対称座標法における正相成分と逆相成分

本記事では、対称座標法における正相成分と逆相成分について考察する。

零相成分について

本記事では、対称座標法における零相成分について考察する。不平衡かつ和がゼロでない三相電気量ベクトル図1のように、不平衡かつ和がゼロにならない(閉じていない)三相電気量ベクトルを考える。同図では、三相電圧$\dot{V}_a,[…]

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不平衡かつ和がゼロでない三相電気量ベクトル

図1のように、不平衡かつ和がゼロにならない(閉じていない)三相電気量ベクトルを考える。

同図では、三相電圧$\dot{V}_a,\ \dot{V}_b,\ \dot{V}_c$について考えている。

 

図1 不平衡かつ和がゼロでない三相電気量ベクトル

 

零相成分」の記事において、図1のような三相電気量ベクトル$\dot{V}_a,\ \dot{V}_b,\ \dot{V}_c$は、図2のように不平衡かつ和がゼロである三相電気量ベクトル($\dot{V’}_a,\ \dot{V’}_b,\ \dot{V’}_c$)同一の大きさおよび向きの零相成分ベクトル($\dot{V}_0\times3$)として分離できることを示した。

 

図2 「不平衡かつ和がゼロでない三相電気量ベクトル」と零相成分の関係

 

正相成分

三相電気量ベクトルの分割

図2のベクトルから、零相成分$\dot{V}_0$を取り除いた不平衡かつ和がゼロである三相電気量ベクトル$\dot{V’}_a,\ \dot{V’}_b,\ \dot{V’}_c$について考える。これらを図3に示す。

 

図3  不平衡かつ和がゼロである三相電気量ベクトル

 

図3の三相電気量ベクトルの各相成分をそれぞれ3等分に分割すると、図4のようになる。

 

図4 不平衡かつ和がゼロである三相電気量ベクトル(各相を3等分)

 

各ベクトルの置き換え

ここで、図4のうち3本の$\displaystyle{\frac{1}{3}\dot{V’}_a}$について考えてみる。

 

まず、$\dot{V’}_a,\ \dot{V’}_b,\ \dot{V’}_c$はベクトル和がゼロ、すなわち、

$$\dot{V’_a}+\dot{V’_b}+\dot{V’_c}=0$$

であることから、$\displaystyle{\frac{1}{3}\dot{V’}_a}$について、

$$\frac{1}{3}\dot{V’_a}=-\frac{1}{3}\dot{V’_b}-\frac{1}{3}\dot{V’_c}$$

として、図5のように置き換えることができる。

 

図5 $\displaystyle{\frac{1}{3}\dot{V’}_a}$ベクトルの置き換え

 

次に、位相を$120^\circ$回転させる作用をもつベクトルオペレータ$a$について、

$$1+a^2+a=0\Rightarrow-1=a^2+a$$

であることから、 図5の$\displaystyle{-\frac{1}{3}\dot{V’}_b}$, $\displaystyle{-\frac{1}{3}\dot{V’}_c}$について、$a$を用いて、

$$\begin{align*}
-\frac{1}{3}\dot{V’}_b=\frac{1}{3}a^2\dot{V’}_b+\frac{1}{3}a\dot{V’}_b\\\\
-\frac{1}{3}\dot{V’}_c=\frac{1}{3}a^2\dot{V’}_c+\frac{1}{3}a\dot{V’}_c
\end{align*}$$

として、図6のように置き換えることができる。

 

図6 $-\displaystyle{\frac{1}{3}\dot{V’}_b}$および$-\displaystyle{\frac{1}{3}\dot{V’}_c}$ベクトルの置き換え

 

上記をまとめると、結局、3本の$\displaystyle{\frac{1}{3}\dot{V’}_a}$は

$$3\times\frac{1}{3}\dot{V’}_a=\frac{1}{3}\left(\dot{V’}_a+a\dot{V’}_b+a^2\dot{V’}_c\right)+\frac{1}{3}\left(\dot{V’}_a+a^2\dot{V’}_b+a\dot{V’}_c\right) ・・・(1)$$

として、図7のように置き換えることができる。

 

図7 $\dot{V’}_a$ベクトルの置き換え

 

