昇降圧チョッパ回路の理論

本記事では「直流-直流変換回路」の一種である、昇降圧チョッパ回路について解説する。





昇降圧チョッパ回路の構成

図1に昇降圧チョッパ回路の構成を示す。

 

図1 昇降圧チョッパ回路

 

図1の回路は、入力電圧$E_1$となる直流電源が、スイッチ$\mathrm{Q}$(図1ではバイポーラトランジスタ)およびダイオード$\mathrm{D}$を介して負荷抵抗$R$に接続される。

このとき、リアクトル$L$はスイッチ$\mathrm{Q}$およびダイオード$\mathrm{D}$の間に配置される。

このダイオード$\mathrm{D}$は、後述のようにスイッチ$\mathrm{Q}$がオフ時に電流を還流させる経路を作る役割をもつ。

 

昇降圧チョッパ回路の場合、ダイオード$\mathrm{D}$は昇圧チョッパ回路とは逆向きについているのが特徴である。

また、降圧チョッパ回路と比較すると、リアクトル$L$とダイオード$\mathrm{D}$の位置が入れ替わっている。

 

一方、負荷抵抗$R$には平滑コンデンサ$C$が並列に接続される。

 

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昇降圧チョッパ回路の出力電圧

図1の回路において、スイッチ$\mathrm{Q}$がオンおよびオフになった場合の、それぞれの電流の流れを図2に示す。

ここでは、負荷抵抗$R$に発生する出力電圧$E_2$の式を導出するため、同図のリアクトル$L$に蓄えられるエネルギーに着目する。

このとき、リアクトル$L$の両端の電圧を$v_\mathrm{L}$,流れる電流を$i_\mathrm{L}$とする。

 

図2 昇降圧チョッパ回路のスイッチ$\mathrm{Q}$オン・オフ時における電流の流れ

 

スイッチQオン時

まず、スイッチ$\mathrm{Q}$が導通するオン時間$T_\mathrm{ON}$において、直流電源$E_1$は負荷抵抗$R$から切り離され、電流はスイッチ$\mathrm{Q}$とリアクトル$L$で形成される閉回路を流れる。

一方、平滑コンデンサ$C$が充電されているとき、蓄えられたエネルギーを放出し、負荷抵抗$R$で消費される。

なお、コンデンサ$C$と負荷抵抗$R$の閉回路における電流の向きは、昇圧チョッパ回路の場合と逆向きであることに注意。

 

このとき、ダイオード$\mathrm{D}$により、平滑コンデンサ$C$から放出される電流は直流電源$E_1$側には流れ出ない。

このことから、図1および図2のダイオード$\mathrm{D}$は、オン時間$T_\mathrm{ON}$において(昇圧チョッパ回路の場合と同様に)阻止ダイオードとして機能している。

 

このとき、リアクトル$L$に流れる電流$i_\mathrm{L}$は、スイッチ$\mathrm{Q}$に流れる電流$i_\mathrm{Q}$に等しく、後述のように時間$t$とともに値が増加する。

またこの間、直流電源$E_1$とリアクトル$L$のみの閉回路が形成されるため、リアクトル$L$の両端の電圧は$v_\mathrm{L}=E_1$となる。

 

スイッチQオフ時

一方、スイッチ$\mathrm{Q}$が遮断されるオフ時間$T_\mathrm{OFF}$において、直流電源$E_1$は回路から切り離されるが、リアクトル$L$および平滑コンデンサ$C$に蓄えられたエネルギーは負荷抵抗$R$へ放出される。

平滑コンデンサ$C$は、リアクトル$L$からの放出エネルギーと合わせて出力電圧を直流に保つ「平滑化」の役割がある。

なお、リアクトル$L$から負荷抵抗$R$へ流れ出す電流の向きおよび電圧$E_2$の向きは、降圧チョッパ回路の場合と逆向きであることに注意。

 

このとき、ダイオード$\mathrm{D}$が導通し、スイッチ$\mathrm{Q}$がオフ時のときに電流の経路を作っている。

このことから、図1および図2のダイオード$\mathrm{D}$は、オフ時間$T_\mathrm{OFF}$において(降圧チョッパ回路の場合と同様に)還流ダイオードとして機能している。

