変流器の二次開放時の異常電圧(二次開路電圧)

本記事では、変流器の二次側を開放した場合の異常電圧(二次開路電圧)について解説する。





変流器の二次側開放時に発生する現象

変流器の等価回路を図1に示す。

同図は主に二次側のみの電気量・回路定数を記載しており、また簡単のためすべて二次側に換算した値とする。

 

図1 変流器の等価回路(左:負担インピーダンス$\dot{Z}_\mathrm{b}$接続時、右:二次側開放時)

 

変流器には、通常図1左のような負担インピーダンス$\dot{Z}_\mathrm{b}$(保護リレーや計器のインピーダンス)が接続されている。

$\dot{Z}_\mathrm{b}$は通常小さな値のため、二次誘起電圧$\dot{E}_2$(≒二次端子電圧$\dot{V}_2$)は低い値(数$\mathrm{V}$程度)となる。

 

一方、図1右のように変流器の二次側を開放してしまうと、二次電流$\dot{I}_2$は流れず、一次電流$\dot{I}_1$はすべて励磁電流$\dot{I}_0$として励磁回路に流れ込む。

このとき、鉄心が飽和状態になると二次誘起電圧$\dot{E}_2$は過大となり、異常電圧となる。

このときの$\dot{E}_2$を二次開路電圧という。

 

二次開路電圧は二次巻線および計器類の絶縁破壊の原因となり、また鉄心飽和時の鉄損が増大して温度上昇が過大になることにより、巻線が焼損するおそれもある。

通常、変流器を含む変圧器は一次側と二次側でアンペアターン・キャンセルの原理によって、発生する起磁力をほとんど打ち消し合っている(励磁に用いる起磁力は、このうち$1\%$程度となる)。

もし図1右のように二次側が開放されてしまうと、一次側で発生する起磁力が打ち消されず、すべて励磁のために使用される。

この大きすぎる起磁力のために鉄心が飽和し、二次誘起電圧$\dot{E}_2$は過大となる。

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二次開路電圧の波形

変流器の二次誘起電圧の大きさ$E_2$は、二次巻線の巻回数$N_2$,磁束$\phi$を用いて、次の式で求めることができる。

$$E_2=-N_2\frac{\mathrm{d}\phi}{\mathrm{d}t} ・・・(1)$$

 

$(1)$式より、二次誘起電圧$E_2$は磁束$\phi$の時間変化に依る。

 

ここで、変流器の二次側開放により鉄心が飽和した場合、そのヒステリシス曲線に基づき、一次電流$I_1$により発生する磁束$\phi$は図2のように偏平になり、矩形波に近い波形になる。

このような$\phi$の波形となる場合、その時間変化$\displaystyle{\frac{\mathrm{d}\phi}{\mathrm{d}t}}$は正負が逆転する零点を通るタイミングで非常に大きくなるため、二次開路電圧$E_2$の波形は図2のように波高値が大きな急峻波になる。

 

図2 変流器の二次開路電圧の波形

 

図2のように二次開路電圧$E_2$は波高値が大きく、尖った波形となるが、その値をとる時間が短いため、実際のところその実効値や平均値はそれほど大きくはならない。

しかし、絶縁破壊は電圧の波高値で決まるため、注意を要する。

実際に二次開路電圧を実測したこちらの文献では、二次開路電圧の波高値はその平均値の数倍の大きさとなっている。

 

 

二次開路電圧を求める理論式

変流器の二次開路電圧$E_2$は$(1)$式によって求められるが、ここでは鉄心および巻線の形状と$E_2$との関係を考える。

 

図3のように、変流器を模擬したモデルとして、環状鉄心に巻かれた巻回数$N_1,\ N_2$の2つの巻線(無端ソレノイド)について考える。

同図では、漏れ磁束は考慮しないものとする。

 

図3 無端ソレノイド

 

図3の鉄心の透磁率を$\mu$,平均磁路長を$l$,断面積を$S$とすると、その磁気抵抗$R_\mathrm{m}$は、

$$R_\mathrm{m}=\frac{l}{\mu S} ・・・(2)$$

 

$(2)$式より、一次電流$I_1$により発生する磁束$\phi$は、磁気回路のオームの法則より、

$$\begin{align*}
\phi&=\frac{N_1I_1}{R_\mathrm{m}}\\\\
&=\frac{\mu N_1SI_1}{l} ・・・(3)
\end{align*}$$

 

ここで、図3において二次巻線への鎖交磁束は$N_2\phi$であるため、一次-二次巻線間の相互インダクタンス$M$は、$(3)$式より、

$$\begin{align*}
M&=\frac{N_2\phi}{I_1}\\\\
&=\frac{\mu N_1N_2S}{l} ・・・(4)
\end{align*}$$

 

$(1),\ (4)$式および$N_2\phi=MI_1$の関係から、二次開路電圧$E_2$は、

$$\begin{align*}
E_2&=-M\frac{\mathrm{d}I_1}{\mathrm{d}t}\\\\
&=-\frac{\mu N_1N_2S}{l}\times\frac{\mathrm{d}I_1}{\mathrm{d}t} ・・・(5)
\end{align*}$$

 

$(5)$式が二次開路電圧の理論式となる。

 

$(5)$式より、二次巻線の巻回数$N_2$が大きいほど、また鉄心断面積$S$が大きいほど、$E_2$は高い値をとる。

通常、$N_2$および$S$が大きいと変流器の誤差は小さくなるため、誤差が小さい変流器ほど二次開路電圧は高くなると言える。

(詳細は後日別記事にて解説する)

$(5)$式のなかで、鉄心の透磁率$\mu$は鉄心の飽和の程度によって変化するため、実際に発生する$E_2$を理論式で求めるのは難しいところがある。

そこで、二次開路電圧の概略値を求める際の式として、日本電機工業会が発行する「JEM-TR129 計器用変成器適用指針」では、実測値を基に定められた次の実験式を提示している。

$$E_2=k\left(\frac{N_1I_1}{l}\right)^a\times N_2\times S$$

上式で、$k,\ a$は鉄心の構造から決まる定数、他の量は$(5)$式ならびに図3と同じ。

 

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参考文献