また、$\dot{V’}_b$および$ \dot{V’}_c$についても同様に、ベクトルを置き換えた結果を$(2),\ (3)$式および図8,図9に示す。

$$3\times\frac{1}{3}\dot{V’}_b=\frac{1}{3}\left(a^2\dot{V’}_a+\dot{V’}_b+a\dot{V’}_c\right)+\frac{1}{3}\left(a\dot{V’}_a+\dot{V’}_b+a^2\dot{V’}_c\right) ・・・(2)$$

 

図8 $\dot{V’}_b$ベクトルの置き換え

 

$$3\times\frac{1}{3}\dot{V’}_c=\frac{1}{3}\left(a\dot{V’}_a+a^2\dot{V’}_b+\dot{V’}_c\right)+\frac{1}{3}\left(a^2\dot{V’}_a+a\dot{V’}_b+\dot{V’}_c\right) ・・・(3)$$

 

図9 $\dot{V’}_c$ベクトルの置き換え

 

正相成分ベクトル

次に、図7~9の置き換え後のベクトルのうち、「+」記号の左側のグループ(これらのベクトルはちょうど同じような方向を向いているベクトルの組み合わせになっている)を合成する。

 

図7について、左側のグループの合成後のベクトルを正相成分$\dot{V}_1$として定義すると、

$$\dot{V}_1=\frac{1}{3}\left(\dot{V’}_a+a\dot{V’}_b+a^2\dot{V’}_c\right) ・・・(4)$$

 

$(4)$式を用いると、$(1)$~$(3)$式の第1項は、すべて$\dot{V_1}$およびベクトルオペレータ$a$を用いた$\dot{V_1}$の回転ベクトルで表すことができる。

$$\begin{align*}
\frac{1}{3}\left(\dot{V’}_a+a\dot{V’}_b+a^2\dot{V’}_c\right)&=\dot{V}_1\\\\
\frac{1}{3}\left(a^2\dot{V’}_a+\dot{V’}_b+a\dot{V’}_c\right)&=\frac{1}{3}a^2\left(\dot{V’}_a+a\dot{V’}_b+a^2\dot{V’}_c\right)=a^2\dot{V}_1\\\\
\frac{1}{3}\left(a\dot{V’}_a+a^2\dot{V’}_b+\dot{V’}_c\right)&=\frac{1}{3}a\left(\dot{V’_a}+a\dot{V’_b}+a^2\dot{V’_c}\right)=a\dot{V}_1
\end{align*}$$

 

また、このことをベクトル図で表すと図10となる。

 

図10 正相成分ベクトル

 

図10より、この$\dot{V}_1$および$\dot{V}_1$の回転ベクトルの組み合わせは、平衡かつ和がゼロとなる3本のベクトルである。

 

すなわち(現時点では)、

不平衡かつ和がゼロである三相電気量ベクトル$\dot{V’}_a,\dot{V’}_b,\dot{V’}_c$
平衡かつ和がゼロである正相成分ベクトル$\dot{V_1}$およびその回転ベクトル???

といえる。

 

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逆相成分

「足し合わせるベクトル」の条件

図7~9において、「+」記号の右側のグループがまだ残っているが、その前に「平衡かつ和がゼロである3本のベクトル」に何を足し合わせれば、求めるべき「不平衡かつ和がゼロである三相電気量ベクトル」になるのかを考える。

 

$(1)$「合成後の和がゼロ」である条件を崩さないためには、足し合わせるベクトルも和がゼロである必要がある。

$(2)$「合成後のベクトルが不平衡になる」条件を崩さないためには、足し合わせるベクトルの組は平衡ではあるが、足される側のベクトルの組と相回転の方向が逆である必要がある

なぜならば、相回転の方向が同じだと、合成したベクトルは平衡してしまうからである。

 

$(1)$および$(2)$の条件を同時に満たすベクトルとは、

「平衡かつ和がゼロであり、さらに足される側の『平衡かつ和がゼロである3本のベクトル 』とは相回転の方向が異なるベクトル」

ということになる。

 

逆相成分ベクトル

では、図7~9の置き換え後のベクトルのうち、右側のグループを合成する。

 

この合成後のベクトルを逆相成分$\dot{V}_2$として定義し、式で表すと、

$$\dot{V}_2=\frac{1}{3}\left(\dot{V’}_a+a^2\dot{V’}_b+a\dot{V’}_c\right) ・・・(5)$$

 

