本記事では、2つの導体球で構成される同心球コンデンサの静電容量を、様々なパターンについてまとめる。
同心球コンデンサの静電容量(導体間が空洞である場合)
本記事では図1のように、内球導体を内部が空洞となっている外球導体(球殻)で包んだ「同心球コンデンサ」について考える。
図1 同心球コンデンサ
なお、本記事で解説するいずれのパターンにおいても、特に断りがない限り、次の条件が当てはまるものとする。
- 2つの球導体の中心は一致している。
- 内球の半径を$a$,外球の半径を$b$とし、外球の厚みは無視する。
- 電位の基準は無限遠にとる。
- 導体間の空洞部分の誘電率は$\varepsilon_0$(真空の誘電率)とする。
導体間の静電容量
図2に図1の同心球コンデンサの断面図を示す。
図2 同心球コンデンサの断面図
図2において、内球に電荷$Q$を与えたとすると、外球には$-Q$の電荷が誘導される。
このとき、内球の中心から距離$r$の位置における電界$E$は、
$$E=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0r^2} ・・・(1)$$
$(1)$式より、導体間の電位差$V_\mathrm{ab}$は、
$$\begin{align*}
V_\mathrm{ab}&=-\int^{a}_{b}E\mathrm{d}r\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\int^{b}_{a}\frac{\mathrm{d}r}{r^2}\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left[-\frac{1}{r}\right]^{b}_{a}\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{b}\right) ・・・(2)
\end{align*}$$
したがって、図2の導体間の静電容量$C_\mathrm{ab}$は、$(2)$式より、
$$\begin{align*}
C_\mathrm{ab}&=\frac{Q}{V_\mathrm{ab}}\\\\
&=\frac{Q}{\displaystyle{\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{b}\right)}}\\\\
&=\frac{4\pi\varepsilon_0}{\displaystyle{\frac{1}{a}-\frac{1}{b}}}\\\\
&=\frac{4\pi\varepsilon_0ab}{b-a} ・・・(3)
\end{align*}$$
単一導体球の静電容量
次に、図2の外球が存在しない、半径$a$の単一導体球の断面図を図3に示す。
図3 単一導体球の断面図
図3の単一導体球の静電容量は、内球-無限遠で構成されるコンデンサを考えることによって求めることができる。
このとき、求める静電容量$C_\mathrm{a}$は、$(3)$式(の変形前)において$b\rightarrow\infty$とした場合に等しく、
$$\begin{align*}
C_\mathrm{a}&=\displaystyle \lim_{b\to\infty}\frac{4\pi\varepsilon_0}{\displaystyle{\frac{1}{a}-\frac{1}{b}}}\\\\
&=\frac{4\pi\varepsilon_0}{\displaystyle{\frac{1}{a}}}\\\\
&=4\pi\varepsilon_0a ・・・(4)
\end{align*}$$
内球が接地されている場合の静電容量
さらに、図2の内球を接地した場合の断面図を図4に示す。
図4 同心球コンデンサ(内球接地)の断面図
図4のように内球が接地されている場合の静電容量は、外球-内球で構成されるコンデンサと、外球-無限遠で構成されるコンデンサとの並列合成として計算できる。
外球-無限遠間の静電容量$C_\mathrm{b}$は、$(4)$式と同様に考えることにより、
$$C_\mathrm{b}=4\pi\varepsilon_0b ・・・(5)$$
したがって、求める静電容量$C’_\mathrm{ab}$は、$(3),\ (5)$式より、
$$\begin{align*}
C’_\mathrm{ab}&=C_\mathrm{ab}+C_\mathrm{b}\\\\
&=\frac{4\pi\varepsilon_0ab}{b-a}+4\pi\varepsilon_0b\\\\
&=4\pi\varepsilon_0\cdot\frac{ab+b\left(b-a\right)}{b-a}\\\\
&=\frac{4\pi\varepsilon_0b^2}{b-a} ・・・(6)
\end{align*}$$
同心球コンデンサの静電容量(内部に誘電体が充填される場合)
次に、図1の導体間が空洞ではなく、誘電体が充填されている場合について考える。
単一の誘電体で満たされている場合
同心球コンデンサの導体間に、誘電率$\varepsilon$の誘電体を充填した場合の断面図を図5に示す。
図5 誘電体が充填された同心球コンデンサ断面図の断面図
図5の同心球コンデンサの静電容量$C_{\varepsilon}$は、$(3)$式で$\varepsilon_0\rightarrow\varepsilon$とした場合に等しく、
$$C_{\varepsilon}=\frac{4\pi\varepsilon ab}{b-a} ・・・(7)$$
2つの誘電体で満たされている場合①
次に、内球の内側から外側にかけて、誘電率がそれぞれ$\varepsilon_1,\ \varepsilon_2$である2種類の誘電体を充填した場合の断面図を図6に示す。