 

このリアクトル$L$からのエネルギー放出に伴い、電流$i_\mathrm{L}$はダイオード$\mathrm{D}$に流れる電流の逆向きである$-i_\mathrm{D}$に等しくなり、時間$t$とともに値が減少していく。

また、この間直流電源$E_1$が回路から切り離されているので、リアクトル$L$の両端の電圧は$v_\mathrm{L}=-E_2$となる。

 

電流・電圧のグラフ

以上より、$v_\mathrm{L}$および$i_\mathrm{L}$の時間$t$に対するグラフは図3のようになる。

 

図3 昇降圧チョッパ回路の電圧・電流のグラフ

 

なお、リアクトル$L$のインダクタンスは非常に大きいものとすると、図3に示すように、流れる電流はほぼ一定の値である$I_\mathrm{L}$になる(後述)。

 

このとき、スイッチ$\mathrm{Q}$のオン時間$T_\mathrm{ON}$にリアクトル$L$に蓄えられるエネルギーと、オフ時間$T_\mathrm{OFF}$に放出されるエネルギーは平衡するので、ある時間$t$におけるエネルギーに関して、次の式が成り立つ。

$$\begin{align*}
\int^{T}_{0} v_\mathrm{L}i_\mathrm{L}\mathrm{d}t=E_1I_\mathrm{L}\cdot T_\mathrm{ON}-E_2I_\mathrm{L}\cdot T_\mathrm{OFF}&=0\\\\
\therefore E_1T_\mathrm{ON}-E_2T_\mathrm{OFF}&=0
\end{align*}$$

 

したがって、負荷の出力電圧$E_2$は、スイッチ$\mathrm{Q}$のオン時間$T_\mathrm{ON}$とスイッチング周期$T=T_\mathrm{ON}+T_\mathrm{OFF}$の比である通流率$\alpha=\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{T_\mathrm{ON}+T_\mathrm{OFF}}}$を用いて、

$$\begin{align*}
E_2&=\frac{T_\mathrm{ON}}{T_\mathrm{OFF}}E_1\\\\
&=\frac{\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{T_\mathrm{ON}+T_\mathrm{OFF}}}}{\displaystyle{\frac{T_\mathrm{OFF}}{T_\mathrm{ON}+T_\mathrm{OFF}}}}E_1\\\\
&=\frac{\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{T_\mathrm{ON}+T_\mathrm{OFF}}}}{1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{T_\mathrm{ON}+T_\mathrm{OFF}}}}E_1\\\\
&=\frac{\alpha}{1-\alpha}E_1 ・・・(1)
\end{align*}$$

 

$(1)$式より、出力電圧$E_2$は通流率$\alpha$を$0\leq\alpha<1$の範囲で調整することで、直流電源からの入力電圧$E_1$より高くしたり低くしたりすることができる。

これが「昇降圧」チョッパ回路と呼ばれる所以である。

 

 

昇降圧チョッパ回路の電流(簡略等価回路)

ここでは、前項のリアクトル$L$の電流$i_\mathrm{L}$が、時間$t$に比例する式であることを検証する。

 

なお、時間$t=0$を基準として、スイッチ$\mathrm{Q}$がオンになる時間を$t_1$,オフになる時間を$t_2$とし、以後スイッチング周期$T=T_\mathrm{ON}+T_\mathrm{OFF}$ごとにオンオフが繰り返されるものとする(図3とは時間の基準が異なっていることに注意)。

また、各回路素子の電圧降下は無視するものとする。

 

スイッチQオン時

スイッチ$\mathrm{Q}$オン時$\left(t_1\leq t<t_2\right)$における図1の等価回路を図4に示す。

同図では、負荷抵抗$R$が回路から切り離され、直流電源$E_1$およびリアクトル$L$のみの回路となることが表されている。

なお同図では、抵抗成分は省略して簡略化した回路となっている。

 

図4 昇降圧チョッパ回路の簡略等価回路(スイッチ$\mathrm{Q}$オン)

 

図4の回路について、キルヒホッフの電圧則に基づき回路方程式を立てると、

$$L\frac{\mathrm{d}i_\mathrm{L}}{\mathrm{d}t}=E_1 ・・・(2)$$

 

