変流器の誤差特性とその発生要因

本記事では、変流器の誤差特性と、誤差が発生する要因について理論的に解説する。





変流器の誤差を表す指標

変流器(CT)は、線路の大電流を、計器または保護リレーが取り込むための適切な大きさに変成する役割がある。

本項では、変流器の性能を表す「誤差」に関する指標を解説する。

変流比

変流器において、銘板に記載される定格一次電流と定格二次電流の比を、公称変流比$K_\mathrm{n}$という。

一方、実際に流れる一次電流と二次電流の比をとったものは真の変流比$K_\mathrm{c}$として表す。

 

比誤差

公称変流比と真の変流比の間には後述の通り差異が生じ、この差異の程度を比誤差という。

比誤差$\varepsilon[\%]$は、$K_\mathrm{n}$および$K_\mathrm{c}$を用いて、次のように表される。

$$\varepsilon=\frac{K_\mathrm{n}-K_\mathrm{c}}{K_\mathrm{c}}\times100[\%] ・・・(1)$$

 

位相誤差

変流器の一次電流と二次電流の位相差を角度で表したものを位相誤差、または単に位相角という(導出式は後述)。

変流器で「誤差」といえば、比誤差とこの位相誤差のことを示す。

 

比補正

公称変流比$K_\mathrm{n}$を真の変流比$K_\mathrm{c}$に近づけるため、施すべき補正の大きさを比補正という。

比補正$\alpha[\%]$は、$K_\mathrm{n}$および$K_\mathrm{c}$を用いて、次の式で表される。

$$\alpha=\frac{K_\mathrm{c}-K_\mathrm{n}}{K_\mathrm{n}}\times100[\%] ・・・(2)$$

 

なお、比誤差$\varepsilon$および比補正$\alpha$の間には、次の関係が成り立つ。

$$\begin{align*}
\left(1+\frac{\varepsilon}{100}\right)\left(1+\frac{\alpha}{100}\right)&=\frac{K_\mathrm{c}+K_\mathrm{n}-K_\mathrm{c}}{K_\mathrm{c}}\cdot\frac{K_\mathrm{n}+K_\mathrm{c}-K_\mathrm{n}}{K_\mathrm{n}}\\\\
&=\frac{K_\mathrm{n}}{K_\mathrm{c}}\cdot\frac{K_\mathrm{c}}{K_\mathrm{n}}\\\\
&=1
\end{align*}$$

 

$\varepsilon$および$\alpha$が十分小さいとき、上式より次の関係が導ける。

$$\varepsilon\fallingdotseq-\alpha ・・・(3)$$

 

導出は下記となる。

$$\begin{align*}
\left(1+\frac{\varepsilon}{100}\right)\left(1+\frac{\alpha}{100}\right)&=1+\frac{\alpha}{100}+\frac{\varepsilon}{100}\left(1+\frac{\alpha}{100}\right)\\\\
&=1\\\\
\frac{\varepsilon}{100}&=-\frac{\displaystyle{\frac{\alpha}{100}}}{1+\displaystyle{\frac{\alpha}{100}}}\\\\
&=\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \left(-\frac{\alpha}{100}\right)^n\\\\
&=-\frac{\alpha}{100}+\left(-\frac{\alpha}{100}\right)^2+\left(-\frac{\alpha}{100}\right)^3+\cdots\\\\
&\fallingdotseq-\frac{\alpha}{100}\\\\
\therefore\varepsilon&\fallingdotseq-\alpha
\end{align*}$$

 

変流器のベクトル図と誤差(巻き戻しがない場合)

変流器の等価回路

変流器の等価回路(二次換算)を図1に示す。

同図の等価回路は、本記事で考える電気量および回路定数のみを記載している。

図1 変流器の等価回路(二次換算)

 

計器用変成器の二次側に接続される負荷(計器、保護リレーなど)を負担(単位:$[\mathrm{V\cdot A}]$)という。

図1では、変流器に負担インピーダンス$\dot{Z}_\mathrm{b}$が接続されている。

 

