本記事では、火力発電所向け大容量タービン発電機の冷却方式に採用される水素冷却方式、水冷却方式について解説する。
水素冷却方式
採用の理由
- 火力用タービン発電機はほとんどが2極の高速機であり、風損による効率低下が問題となる。
水素は密度が空気の7%ときわめて軽いため、通風損失や回転子摩擦損が空気に比べて10%程度となり、効率が1~2%向上する。 - 水素の比熱は空気の14倍であるから、冷却効果が向上する。
- 水素は不活性であり絶縁物の劣化が少なく、火花を発しても酸素がないために燃焼が起こらず、コロナ発生電圧が高い。
安全対策
- 空気と混合した場合、水素の容積が10から70%の範囲では爆発性になるため、純度管理に十分留意する必要がある。
(電気設備技術基準の解釈 第41条では、発電機内の水素の純度が85%以下に低下した場合に、これを警報する装置を設けることとしており、一般には90%以上に保つよう運転される) - 機内の水素の漏洩管理にも留意する。
- 発電機および管類は水素が大気圧において爆発する場合に生ずる圧力に耐えるものとすることが必要である。
水素の密封
- 発電機内の水素ガスを密封する目的で、密封油装置が設置される。
- 密封方法としては、密封油を機内ガス圧より70kPa程度高い圧力で供給し、油を密封リングのなかの小穴を通って軸と密封リングのすき間に流れ込ませ、軸に沿って空気側および水素側に押し出し、軸と密封リングの間に油膜をつくって密封する。
水冷却方式
採用の理由
- 火力発電ユニットの大容量化に伴う発電機単機容量の増大により、水素冷却よりも効率的な冷却が必要になるため。
- 発電機の大型化に伴う重量、占有面積、コストの上昇抑制のため。
- 水素に比較して水は管理が容易であり、安全性の向上のため。
冷却系統の構成
- 固定子コイル内部につくられた通水路に純水を通して、巻線の発生熱を奪う。
- 温度の上昇した水は、貯水槽を通り冷却器で冷却され、ポンプで再び固定子コイルに送られる。
- 水は純度管理(導電率を管理)が必要なため、純度計により管理され、イオン交換樹脂を通して一定純度を保つようにしている。
- 付属機器にはポンプ、貯水槽、減圧・調整弁、冷却器、フィルタ、イオン交換樹脂、圧力計、温度計、純度計、水位計等の計測監視機器等がある。
- 制御装置には固定子コイル温度がある一定以下になるように冷却水の流量を監視する制御装置、冷却水の純度を保つための水処理制御装置、冷却水の水量を確保するための水位制御装置等がある。
冷却水循環が停止した場合
- 純水が沸騰するまでに運転継続可能な領域(1/3から1/4負荷程度)まで出力を低下させるランバックを行う。
- 出力を低下しても固定子巻線が規定の温度以上になった場合には、発電機をトリップさせる(ユニット停止)。
- 冷却装置に異常があった場合には、予備系の冷却装置に切り換える。
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