大地に埋め込まれた球電極間の抵抗

本記事では、大地に埋め込まれた球電極間の抵抗の計算について、例題を通じて解説する。

大地に埋め込まれた球電極間の抵抗:例題

出典:電験二種筆記試験「理論」 昭和44年度問1

$A$,$B$ $2$つの金属球電極があって、$A$は直径60cm, $B$は直径10cmである。

 

両電極を$20\mathrm{m}$隔てて大地に各電極の$1/2$を埋めたとき、電極間の抵抗を求めよ。

ただし、大地の抵抗率$\rho$は均等であって、その値は$\rho=200\Omega\cdot\mathrm{m}$とする。

 

流入・流出電流における各電流密度の関係

※以下、太字はベクトル、そうでないものはスカラー量であるとする。

 

大地の任意の点における電流密度

電極$A,\ B$および両電極から大地に流れる電流の流線を図1に示す。

 

図1 電極$A,\ B$と電流の流線

 

図1の流線は、同じ量の正負の電荷を相対させたとき、その間に生ずる電束分布と対応させて考えることができる。

 

大地において、任意の点における電流密度を$\boldsymbol{J}$を、電極$A$から大地へ放射状に流れる電流による電流密度$\boldsymbol{J_a}$および電極$B$に大地から流入する電流による電流密度$\boldsymbol{J_b}$で表すと、

$$\boldsymbol{J}=\boldsymbol{J_a}+\boldsymbol{J_b}$$

となり、$\boldsymbol{J_a}$と$\boldsymbol{J_b}$のベクトル和になる。

 

地表線上の点Pにおける電流密度

いま、$A,\ B$両電極を結ぶ地表線上の直線$X_1-X_2$を考える。

 

電極$A$から距離$r$の位置にある点$P$における電流密度$\boldsymbol{J_p}$については、流入電流と流出電流の各々の電流密度ベクトルの方向は一致するため、その大きさ$J_p$は、

$$J_p=J_a+J_b$$

 

$J_a$および$J_b$を流入・流出電流$I$,両電極間の距離$D$,および$r$で表すと、

$$\begin{align*}
J_a&=\frac{I}{2\pi r^2}\\\\
J_b&=\frac{I}{2\pi\left(D-r\right)^2}
\end{align*}$$

 

したがって、$J_p$は、

$$J_p=\frac{I}{2\pi r^2}+\frac{I}{2\pi\left(D-r\right)^2}$$

 

 

電極間の電圧からの抵抗値の算出

点$P$から微小距離$dr$の点における電圧降下$dV$は、

$$\begin{align*}
dV&=\rho\cdot dr\cdot J_p\\\\
&=\frac{\rho I}{2\pi}\left\{\frac{1}{r^2}+\frac{1}{\left(D-r\right)^2}\right\}dr
\end{align*}$$

 

次に、両電極間の電圧を$V$, 各電極の半径を$a,\ b$とすれば、積分区間に注意して、

$$\begin{align*}
V&=\int^{D-b}_{a}dV\\\\
&=\int^{D-b}_{a}\frac{\rho I}{2\pi}\left\{\frac{1}{r^2}+\frac{1}{\left(D-r\right)^2}\right\}dr\\\\
&=\frac{\rho I}{2\pi}\left[-\frac{1}{r}+\frac{1}{D-r}\right]^{D-b}_{a}\\\\
&=\frac{\rho I}{2\pi}\left(-\frac{1}{D-b}+\frac{1}{a}+\frac{1}{b}-\frac{1}{D-a}\right)\\\\
\end{align*}$$

 

問題文の値より、$D>>a,\ b$であるから、求める抵抗を$R$とすると、

$$\begin{align*}
V&\fallingdotseq\frac{\rho I}{2\pi}\left(\frac{1}{a}+\frac{1}{b}\right)\\\\
\therefore R&=\frac{V}{I}=\frac{\rho}{2\pi}\left(\frac{1}{a}+\frac{1}{b}\right)
\end{align*}$$

 

問題文の値$\rho=200\Omega-\mathrm{m},\ a=\displaystyle{\frac{60}{2}}=30\mathrm{cm},\ b=\displaystyle{\frac{10}{2}}=5\mathrm{cm}$を代入すれば、

$$R=\frac{200}{2\pi}\left(\frac{1}{30\times10^{-2}}+\frac{1}{5\times10^{-2}}\right)=\underline{742.7\Omega}$$

 

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