実際の変流器では、巻数比(二次巻線の巻数/一次巻線の巻数)を$N$とすると、図1の一次電流(二次換算)$\displaystyle{\frac{\dot{I}_1}{N}}$,二次電流$\dot{I}_2$および励磁電流$\dot{I}_{02}=\displaystyle{\frac{\dot{I}_{01}}{N}}$(励磁電流の添字は一次側・二次側に換算した量であることを示す)の間には、キルヒホッフの第一法則より、次の関係が成り立つ。

$$\frac{\dot{I}_1}{N}=\dot{I}_2+\dot{I}_{02} ・・・(4)$$

 

なお、同図内のその他の電気量・回路定数は、次の通り。

  • $\dot{E}_2$:二次誘導起電力
  • $\dot{V}_2$:二次端子電圧
  • $\dot{Z}_0$:励磁インピーダンス
  • $\dot{Z}_2=r_2+jx_2$:二次巻線インピーダンス($r_2$:巻線抵抗、$x_2$:漏れリアクタンス)

 

変流器のベクトル図

誤差のない理想的な変流器の場合、一次電流$\dot{I}_1$および二次電流$\dot{I}_2$との間には、公称変流比$K_\mathrm{n}$を用いると次の関係が成り立つ。

$$\dot{I}_1=K_\mathrm{n}\dot{I}_2 ・・・(5)$$

 

一方、図1の等価回路では、$\dot{I}_1$および$\dot{I}_2$のほか、励磁電流$\dot{I}_{02}$が存在するので、実際の電流の関係式は$(4)$式のようになる。

このことからわかるように、一次電流・二次電流のほか、励磁電流$\dot{I}_{02}$が存在することにより実際の電流比と公称変流比$K_\mathrm{n}$とずれが生じ、これが誤差の主要因となる。

通常の変圧器の場合、「励磁電流は無視できるほど小さい」として一次電流≒二次電流とすることも多い。

一方で変流器の場合、一次電流のうち励磁電流が占める割合が大きくなり無視できない。

この励磁電流が誤差の主要因となり、計測の精度を向上させるために励磁電流を考慮することが重要になってくる。

 

次に、励磁電流$\dot{I}_{02}$により主磁束$\mathit{\Phi}$が発生し、位相が$\displaystyle{\frac{\pi}{2}}$異なる二次誘導起電力$\dot{E}_2$が誘起される。

この二次誘導起電力$\dot{E}_2$と二次電流$\dot{I}_2$,二次端子電圧$\dot{V}_2$の関係は、図1の等価回路より、

$$\begin{align*}
\dot{E}_2&=\dot{Z}_2\dot{I}_2+\dot{V}_2\\\\
&=\left(r_2+jx_2\right)\dot{I}_2+\dot{V}_2 ・・・(6)
\end{align*}$$

 

さらに、励磁電流$\dot{I}_{02}$は主磁束を発生させる成分$\dot{I}_\mathrm{m2}$と鉄損を発生させる成分$\dot{I}_\mathrm{c2}$で構成されており、

$$\dot{I}_{02}=\dot{I}_\mathrm{c2}+\dot{I}_\mathrm{m2} ・・・(7)$$

 

$(4),\ (6),\ (7)$式より、図1の等価回路の電気量について、二次誘導起電力$\dot{E}_2$を位相の基準としたベクトル図を作成すると、図2のようになる。

 

図2 変流器のベクトル図

 

図2において、各位相角については、次の通り。

  • $\phi_\mathrm{b}$:$\dot{V}_2$と$\dot{I}_2$の位相差(負担インピーダンス$\dot{Z}_\mathrm{b}$による遅れ角)
  • $\phi_\mathrm{2b}$:$\dot{E}_2$と$\dot{I}_2$の位相差(二次側のインピーダンス$\dot{Z}_2+\dot{Z}_\mathrm{b}$による遅れ角)
  • $\gamma$:$\dot{E}_2$と$\dot{I}_{02}$の位相差(励磁インピーダンス$\dot{Z}_0$による遅れ角;鉄損角
  • $\theta$:位相誤差

