2象限チョッパ回路(可逆チョッパ回路)

本記事では、電動機の駆動・ブレーキの両方の動作を行う2象限チョッパ回路(可逆チョッパ回路)について解説する。

2象限チョッパ回路の構成

図1に2象限チョッパ回路の構成を示す。

この回路は、スイッチの切換により電動機に流れる出力電流の極性を正負のいずれにも変更可能であり、このような運転方法を2象限運転という。

また、正負両方の領域に相互に切換可能なことから、可逆チョッパ回路ともいう。

 

図1 2象限チョッパ回路(可逆チョッパ回路)

 

図1の回路は、入力電圧$E$となる直流電源が、スイッチ$\mathrm{S_1},\ \mathrm{S_2}$(図1ではバイポーラトランジスタ)およびダイオード$\mathrm{D_1},\ \mathrm{D_2}$を介して、リアクトル$L$と電動機に接続されている。

同図において、リアクトル$L$および電動機の直列回路の両端の電圧を$v_\mathrm{m}$,電動機に流れる電流(電機子電流)を$i_\mathrm{a}$とする。

 

この場合の「2象限」とは、横軸を電機子電流、縦軸を電動機の誘導起電力としたグラフに対して考えている。

電動機の誘導起電力が負、すなわち逆回転を考えたい場合は4象限チョッパ回路を用いる。

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2象限チョッパ回路の電流

スイッチS1オン・オフ切換時(スイッチS2常時オフ)

図1の回路において、まずスイッチ$\mathrm{S_2}$をオフで固定し、スイッチ$\mathrm{S_1}$をオンおよびオフに切り換えた場合のそれぞれの電流の流れを図2に示す。

 

図2 2象限チョッパ回路のスイッチ$\mathrm{S_1}$切換時($\mathrm{S_2}$常時オフ)における電流の流れ(左:$\mathrm{S_1}$オン、右:$\mathrm{S_1}$オフ)

 

図2において、スイッチ$\mathrm{S_1}$がオンになり導通している場合(同図左)、直流電源$E$から電動機に向かって電流$i_\mathrm{a}$が流れる。

このとき、直列接続されているリアクトル$L$にも電流が流れ、磁気エネルギーを蓄える。

 

次に、スイッチ$\mathrm{S_1}$がオフになると(同図右)、電動機は直流電源$E$から切り離されるものの、リアクトル$L$がエネルギーを放出するので、電流$i_\mathrm{a}$は$\mathrm{S_1}$オン時と同方向に流れ続ける。

この際、ダイオード$\mathrm{D_2}$が導通し、電流$i_\mathrm{a}$は電動機およびリアクトル$L$の閉回路を還流する。

 

この一連の流れにおいて、図1の回路はスイッチ$\mathrm{S_1}$オン時にのみ電源から電動機にエネルギーを供給する降圧チョッパ回路として動作していることになる。

このときの運転状態を力行運転という。

 

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スイッチS2オン・オフ切換時(スイッチS1常時オフ)

続いて、図1の回路において、スイッチ$\mathrm{S_1}$をオフで固定し、スイッチ$\mathrm{S_2}$をオンおよびオフにした場合のそれぞれの電流の流れを図3に示す。

 

図3 2象限チョッパ回路のスイッチ$\mathrm{S_2}$切換時($\mathrm{S_1}$常時オフ)における電流の流れ(左:$\mathrm{S_2}$オン、右:$\mathrm{S_2}$オフ)

 

図3において、まずスイッチ$\mathrm{S_2}$がオンになり導通すると(同図左)、それまで流れていた電流$i_\mathrm{a}$により電動機には誘導起電力が発生しているので、これを元に電流$i_\mathrm{a}$が先程とは逆向きに流れる。

このとき、電流$i_\mathrm{a}$は電動機およびリアクトル$L$と$\mathrm{S_2}$との回路を還流し、$L$は磁気エネルギーを蓄える。

 

そして、スイッチ$\mathrm{S_2}$がオフになると(同図右)、リアクトル$L$はエネルギーを放出し、ダイオード$\mathrm{D_1}$を介して電流$i_\mathrm{a}$を$\mathrm{S_1}$オン時と同方向に流そうとする作用がはたらく。

すなわち、電流$i_\mathrm{a}$は電源$E$に流れ込むことになる。

この際、回路を「昇圧チョッパ回路の理論」の記事の簡略等価回路(図5)にあてはめると、電源$E_1$側が電動機、負荷$E_2$側が電源$E$になることに注意する。

 

このとき、図1の回路はスイッチ$\mathrm{S_2}$オフ時にのみ電動機から電源にエネルギーを返還していることになり、この一連の流れにおいて図1の回路は昇圧チョッパ回路として動作していることになる。

このときの運転状態を回生運転という。

 

この回生運転のモードは、電流$i_\mathrm{a}$が駆動時(力行運転時)とは逆方向になるので、電動機からみるとブレーキとして機能していることになる。

実際に、電気鉄道などではこれを利用し、電力回生ブレーキとして用いられている。

 

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 電流・電圧のグラフ

図1の回路において、前項までの流れに沿って、スイッチ$\mathrm{S_1},\ \mathrm{S_2}$を交互にオン・オフした場合の$v_\mathrm{m}$および$i_\mathrm{a}$のグラフを図4に示す。

 

図4 2象限チョッパ回路の電圧・電流のグラフ

 

同図では、次の①~④の状態が繰り返される。

  1. まず、スイッチ$\mathrm{S_2}$がオフ、$\mathrm{S_1}$がオン状態のとき、力行運転のモードで$v_\mathrm{m}=E,\ i_\mathrm{a}>0$の状態となり、電動機が駆動する。
  2. そして、スイッチ$\mathrm{S_1},\ \mathrm{S_2}$が両方ともオフになると電動機は電源$E$と切り離されるが、リアクトル$L$の作用によりダイオード$\mathrm{D_2}$との閉回路に電流が①と同方向に流れ続けるので、$v_\mathrm{m}=0,\ i_\mathrm{a}>0$となる。
  3. 次に、スイッチ$\mathrm{S_1}$がオフ、スイッチ$\mathrm{S_2}$がオンになると、電動機の誘導起電力により電流は先ほどとは逆向き(負の値)に、リアクトル$L$と$\mathrm{S_2}$との閉回路を還流し、$v_\mathrm{m}=0,\ i_\mathrm{a}<0$となる。
  4. さらに、スイッチ$\mathrm{S_1},\ \mathrm{S_2}$が両方ともオフになると、ダイオード$\mathrm{D_1}$を介して回生運転のモードで$v_\mathrm{m}=E,\ i_\mathrm{a}<0$となり、電動機にブレーキが発生する。

 

この①~④の状態が繰り返されることで、電圧$v_\mathrm{m}$は方形波状になり、電流$i_\mathrm{a}$は正負が交互に繰り返される交流波形になる。

 

 

2象限チョッパ回路の動作における注意事項

図1の回路で、スイッチ$\mathrm{S_1}$と$\mathrm{S_2}$が同時にオンになってしまうと、電源$E$との短絡回路が形成されてしまう。

(短絡によりスイッチが焼損するなどの恐れがある)

 

実際には、スイッチ$\mathrm{S_1}$および$\mathrm{S_2}$のオン・オフのタイミングをずらし、片方のスイッチがオフになってからもう一方がオンになるまでに余裕時間(デッドタイム)が設けられる。

 

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