$(2)$式の両辺を時間$t$で積分すると、積分定数を$A_1$として、

$$i_\mathrm{L}=\frac{E_1}{L}\left(t-t_1\right)+A_1 ・・・(3)$$

 

初期条件として、スイッチ$\mathrm{Q}$がオンになる$t=t_\mathrm{1}$において、リアクトル$L$に流れる電流は最小値となるので、これを$i_\mathrm{L}|_{t=t_1}=I_\mathrm{min}$とおくと、$(3)$式より、

$$A_1=I_\mathrm{min}$$

 

以上より、スイッチ$\mathrm{Q}$がオン時$\left(t_1\leq t<t_2\right)$の電流$i_\mathrm{L}$の式は、

$$i_\mathrm{L}=\frac{E_1}{L}\left(t-t_1\right)+I_\mathrm{min} ・・・(4)$$

 

$(4)$式より、スイッチ$\mathrm{Q}$がオンの場合において、電流$i_\mathrm{L}$は時間$t$に比例する直線で表される。

 

図4および$(4)$式は、昇圧チョッパ回路のスイッチ$\mathrm{Q}$がオンの場合と等しくなる。

 

スイッチQオフ時

図1の昇降圧チョッパ回路において、平滑コンデンサ$C$により、負荷抵抗$R$は一定の電圧$E_2$を維持する。

これは、言い換えれば直流電圧源$E_2$が(図5のように)接続されているとみることもできる。

 

上記を考慮して、スイッチ$\mathrm{Q}$オフ時$\left(t_2\leq t<t_1+T\right)$における図1の等価回路を図5に示す。

同図では、図4とは逆に直流電源$E_1$が切り離されており、抵抗成分は省略して簡略化した回路となっている。

また、電流$i_\mathrm{L}$の向きが図4とは逆になっている。

 

図5 昇降圧チョッパ回路の簡略等価回路(スイッチ$\mathrm{Q}$オフ)

 

図5の回路について、キルヒホッフの電圧則に基づき回路方程式を立てると、

$$L\frac{\mathrm{d}i_\mathrm{L}}{\mathrm{d}t}=-E_2 ・・・(5)$$

 

$(5)$式の両辺を時間$t$で積分すると、積分定数を$A_2$として、

$$i_\mathrm{L}=-\frac{E_2}{L}\left(t-t_2\right)+A_2 ・・・(6)$$

 

初期条件として、スイッチ$\mathrm{Q}$がオフになる$t=t_\mathrm{2}$において、リアクトル$L$に流れる電流は最大値となるので、これを$i_\mathrm{L}|_{t=t_2}=I_\mathrm{max}$とおくと、$(6)$式より、

$$A_2=I_\mathrm{max}$$

 

以上より、スイッチ$\mathrm{Q}$がオン時$\left(t_2\leq t<t_1+T\right)$の電流$i_\mathrm{L}$の式は、

$$i_\mathrm{L}=-\frac{E_2}{L}\left(t-t_2\right)+I_\mathrm{max} ・・・(7)$$

 

$(7)$式より、スイッチ$\mathrm{Q}$がオフの場合においても、電流$i_\mathrm{L}$は時間$t$に比例する直線で表される。

 

図5の電流・電圧はともに逆向きであるが、$(7)$式は降圧チョッパ回路のスイッチ$\mathrm{Q}$がオフの場合と結果的に等しくなる。

 

電流のグラフ

$(4)$式および$(7)$式に基づき、時間$t$に対する電流$i_\mathrm{L}$のグラフをかくと、図6のようになる。

 

図6 昇降圧チョッパ回路の電流のグラフ

 

図6より、スイッチ$\mathrm{Q}$のオンとオフが切り換わる$t=t_2$において、電流の値は$i_\mathrm{L}=I_\mathrm{max}$となる。

したがって、$(4)$式で$t=t_2$とすると、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{max}&=\frac{E_1}{L}\left(t_2-t_1\right)+I_\mathrm{min}\\\\
\therefore I_\mathrm{max}-I_\mathrm{min}&=\frac{E_1}{L}T_\mathrm{ON} ・・・(8)
\end{align*}$$

 