 

変流器の比誤差

図2のベクトル図において、一次電流$\displaystyle{\frac{\dot{I}_1}{N}}$を斜辺とした直角三角形(青の網掛け部分)を誤差三角形という。

ここで、二次電流$\dot{I}_2$を位相の基準とみたとき($\dot{I}_2=I_2$)の誤差三角形を図3に示す。

 

図3 変流器の誤差三角形

 

図3より、$(4)$式を変形すると、

$$\begin{align*}
\frac{\dot{I}_1}{N}&=\dot{I}_2+\dot{I}_{02}\\\\
\dot{I}_1&=N\dot{I}_2+\dot{I}_{01}\\\\
&=NI_2+I_{01}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)+jI_{01}\sin\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right) ・・・(8)
\end{align*}$$

 

ここで、$\theta$は通常非常に小さいため、$(8)$式は次のようになる。

$$I_1\fallingdotseq NI_2+I_{01}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right) ・・・(9)$$

 

$(9)$式より、真の変流比$K_\mathrm{c}=\displaystyle{\frac{I_1}{I_2}}$は、

$$\begin{align*}
K_\mathrm{c}&=\frac{I_1}{I_2}\\\\
&=N+\frac{I_{01}}{I_2}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)\\\\
\therefore N-K_\mathrm{c}&=-\frac{I_{01}}{I_2}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right) ・・・(10)
\end{align*}$$

 

(後述するような)巻き戻しがない変流器の場合、巻数比$N$は公称変流比$K_\mathrm{n}$に等しく$N=K_\mathrm{n}$である。

このときの比誤差$\varepsilon$は、$(1),\ (10)$式より、

$$\begin{align*}
\varepsilon&=\frac{K_\mathrm{n}-K_\mathrm{c}}{K_\mathrm{c}}\times100\\\\
&=-\frac{\displaystyle{\frac{I_{01}}{I_2}}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)}{\displaystyle{\frac{I_1}{I_2}}}\times100\\\\
&=-\frac{I_{01}}{I_1}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)\times100 ・・・(11)
\end{align*}$$

 

$(11)$式が巻き戻しがない場合の変流器の比誤差の一般式になる。

 

位相誤差

次に、図3の誤差三角形を用いて、一次電流と二次電流の位相差である位相誤差$\theta$を求める。

 

図3より、$\tan\theta$は、

$$\tan\theta=\frac{I_{01}\sin\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)}{NI_2+I_{01}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)} ・・・(12)$$

 

ここで、$\theta$が十分に小さいとき、$\theta\fallingdotseq\tan\theta$が成り立つため、$(9)$式も合わせると$(12)$式は、

$$\theta\fallingdotseq\frac{I_{01}}{I_1}\sin\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right) ・・・(13)$$

 

$\theta$は通常非常に小さいため、角度の単位$[^\circ]$の60分の1の値を示す単位$[分]$を用いて、$(13)$式を次のように表すこともある。

$$\begin{align*}
\theta&=\frac{I_{01}}{I_1}\sin\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)[\mathrm{rad}]\times\left(60\times\frac{360}{2\pi}\right)[\mathrm{分/\mathrm{rad}}]\\\\
&\fallingdotseq\frac{I_{01}}{I_1}\sin\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)\times3438[分] ・・・(13)’
\end{align*}$$

 

 

巻き戻しをした変流器の誤差

$(11)$式で表される変流器の誤差を小さくするために、二次巻線の巻数を電流値から決まる値よりも減らすことがある。

この方法を巻き戻し(back turn)という。

 

