*}$$

 

$(3)$
$6\%$の直列リアクトルを接続しない場合のコンデンサ設備の第5高調波リアクタンスを$X’_{SC5}$とすると、

$$\begin{align*}
X_{SC5}&=-j\frac{X_{C5}}{5}\\\\
&=-j\frac{30.0}{5}\\\\
&=-j6.0\mathrm{p.u.}
\end{align*}$$

となり、リアクタンスは容量性となる。

 

このときの高圧配電系に流出する第5調波電流$I’_{L5}$は、

$$\begin{align*}
I’_{L5}&=\frac{X’_{SC5}}{X_{L5}+X’_{SC5}}\times I_5\\\\
&=\frac{-j6.0}{j1.0-j6.0}\times10\\\\
&=12\mathrm{A}
\end{align*}$$

 

したがって、$I_{L5}$に対する$I’_{L5}$の割合は、

$$\frac{I’_{L5}}{I_{L5}}=\frac{12}{7.5}=1.6\rightarrow\boldsymbol{\underline{160\%}}$$

 

高調波の例題 その1-②

問題

出典:電験二種二次試験「電力・管理」 平成8年度問5
(問題文の記述を一部変更しています)

図2のように三相3線式高圧配電系統から$6.6\mathrm{kV}$で受電している需要家がある。

負荷の一部に定格入力容量$600\mathrm{kVA}$の三相の高調波発生機器があり、この機器から発生する第5高調波電流は定格入力電流に対し$17\%$である。

次の問に答えよ。ただし、受電点より配電系統側のインピーダンスは$10\mathrm{MVA}$基準で$j8\%$、受電用変圧器の容量は$1000\mathrm{kVA}$でそのインピーダンスは$j4\%$,進相用コンデンサの容量は$200\mathrm{kVA}$とし、高調波発生機器は電流源と見なせるものとする。

 

図2 三相3線式高圧配電系統から受電している需要家

 

$(1)$
機器から発生する第5高調波電流の受電点、電圧に換算した電流を求めよ。

$(2)$
進相用コンデンサにそのリアクタンスの$6\%$のリアクタンスを有する直列リアクトルを接続した場合、受電点から配電系統に流出する第5高調波電流を求めよ。

 

解答

$(1)$
題意より、第5高調波電流の大きさ$I_5$は、定格入力電流に対し$17\%$であるから、

$$I_5=\frac{600\times10^3}{\sqrt{3}\times6.6\times10^3}\times0.17=8.923\rightarrow\boldsymbol{\underline{8.92\mathrm{A}}}$$

 

$(2)$
図2の高圧配電系統および需要家の第5高調波リアクタンスおよび流れる電流を、図3のように設定する。

(なお、図2には明記してない直列リアクトルも表記している)

 

図3 高圧配電系統および需要家の第5高調波リアクタンスおよび電流

 

系統および各機器の第5高調波リアクタンスは、基準容量を$1000\mathrm{kVA}$とすると、

$$\begin{align*}
X_{5S}&=8\times\frac{1000}{10000}\times5=4.0\%\\\\
X_{5T}&=4\times5=20\%\\\\
X_{5C}&=\frac{1000}{200}\times100\div5=100\%\\\\
X_{5L}&=\frac{1000}{200}\times100\times0.06\times5=150\%
\end{align*}$$

 

なお、基準電圧を$V$,および電流を$I$,コンデンサの静電容量を$C$,角周波数を$\omega$とすると、

基準容量は$VI$,コンデンサ容量は$\omega CV^2$であるから、(基準容量)/(コンデンサ容量)とすると、

$$\begin{align*}
\frac{VI}{\omega CV^2}&=\frac{1}{\omega C}\times\frac{I}{V}\\\\
&=\frac{1}{\omega C}\times\frac{1}{Z} \left(Z\equiv\frac{V}{I}\right)
\end{align*}$$

となり、リアクタンスを基準インピーダンスで割った値(すなわち$\mathrm{p.u.}$値)が求められる。

 

したがって、受電点から配電系統に流出する第5高調波電流高調波$\dot{I}_{S5}$は、発生機器からの第5高調波電流$\dot{I_5}$のうち、リアクタンス$\left(X_{5S}+X_{5T}\right)$に分流する分であるから、

$$\begin{align*}
\dot{I}_{S5}&=\frac{j\left(X_{5L}-X_{5C}\right)}{j\left(X_{5S}+X_{5T}\right)+j\left(X_{5L}-X_{5C}\right)}\times\dot{I}_{5}\\\\
&=\frac{j\left(150-100\right)}{j\left(4.0+20\right)+j\left(150-100\right)}\times8.923\\\\
&=6.029\rightarrow\boldsymbol{\underline{6.03\mathrm{A}}}
\end{align*}$$

 

参考文献

[1]電気工学ハンドブック第7版 17編「変圧器・リアクトル・コンデンサ」

 

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