また$t=t_1+T$のとき、$(7)$式で$i_\mathrm{L}|_{t=t_1+T}=I_\mathrm{min}$とすれば、図6の$i_\mathrm{L}$のグラフはスイッチング周期$T$で繰り返し波形となるので、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{min}&=-\frac{E_2}{L}\left(t_1+T-t_2\right)+I_\mathrm{max}\\\\
\therefore I_\mathrm{max}-I_\mathrm{min}&=\frac{E_2}{L}\left(T-T_\mathrm{ON}\right) ・・・(9)
\end{align*}$$

 

$(8)=(9)$式とすると、

$$\begin{align*}
\frac{E_1}{L}T_\mathrm{ON}&=\frac{E_2}{L}\left(T-T_\mathrm{ON}\right)\\\\
\therefore \frac{E_2}{E_1}&=\frac{T_\mathrm{ON}}{T-T_\mathrm{ON}}\\\\
&=\frac{\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{T}}}{1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{T}}}\\\\
&=\frac{\alpha}{1-\alpha} ・・・(10)
\end{align*}$$

となり、$(1)$式と一致する。

 

 

昇降圧チョッパ回路の電流(抵抗分を含む等価回路)

次に図1の昇降圧チョッパ回路において、図4および図5とは異なり、回路の抵抗分を含む等価回路を考え、電流$i_\mathrm{L}$の式を導出する。

 

スイッチQオン時

スイッチ$\mathrm{Q}$オン時($t_1\leq t<t_2$)における、回路の等価抵抗を$R_\mathrm{e1}=R_\mathrm{e}$(後述のスイッチ$\mathrm{Q}$オフ時と値は等しい)とした場合の図1の等価回路を図7に示す。

 

図7 昇降圧チョッパ回路の等価回路(スイッチ$\mathrm{Q}$オン)

 

図7の回路について、キルヒホッフの電圧則に基づき回路方程式を立てると、

$$L\frac{\mathrm{d}i_\mathrm{L}}{\mathrm{d}t}+R_\mathrm{e}i_\mathrm{L}=E_1 ・・・(11)$$

 

$(11)$式の解は、「RL直列回路の過渡現象(直流回路)」$(6)$式より、

$$i_\mathrm{L}=A_3e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}t}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}} ・・・(12)$$

 

初期条件で、$t=t_1$のとき$i_\mathrm{L}|_{t=t_1}=I_\mathrm{min}$であることから、$(12)$式より、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{min}&=A_3e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}t_1}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\\\\
\therefore A_3&=\left(I_\mathrm{min}-\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\right)e^{\frac{R_\mathrm{e}}{L}t_1}
\end{align*}$$

 

以上より、スイッチ$\mathrm{Q}$オン時($t_1\leq t<t_2$)の電流$i_\mathrm{L}$の式は、

$$\begin{align*}
i_\mathrm{L}&=\left(I_\mathrm{min}-\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\right)e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t-t_1\right)}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\\\\
&=I_\mathrm{min}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t-t_1\right)}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left\{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t-t_1\right)}\right\}\\\\
&\equiv I_\mathrm{min}e^{-\frac{t-t_1}{\tau}}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{t-t_1}{\tau}}\right) ・・・(13)
\end{align*}$$

ただし、$\tau=\displaystyle{\frac{L}{R_\mathrm{e}}}$

 

$(13)$式より、電流$i_\mathrm{L}$は本来は指数関数的に変動する。

 

ここで、指数項のマクローリン展開

$$e^{-\frac{t-t_1}{\tau}}= 1-\frac{t-t_1}{\tau}+\frac{\left(t-t_1\right)^2}{2\tau^2}-\frac{\left(t-t_1\right)^3}{6\tau^3}+\cdots ・・・(14)$$

において、回路のインダクタンス$L$が十分に大きい($=\tau$も十分に大きい)とき、$(14)$式の第2項以降は無視することができるので、$(13)$式は、

$$\begin{align*}
i_\mathrm{L}&\simeq I_\mathrm{min}\left(1-\frac{t-t_1}{\tau}\right)+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left\{1-\left(1-\frac{t-t_1}{\tau}\right)\right\}\\\\
&=I_\mathrm{min}\left\{1-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t-t_1\right)\right\}+\frac{E_1}{L}\left(t-t_1\right) ・・・(15)
\end{align*}$$