公称変流比$K_\mathrm{n}$から決まる巻数を基準として、どの程度巻き戻しを行うかを示す巻き戻し率を$\beta[\%]$とすると、その際の巻数比$N$は次式となる。

$$N=K_\mathrm{n}\left(1-\frac{\beta}{100}\right) ・・・(14)$$

実際に変流器を設計する際には、$\beta$ではなく巻き戻す回数(整数)を決める。

例えば$100\mathrm{A}/5\mathrm{A}$の変流器であれば、$K_\mathrm{n}=\displaystyle{\frac{100}{5}}=20$であるため、通常であれば例えば一次側$15$ターン/二次側$300$ターンとなる。

ここで巻き戻しを$1$ターン行うとすると、一次側$15$ターン/二次側$299$ターンとなり、巻き戻し率$\beta$は、

$$\beta=\left(1-\frac{299}{300}\right)\times100\fallingdotseq0.33\%$$

となる。

 

$(14)$式を$(10)$式に代入し、巻き戻しがある場合の比補正$\alpha_{\beta}$を$(2)$式に基づいて求めると、

$$\begin{align*}
K_\mathrm{c}-N&=\left(K_\mathrm{c}-K_\mathrm{n}\right)+\frac{\beta}{100}K_\mathrm{n}\\\\
&=\frac{I_{01}}{I_2}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)\\\\
K_\mathrm{c}-K_\mathrm{n}&=\frac{I_{01}}{I_2}\cos\left(\gamma-\phi_\mathrm{2b}\right)-\frac{\beta}{100}K_\mathrm{n}\\\\
\therefore \alpha_{\beta}&=\frac{K_\mathrm{c}-K_\mathrm{n}}{K_\mathrm{n}}\\\\
&=\frac{I_{01}}{I_1}\cos\left(\gamma-\phi_{2b}\right)-\beta ・・・(15)
\end{align*}$$

 

したがって、巻き戻しがある場合の比誤差$\varepsilon_{\beta}$は、$(3),\ (15)$式より、

$$\begin{align*}
\varepsilon_{\beta}&\fallingdotseq-\alpha_{\beta}\\\\
&=-\frac{I_{01}}{I_1}\cos\left(\gamma-\phi_{2b}\right)+\beta ・・・(16)
\end{align*}$$

 

$(16)$式より、$\beta$に対応する回数だけ二次巻線を巻き戻すことによって、比誤差$\varepsilon_{\beta}$は改善することがわかる。

 

変流器の誤差を決める要因

図1の等価回路および図2のベクトル図より、

$$\begin{cases}
\dot{I}_2&=\displaystyle{\frac{\dot{E}_2}{\dot{Z}_2+\dot{Z}_\mathrm{b}}}\\\\
\displaystyle{\frac{\dot{I}_{01}}{N}}&=\displaystyle{\frac{\dot{E}_2}{\dot{Z}_0}}
\end{cases} ・・・(17)$$

 

$(17)$式も合わせると、結局ある$I_1,\ E_2$の値に対し、$(13)$および$(16)$式で決まる変流器の誤差を決める要素としては、次のものが挙げられる。

  • 二次巻線インピーダンス$\dot{Z}_2=r_2+jX_2$(巻線抵抗や一次・二次巻線の配置による漏れリアクタンスによって決まる)
  • 負担インピーダンス$\dot{Z}_\mathrm{b}$(接続する計器類の特性によって決まる。これと$\dot{Z}_2$により$\phi_\mathrm{2b}$も決まる)
  • 励磁インピーダンス$\dot{Z}_{0}=Z_{0}\angle{\gamma}$(鉄心の形状・材料・特性によって決まる)
  • 巻き戻し率$\beta$(公称変流比から決まる巻数に対し、設計時にどれだけ巻き戻しをとるのかによって決まる)

 

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参考文献

  • 池田三穂司『計器用変成器』電気書院,1956
  • JEM-TR129『計器用変成器適用指針』日本電機工業会,2010