$(5)$式を用いると、$(1)$~$(3)$式の第2項はすべて$\dot{V}_2$およびベクトルオペレータ$a$を用いた$\dot{V_2}$の回転ベクトルで表すことができる。

$$\begin{align*}
\frac{1}{3}\left(\dot{V’}_a+a^2\dot{V’}_b+a\dot{V’}_c\right)&=\dot{V}_2\\\\
\frac{1}{3}\left(a\dot{V’}_a+\dot{V’}_b+a^2\dot{V’}_c\right)&=\frac{1}{3}a\left(\dot{V’}_a+a^2\dot{V’}_b+a\dot{V’}_c\right)=a\dot{V}_2\\\\
\frac{1}{3}\left(a^2\dot{V’}_a+a\dot{V’}_b+\dot{V’}_c\right)&=\frac{1}{3}a^2\left(\dot{V’}_a+a^2\dot{V’}_b+a\dot{V’}_c\right)=a^2\dot{V}_2
\end{align*}$$

 

また、このことをベクトル図で表すと図11となる。

 

図11 逆相成分ベクトル

 

図11より、$\dot{V}_2$および$\dot{V}_2$の回転ベクトルの組み合わせは、平衡かつ和がゼロであり、さらに足される側の『平衡かつ和がゼロである3本のベクトル 』とは相回転の方向が異なるベクトルの条件を満たしている。

 

零相・正相・逆相成分の合成

ここまでの検討より、$(1)$~$(3)$式は正相成分$\dot{V_1}$および逆相成分$\dot{V_2}$で置き換えることができて、

$$\begin{cases}
\dot{V’}_a&=\dot{V}_1+\dot{V}_2 &・・・(1)’\\\\
\dot{V’}_b&=a^2\dot{V}_1+a\dot{V}_2 &・・・(2)’\\\\
\dot{V’}_c&=a\dot{V}_1+a^2\dot{V}_2  &・・・(3)’
\end{cases}$$

 

$(1)’$~$(3)’$より、三相電気量ベクトル$\dot{V}_a,\ \dot{V}_b,\ \dot{V}_c$を$\dot{V_1}$および$\dot{V_2}$の合成ベクトルとして表した結果を図12に示す。

 

図12 正相成分と逆相成分の合成

 

図12より、今回の考察をまとめると、

不平衡かつ和がゼロである三相電気量ベクトル$\dot{V’}_a,\dot{V’}_b,\dot{V’}_c$
平衡かつ和がゼロである正相成分ベクトル$\dot{V_1}$およびその回転ベクトル平衡かつ和がゼロであり、さらに$\dot{V_1}$の組とは相回転の方向が異なる逆相成分ベクトル$\dot{V_2}$およびその回転ベクトル

 

結局、「零相成分」の記事と組み合わせた結論としては、

不平衡かつベクトル和がゼロでない三相電気量ベクトル$\dot{V’}_a,\dot{V’}_b,\dot{V’}_c$
同一の大きさおよび向きの零相成分ベクトル$\dot{V}_0$ 
+平衡かつベクトル和がゼロである正相成分ベクトル$\dot{V}_1$
平衡かつベクトル和がゼロであり、かつ$\dot{V}_1$とは相回転の方向が異なる逆相成分ベクトル$\dot{V}_2$

 

なお、$\dot{V}_0$, $\dot{V}_1$, $\dot{V}_2$の定義式は(詳細な式の導出は「対称座標法変換の基本式」参照)、

$$\begin{cases}
\dot{V}_0=\displaystyle{\frac{1}{3}}\left(\dot{V}_a+\dot{V}_b+\dot{V}_c\right)\\\\
\dot{V}_1=\displaystyle{\frac{1}{3}}\left(\dot{V}_a+a \dot{V}_b+a^2\dot{V}_c\right)\\\\
\dot{V}_2=\displaystyle{\frac{1}{3}}\left(\dot{V}_a+a^2 \dot{V}_b+a\dot{V}_c\right)
\end{cases}$$

 

最後に、$\dot{V}_0,\ \dot{V}_1,\ \dot{V}_2$の各成分をすべて合成すると、図13のようになる。

同図より、任意の三相電気量ベクトル$\dot{V}_a,\ \dot{V}_b,\ \dot{V}_c$は、$\dot{V}_0,\ \dot{V}_1,\ \dot{V}_2$各成分の合成になっていることが分かる。

 

図17 零相・正相・逆相成分の合成

 

なお、今回の考察は三相電圧ベクトル$\dot{V}_a,\ \dot{V}_b,\ \dot{V}_c$を扱ったが、電流についても同様のことがいえる。

 

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