 

ここで$R_\mathrm{e}=0$,すなわち図4の回路のように等価抵抗$R_\mathrm{e}$を無視すれば、$(15)$式は$(4)$式に一致する。

 

スイッチQオフ時

スイッチ$\mathrm{Q}$オフ時($t_2\leq t<t_1+T$)における、回路の等価抵抗を$R_\mathrm{e2}=R_\mathrm{e}$(前述のスイッチ$\mathrm{Q}$オン時と値は等しい)とした場合の図1の等価回路を図8に示す。

 

図8 昇降圧チョッパ回路の等価回路(スイッチ$\mathrm{Q}$オフ)

 

図8の回路について、キルヒホッフの電圧則に基づき回路方程式を立てると、

$$L\frac{\mathrm{d}i_\mathrm{L}}{\mathrm{d}t}+R_\mathrm{e}i_\mathrm{L}=-E_2 ・・・(16)$$

 

$(16)$式の解は、「RL直列回路の過渡現象(直流回路)」$(6)$式より、

$$i=A_4e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}t}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}} ・・・(17)$$

 

初期条件で、$t=t_2$で$i_\mathrm{L}|_{t=t_2}=I_\mathrm{max}$であることから、$(12)$式より、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{max}&=A_4e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}t_2}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\\\\
\therefore A_4&=\left(I_\mathrm{max}+\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\right)e^{\frac{R_\mathrm{e}}{L}t_2}
\end{align*}$$

 

以上より、スイッチ$\mathrm{Q}$オフ時($t_2\leq t<t_1+T$)の電流$i_\mathrm{L}$の式は、

$$\begin{align*}
i_\mathrm{L}&=\left(I_\mathrm{max}+\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\right)e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t-t_2\right)}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\\\\
&=I_\mathrm{max}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t-t_2\right)}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left\{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t-t_2\right)}\right\}\\\\
&\equiv I_\mathrm{max}e^{-\frac{t-t_2}{\tau}}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{t-t_2}{\tau}}\right)・・・(18)
\end{align*}$$

 

$(18)$式も$(13)$式と同様に、電流$i_\mathrm{L}$は本来は指数関数的に変動する。

 

ここで、回路のインダクタンス$L$が十分に大きい($=\tau$も十分に大きい)とき、$(14)$式のマクローリン展開を同様に用いると、$(18)$式は、

$$\begin{align*}
i_\mathrm{L}&\simeq I_\mathrm{max}\left(1-\frac{t-t_2}{\tau}\right)-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left\{1-\left(1-\frac{t-t_2}{\tau}\right)\right\}\\\\
&=I_\mathrm{max}\left\{1-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t-t_2\right)\right\}-\frac{E_2}{L}\left(t-t_2\right) ・・・(19)
\end{align*}$$

 

ここで$R_\mathrm{e}=0$,すなわち図5の回路のように等価抵抗$R_\mathrm{e}$を無視すれば、$(19)$式は$(7)$式に一致する。

 

電流の最大値と最小値

さらに、電流の最大値$I_\mathrm{max}$および最小値$I_\mathrm{min}$を、回路定数およびオン・オフ時間で表してみる。

 

スイッチ$\mathrm{Q}$のオンとオフが切り換わる$t=t_2$において、電流の値は$i_\mathrm{L}=I_\mathrm{max}$となるので、$(13)$式で$t=t_2$として($t_2-t_1=T_\mathrm{ON}$であることにも注意して)、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{max}&=I_\mathrm{min}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t_2-t_1\right)}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left\{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t_2-t_1\right)}\right\}\\\\
&=I_\mathrm{min}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\right) ・・・(20)
\end{align*}$$

 

また$t=t_1+T$のとき、$(18)$式で$i_\mathrm{L}|_{t=t_1+T}=I_\mathrm{min}$とすれば、$i_\mathrm{L}$のグラフはスイッチング周期$T$で繰り返し波形となるので($t_2-t_1=T_\mathrm{ON},\ T=T_\mathrm{ON}+T_\mathrm{OFF}$であることに注意して)、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{min}&=I_\mathrm{max}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t_1+T-t_2\right)}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left\{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}\left(t_1+T-t_2\right)}\right\}\\\\
&=I_\mathrm{max}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\right) ・・・(21)
\end{align*}$$