このとき、内側の誘電体の外径を$c$とする。
図6 2つの誘電体が充填された同心球コンデンサの断面図
図6の内球に$Q$の電荷を与えたときの、内球の中心から距離$r$の位置における各誘電体内部の電界$E_1,\ E_2$は、
$$\begin{align*}
E_1=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_1r^2}\\\\
E_2=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_2r^2}
\end{align*} ・・・(8)$$
$(8)$式より、各誘電体の内側-外側表面間の電位差$V_\mathrm{ac},\ V_\mathrm{cb}$は、
$$\begin{align*}
V_\mathrm{ac}&=-\int^{a}_{c}E_1\mathrm{d}r\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_1}\int^{c}_{a}\frac{\mathrm{d}r}{r^2}\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_1}\left[-\frac{1}{r}\right]^{c}_{a}\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_1}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c}\right) ・・・(9)
\end{align*}$$
$$\begin{align*}
V_\mathrm{cb}&=-\int^{c}_{b}E_2\mathrm{d}r\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_2}\int^{b}_{c}\frac{\mathrm{d}r}{r^2}\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_2}\left[-\frac{1}{r}\right]^{b}_{c}\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_2}\left(\frac{1}{c}-\frac{1}{b}\right) ・・・(10)
\end{align*}$$
$(10)$式より、導体間の電位差$V’_\mathrm{ab}$は、
$$\begin{align*}
V’_\mathrm{ab}&=V_\mathrm{ac}+V_\mathrm{cb}\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_1}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c}\right)+\frac{Q}{4\pi\varepsilon_2}\left(\frac{1}{c}-\frac{1}{b}\right)\\\\
&=\frac{Q}{4\pi}\left\{\frac{1}{\varepsilon_1}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c}\right)+\frac{1}{\varepsilon_2}\left(\frac{1}{c}-\frac{1}{b}\right)\right\} ・・・(11)
\end{align*}$$
以上より、図6の同心球コンデンサの静電容量$C_\mathrm{\varepsilon12}$は、$(11)$式より、
$$\begin{align*}
C_\mathrm{\varepsilon12}&=\frac{Q}{V’_\mathrm{ab}}\\\\
&=\frac{Q}{\displaystyle{\frac{Q}{4\pi}\left\{\frac{1}{\varepsilon_1}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c}\right)+\frac{1}{\varepsilon_2}\left(\frac{1}{c}-\frac{1}{b}\right)\right\}}}\\\\
&=\frac{4\pi}{\displaystyle{\frac{1}{\varepsilon_1}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c}\right)+\frac{1}{\varepsilon_2}\left(\frac{1}{c}-\frac{1}{b}\right)}} ・・・(12)
\end{align*}$$
ある厚みの誘電体を充填した場合
また、導体間にある厚みをもつ誘電率$\varepsilon$の誘電体を充填した場合の断面図を図7に示す。
このとき、誘電体の内径を$c_1$,外径を$c_2$とする。
図7 厚みがある誘電体が充填された同心球コンデンサの断面図
図7の内球に$Q$の電荷を与えたときの、内球の中心から距離$r$の位置における空洞部の電界は$(1)$式で与えられる。
また、誘電体内部の電界$E’$は、
$$E’=\frac{Q}{4\pi\varepsilon r^2} ・・・(13)$$
$(1),\ (13)$式より、内球表面-誘電体内側表面($a\sim c_1$間)、誘電体内側表面-外側表面($c_1\sim c_2$間)、誘電体外側表面-外球表面($c_2\sim b$間)の電位差$V_\mathrm{ac_1},\ V_\mathrm{c_1c_2},\ V_\mathrm{c_2b}$は、
