接触抵抗の理論

ガス開閉器などの金属導体同士が接触する機器において、接触子間に生ずる接触抵抗による障害が発生する可能性がある。

本記事では接触抵抗がどのように生ずるのかを電磁気学的なモデルを導入して考えていく。

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導体同士の接触面と集中抵抗

2つの導体の接触面

図1のように、2つの平面をもつ金属導体が互いに機械的に加圧された場合の、導体同士の接触面(上から見た図)を考える。

図1 2つの平面の接触面(上から見た図)

図1のモデル[1]では、対向する導体の平面部分を見かけの接触面$A_a$, 導体が加圧されて機械的に接触している部分を加圧面$A_b$で表す。

同図より、加圧されている$A_b$が占める領域は$A_a$全体のごく一部であり、$A_b$の占める割合は導体表面の平坦度に依存する。$A_a$中にある凸部同士が接触することにより$A_b$が形成される。

さらに、導体表面に酸化膜などの被膜が生成されている場合、$A_b$全域の中で導体表面の微細な凹凸の影響により、局所的に圧力が高い部分が存在し、皮膜破壊が起こる。

この状態で導体に電流を流すと、電流は被膜破壊を生じた部分に流れる。

この微細な通電部分を接触点といい、導体内部の周囲から電流が集中する。

接触点において、電流密度は他の部分と比較して大きくなるため、抵抗も増加する。この抵抗を集中抵抗という。

電流集中モデル

前項の集中抵抗の式を導出するため、電流集中のモデルを考える。

理想化された電流集中のモデル[1]として、図2のように2つの半無限導体間に抵抗率がゼロの完全導体球を置く。

図2 電流集中モデル

導体1から導体2に流れる電流は、図2のように導体球を中心として放射状に集中する。

ここで導体1において、導体球の中心から半径$r~r+dr$の間にある半球部分の抵抗$dR$は、

$$dR=\frac{\rho}{2\pi r^2}dr ・・・(1)$$

ここで、$\rho$は導体の抵抗率である。

$(1)$式より、導体球の表面から導体1の無限遠までの導体内全域で生ずる集中抵抗$R$は、

$$R=\frac{\rho}{2\pi}\int^{\infty}_{b}\frac{dr}{r^2}=\frac{\rho}{2\pi b} ・・・(2)$$

導体内の電流集中部分における電流分布は、完全導体球に電荷を与えた場合に現れる電気力線の分布と相似であるため、集中抵抗$R$は導体の静電容量$C$に反比例する(電流は抵抗に反比例し、電荷は静電容量に比例するため)。

ここで、半径$a$の導体円板および半径$b$の導体球を考え、静電容量をそれぞれ$C_a$および$C_b$とすると、

$$\begin{cases}
C_a&=8\epsilon_0 a\\
C_b&=4\pi\epsilon_0 b
\end{cases} ・・・(3)$$

ここで、$\epsilon_0$は真空における誘電率である。

このとき、導体円板と球の電荷および電位を同じであると設定すれば、各導体の半径について、$(3)$式より、

$$2a=\pi b ・・・(4)$$

という関係が導かれる。

したがって、図2の半径$b$の導体球を半径$a$の円形導体に置き換えたとすれば、その微小面における集中抵抗$R_a$は$(2),\ (4)$式より、

$$R_a=\frac{\rho}{4a} ・・・(5)$$

となる。

集中抵抗$R_a$は互いに接触する2つの導体それぞれに生ずるので、抵抗率が同じ金属導体から成る一組の接触子に生ずる集中抵抗は、各導体抵抗の直列接続となり、$2R_a$で示される。

接触点の集中抵抗

一方、半径$a$の円形導体面が各半無限導体面に密着している(=接触点となっている)として、接触面積を$S$とすると、集中抵抗$R_c$は$(5)$式および$S=4\pi a^2$の関係を用いて、

$$R_c=\frac{\rho\sqrt{\pi}}{4\sqrt{S}} ・・・(6)$$

次に、図1のような平面同士の接触部分における接触状態のように、大きさの異なる多数の接触点が点在する場合の集中抵抗を考える。

各接触点の電流の相互作用がないと仮定すれば、$N$個の接触点がある場合の集中抵抗$R_{cN}$は、1つの接触点に生ずる抵抗$R_c$の$N$並列接続にて表すことができると考えられるので、$(6)$式より、

$$R_{cN}=\frac{1}{\displaystyle{\sum_{k=1}^{N}\left(\frac{\rho}{4a_k}\right)^{-1}}} ・・・(7)$$

$(7)$式において、各接触点の半径がすべて$a$で等しいとすれば、

$$R_cN=\frac{\rho}{4aN} ・・・(8)$$

となり、接触点の数$N$に反比例する。

また、各接触点の面積を総和した総接触面積を$S_a=S\times N=\pi aN$とすれば、集中抵抗$R_{cN}$は$(8)$式より、

$$R_{cN}=\frac{\rho\sqrt{\pi}}{4\sqrt{SN}} ・・・(9)$$

で表される。

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接触点間の相互作用を考慮した場合

$N$個の接触点がある場合の集中抵抗を$(9)$式にて導出したが、実際には各接触点が近接した状態において、各点に流れる電流による磁束が相互作用を及ぼし、集中抵抗は$(9)$式より大きくなると考えられる。

一般的には、異なる大きさの接触点が図3左のように不規則に分布しているが、簡単のため同図右のように半径$a$の大ささの等しい円形接触点が格子状に分布しているものとみなすモデル[1]を導入する。

図3 接触点の格子モデル

このとき、接触抵抗の算定式は次式で与えられる。

$$R_{cN}=\frac{\rho}{2\pi Na}\tan^{-1}\frac{\sqrt{l^2-a^2}}{a}-\frac{0.6\rho\sqrt{l^2-a^2}}{4Nl^2}+\frac{\rho}{4r} ・・・(10)$$

ここで、$r$は見かけの接触面の半径、$l$は格子状に配列された接触点の間隔の1/2である。

$(10)$式より、半径$a$に対し$l$が十分に大きい、すなわち各接触点同士が十分に離れており相互作用が及ぼしえない場合は、(この場合は$r$も十分に大きいので)第2項および第3項はゼロに近づき、$(10)$式は$(8)$式に等しくなる。

逆に、格子同士が相互に密着した状態、すなわち$l=a$の場合は、$(10)$式は第3項のみによって与えられる。

皮膜抵抗

金属導体の表面に酸化膜などの皮膜が形成された場合、電流は皮膜を介して流れる。

皮膜の抵抗率は金属導体よりも一般的に大きく、この部分の抵抗を皮膜抵抗という。

皮膜抵抗$R_r$の式は次式で与えられる。

$$R_r=¥frac{\rho_r\cdot D_r}{\pi a^2} ・・・(11)$$

ここで、$\rho_r$は皮膜の抵抗率、$D_r$は皮膜の厚さ、$a$は接触点の半径である。

接触抵抗は、集中抵抗$R_{cN}$と皮膜抵抗$R_r$の和で表される。

接触抵抗に起因する問題

通電路に大電流が通電されると、接触面の形状によっては前項までに述べてきた接触抵抗によるジュール熱が発生し、導体の機械的性質の変化および溶融を引き起こす可能性がある。

特に遮断器などの導体を開閉する接触子をもつ機器において、接触抵抗による障害は機器の動作ひいては接続されている系統全体への影響を及ぼしかねない。

近年の開閉器の性能向上に伴い、通電時および接触性能に関する研究も成されている。

参考文献

[1] R.Holm: “Electric Conlacts”, 4th.Edit., Springer, New York (1967)

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