 

$(20)$式と$(21)$より、$I_\mathrm{min}$を消去して$I_\mathrm{max}$を求めると、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{max}&=\left\{I_\mathrm{max}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\right)\right\}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\right)\\\\
&=I_\mathrm{max}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\right)e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\right)\\\\
\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T}\right)I_\mathrm{max}&=\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\right)-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\right)e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\\\\
\therefore I_\mathrm{max}&=\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\displaystyle{\frac{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}}{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T}}}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\displaystyle{\frac{e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\right)}{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T}}} ・・・(22)
\end{align*}$$

 

同様に、$(20)$式と$(21)$で$I_\mathrm{max}$を消去して$I_\mathrm{min}$を求めると、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{min}&=\left\{I_\mathrm{min}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}+\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\right)\right\}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\right)\\\\
&=I_\mathrm{min}e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T}+\frac{E_1}{R}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\right)e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\right)\\\\
\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T}\right)I_\mathrm{min}&=\frac{E_1}{R}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\right)e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\right)\\\\
\therefore I_\mathrm{min}&=\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\displaystyle{\frac{e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}\left(1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{ON}}\right)}{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T}}}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\displaystyle{\frac{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T_\mathrm{OFF}}}{1-e^{-\frac{R_\mathrm{e}}{L}T}}} ・・・(23)
\end{align*}$$

 

特に、各回路のインダクタンス$L$が十分に大きい($=\tau$も十分に大きい)とき、指数項のマクローリン展開

$$\begin{align*}
e^{-\frac{T}{\tau}}&=1-\frac{T}{\tau}+\frac{T^2}{2\tau^2}-\frac{T^3}{6\tau^3}+\cdots\\\\
&\simeq 1-\frac{T}{\tau}・・・(24)
\end{align*}$$

を用いると、$(22),\ (23)$式は、

$$\begin{align*}
I_\mathrm{max}&\simeq\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\frac{1-\left(1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{\tau}}\right)}{1-\left(1-\displaystyle{\frac{T}{\tau}}\right)}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{\tau}}\right)\frac{1-\left(1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{OFF}}{\tau}}\right)}{1-\left(1-\displaystyle{\frac{T}{\tau}}\right)}\\\\
&=\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\frac{T_\mathrm{ON}}{T}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\left(1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{\tau}}\right)\frac{T_\mathrm{OFF}}{T}\\\\
&\simeq\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\frac{T_\mathrm{ON}}{T}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\frac{T_\mathrm{OFF}}{T}\\\\
&=\alpha\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}-\left(1-\alpha\right)\frac{E_2}{R_\mathrm{e}} ・・・(25)
\end{align*}$$

 

$$\begin{align*}
I_\mathrm{min}&\simeq\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left(1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{OFF}}{\tau}}\right)\frac{1-\left(1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{ON}}{\tau}}\right)}{1-\left(1-\displaystyle{\frac{T}{\tau}}\right)}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\frac{1-\left(1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{OFF}}{\tau}}\right)}{1-\left(1-\displaystyle{\frac{T}{\tau}}\right)}\\\\
&=\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\left(1-\displaystyle{\frac{T_\mathrm{OFF}}{\tau}}\right)\frac{T_\mathrm{ON}}{T}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\frac{T_\mathrm{OFF}}{T}\\\\
&\simeq\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}\frac{T_\mathrm{ON}}{T}-\frac{E_2}{R_\mathrm{e}}\frac{T_\mathrm{OFF}}{T}\\\\
&=\alpha\frac{E_1}{R_\mathrm{e}}-\left(1-\alpha\right)\frac{E_2}{R_\mathrm{e}} ・・・(26)
\end{align*}$$

 

$(25),\ (26)$式より$I_\mathrm{max}=I_\mathrm{min}$,すなわち図6の電流$i_\mathrm{L}$のグラフは完全に平滑になり、図3に示すような一定値$I_\mathrm{L}$をとるような波形になる。

 

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