支持点高さが異なる電線の弛度

本記事では、支持点高さが異なる場合の電線の弛度について、例題を通じて解説する。

支持点高さが異なる電線の弛度:例題

出典:電験二種二次試験「電力・管理」 平成11年度問4
(問題の記述を一部変更しています)

 

電線の材質が一様で、径聞に比べて弛度が十分小さい場合において、以下の問に答えよ。

 

$(1)$
電線の弛度の曲線式を放物線で近似すると、次の式で表すことができる。

$$Y=\frac{X^2}{2a} ・・・(1)$$

ここで、$Y$は縦軸方向の変数、$X$は横軸方向の変数、$a$は係数とする。

 

図1において、支持点における電線水平張力を$T[\mathrm{N}]$,電線質量による単位長さ当たりの荷量を$W[\mathrm{N/m}]$,径間の長さを$S[\mathrm{m}]$とし、弛度の最下点$O$を座標軸の原点としたとき、弛度$D$は次式で表されることを証明せよ。

$$D=\frac{WS^2}{8T} ・・・(2)$$

ただし、電線の各点の張力は、その点の水平張力と同一とみなすことができるものとする。

 

図1 電線の弛度

 

$(2)$
図2は、図1の場合と径間長$S$は同じであるが、支持点$AB$間に高低差$H[\mathrm{m}]$がある場合である。

 

図2 電線の弛度(支持点に高低差がある場合)

 

図2において、支持点$A$から最下点$O$までの水平距離$S_A[\mathrm{m}]$を求めよ。

 

$(3)$
図2において、支持点$A$に対する電線水平弛度$D_0[\mathrm{m}]$を$H[\mathrm{m}]$及び$(2)$式の$D[\mathrm{m}]$を用いて表せ。

 

電線の弛度の近似式

$(1)$
放物線による弛度の近似式の証明は下記記事を参照。

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今回は、電線質量による荷重$W$の単位が$[\mathrm{N/m}]$であるため、上の記事のように重力加速度を考慮する必要はない。

 

なお、$(1)$式は、電線の弛度と実長の記事の$(19),\ (20)$式で示すように、厳密式である双曲線関数をマクローリン展開した式の最初の数項だけとると求められる。

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支持点Aから最下点Oまでの水平距離

$(2)$
図2より、最下点$O$から支持点$A$側の弛度$D_0$および支持点$B$側の弛度$D_0+H$は、$(2)$式より、

$$\begin{align*}
D_0=\frac{W\left(2S_A\right)^2}{8T}[\mathrm{m}] ・・・(3)\\\\
D_0+H=\frac{W\left(2S_B\right)^2}{8T}[\mathrm{m}] ・・・(4)
\end{align*}$$

 

$(4)-(3)$として、$D_0$を消去すると、

$$\begin{align*}
H&=\frac{W\left(2S_B\right)^2}{8T}-\frac{W\left(2S_A\right)^2}{8T}\\\\
&=\frac{W}{2T}\left({S_B}^2-{S_A}^2\right)\\\\
&=\frac{W}{2T}\left(S_B+S_A\right)\left(S_B-S_A\right)[\mathrm{m}] ・・・(5)
\end{align*}$$

 

また、図2より、

$$\begin{align*}
S&=S_A+S_B\\\\
\therefore S_B&=S-S_A ・・・(6)
\end{align*}$$

 

$(6)$式を$(5)$式に代入して、$S_B$を消去すると、

$$\begin{align*}
H&=\frac{W}{2T}\left(S_B+S_A\right)\left(S_B-S_A\right)\\\\
&=\frac{W}{2T}S\left(S-2S_A\right)\\\\
\frac{2TH}{WS}&=S-2S_A\\\\
\therefore S_A&=\frac{S}{2}-\frac{TH}{WS}[\mathrm{m}] ・・・(7)
\end{align*}$$

 

支持点Aに対する電線水平弛度

$(3)$

$(7)$式を$(3)$式に代入すると、

$$\begin{align*}
D_0&=\frac{4W}{8T}\left(\frac{S}{2}-\frac{TH}{WS}\right)^2\\\\
&=\frac{WS^2}{8T}\left(1-\frac{2TH}{WS^2}\right)^2\\\\
&=D\left(1-\frac{H}{4D}\right)^2[\mathrm{m}]\end{align*}$$

 

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