送電線や機器等へのサージ侵入は、進行波理論を導入することで考えることができる。
本記事では、手計算でもできる電験一種の過去問を例題として考える。
送電線に侵入する進行波:例題
出典:電験一種筆記試験「送配電」 昭和63年度問1
図1に示すように,$A$,$B$両送電線が$O$点で連系され、その連系点の電線と大地の間にコンデンサを設置した送電系統がある。
いま、$A$送電線側から波高値$E$の方形波が$O$点に向かって進行してきたとする。
方形波が$O$点に到達してから$t$秒後における$O$点の電圧を求めよ。
ただし、$A,\ B$両送電線のサージインピーダンスはそれぞれ$Z_1[\Omega]$および$Z_2[\Omega]$,コンデンサの静電容量は$C[\mathrm{F}]$とする。
図1 連系された送電線
電圧・電流の関係式
以下、電圧(記号$v(t)$)および電流(記号$i(t)$)について、入射波(添え字$i$)、反射波(添え字$r$)、透過波(添え字$t$)およびコンデンサの電圧・電流(添え字$c$)の関係式を立てる。
点$O$における入射波・反射波・透過波・コンデンサの電圧・電流の関係式は、
$$\begin{cases}
v_i(t)+v_r(t)=v_t(t)=v_c(t) &・・・(1)\\\\
i_i(t)+i_r(t)=i_t(t)+i_c(t) &・・・(2)\\\\
\end{cases}$$
また、各電流の式は、各電圧およびサージインピーダンス$\dot{Z_1},\ \dot{Z_2},\ C$を用いて、
$$\begin{cases}
i_i(t)=\displaystyle{\frac{v_i(t)}{Z_1}}\\\\
i_r(t)=-\displaystyle{\frac{v_r(t)}{Z_1}}\\\\
i_t(t)=\displaystyle{\frac{v_t(t)}{Z_2}}\\\\
i_c(t)=C\displaystyle{\frac{dv_c(t)}{dt}}
\end{cases} ・・・(3)$$
$(3)$式を$(2)$式に代入して、
$$\displaystyle{\frac{v_i(t)-v_r(t)}{Z_1}}=\displaystyle{\frac{v_t(t)}{Z_2}}+C\displaystyle{\frac{dv_c(t)}{dt}} ・・・(4)$$
ラプラス変換による計算
$(1),\ (4)$式をラプラス変換すると(変換後は大文字)、
$$\begin{cases}
V_i(s)+V_r(s)=V_t(s)=V_c(s) &・・・(5)\\\\
\displaystyle{\frac{V_i(s)-V_r(s)}{Z_1}}=\displaystyle{\frac{V_t(s)}{Z_2}}+sCV_c(s) &・・・(6)\\\\
\end{cases}$$
また、入射波$v_i(t)$は題意より単位ステップ関数で表されるため、ラプラス変換後の$V_i(s)$は、
$$V_i(s)=\frac{E}{s} ・・・(7)$$
$(5),\ (7)$式を$(6)$式に代入して$V_t(s)$の式にすると、
$$\begin{align*}
\frac{E}{sZ_1}+\left(\frac{E}{sZ_1}-\frac{V_t(s)}{Z_1}\right)&=\left(\frac{1}{Z_2}+sC\right)V_t(s)\\\\
\frac{2E}{sZ_1}&=\left(\frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2}+sC\right)V_t(s)\\\\
\therefore V_t(s)&=\frac{\displaystyle{\frac{2E}{sZ_1}}}{\left(sC+\displaystyle{\frac{Z_1+Z_2}{Z_1Z_2}}\right)}\\\\
&=\frac{2}{CZ_1}\frac{1}{s\left(s+\displaystyle{\frac{Z_1+Z_2}{CZ_1Z_2}}\right)}E\\\\
&=\frac{2Z_2}{Z_1+Z_2}E\left(\frac{1}{s}-\frac{1}{s+\displaystyle{\frac{Z_1+Z_2}{CZ_1Z_2}}}\right)
\end{align*}$$
$V_t(s)$をラプラス逆変換した$v_t(t)$が今回求めるべき連系点$O$の電圧であるから、
$$v_t(t)=\mathcal{L^{-1}}[V_t(s)]=\frac{2Z_2}{Z_1+Z_2}E\left\{1-\exp\left(-\frac{Z_1+Z_2}{CZ_1Z_2}\right)t\right\}$$
連系点における電圧のグラフ
求めた$v_t(t)$の式から、横軸$t$としたときの$v_t(t)$のグラフを図示すると図2のようになる。
図2 連系点$O$における電圧の時間変化
コンデンサ$C$の設置のおかげで、サージ侵入開始直後はコンデンサ$C$に電流$i_c(0)=\displaystyle{\frac{2E}{Z_1}}$が流入する。
このとき、同図のように連系点$O$の電圧はすぐには上昇せず、時定数$\displaystyle{\frac{CZ_1Z_2}{Z_1+Z_2}}$のカーブを描いて定常値$\displaystyle{\frac{2Z_2}{Z_1+Z_2}}E$に到達することがわかる。
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