$$\begin{align*}
V_\mathrm{ac_1}&=-\int^{a}_{c_1}E\mathrm{d}r\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c_1}\right) ・・・(14)
\end{align*}$$
$$\begin{align*}
V_\mathrm{c_1c_2}&=-\int^{c_1}_{c_2}E’\mathrm{d}r\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon}\left(\frac{1}{c_1}-\frac{1}{c_2}\right) ・・・(15)
\end{align*}$$
$$\begin{align*}
V_\mathrm{c_2b}&=-\int^{c_2}_{b}E\mathrm{d}r\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\frac{1}{c_2}-\frac{1}{b}\right) ・・・(16)
\end{align*}$$
$(14)\sim(16)$式より、導体間の電位差$V^{”}_\mathrm{ab}$は、
$$\begin{align*}
V^{”}_\mathrm{ab}&=V_\mathrm{ac_1}+V_\mathrm{c_1c_2}+V_\mathrm{c_2b}\\\\
&=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c_1}\right)+\frac{Q}{4\pi\varepsilon}\left(\frac{1}{c_1}-\frac{1}{c_2}\right)+\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left(\frac{1}{c_2}-\frac{1}{b}\right)\\\\
&=\frac{Q}{4\pi}\left[\frac{1}{\varepsilon_0}\left\{\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c_1}\right)+\left(\frac{1}{c_2}-\frac{1}{b}\right)\right\}+\frac{1}{\varepsilon}\left(\frac{1}{c_1}-\frac{1}{c_2}\right)\right] ・・・(17)
\end{align*}$$
以上より、図7の同心球コンデンサの静電容量$C’_\mathrm{\varepsilon}$は、$(17)$式より、
$$\begin{align*}
C’_\mathrm{\varepsilon}&=\frac{Q}{V^{”}_\mathrm{ab}}\\\\
&=\frac{Q}{\displaystyle{\frac{Q}{4\pi}\left[\frac{1}{\varepsilon_0}\left\{\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c_1}\right)+\left(\frac{1}{c_2}-\frac{1}{b}\right)\right\}+\frac{1}{\varepsilon}\left(\frac{1}{c_1}-\frac{1}{c_2}\right)\right]}}\\\\
&=\frac{4\pi}{\displaystyle{\frac{1}{\varepsilon_0}\left\{\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{c_1}\right)+\left(\frac{1}{c_2}-\frac{1}{b}\right)\right\}+\frac{1}{\varepsilon}\left(\frac{1}{c_1}-\frac{1}{c_2}\right)}} ・・・(18)
\end{align*}$$
2つの誘電体で満たされている場合②
さらに、同心球の中心を通る線を境に、誘電率がそれぞれ$\varepsilon_1,\ \varepsilon_2$である誘電体を半分ずつ充填した場合の断面図を図8に示す。
図8 2つの誘電体が半分ずつ充填された同心球コンデンサの断面図
図8の内球に$Q$の電荷を与えたとすると、内球の中心から距離$r$の位置における各誘電体内の電束密度$D_1,\ D_2$との関係は、ガウスの法則より、
$$Q=\frac{4\pi r^2}{2}\cdot D_1+\frac{4\pi r^2}{2}\cdot D_2 ・・・(19)$$
また、内球の中心から距離$r$の位置における電界を$E^{”}$とすると、$(19)$式の$D_1,\ D_2$との関係は、
$$D_1=\varepsilon_1E^{”},\ D_2=\varepsilon_2E^{”} ・・・(20)$$
$(20)$式を$(19)$式に代入すると、電界$E^{”}$は、
$$\begin{align*}
Q&=\frac{4\pi r^2}{2}\cdot\varepsilon_1E^{”}+\frac{4\pi r^2}{2}\cdot\varepsilon_2E^{”}\\\\
&=2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)r^2E^{”}\\\\
\therefore E^{”}&=\frac{Q}{2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)r^2} ・・・(21)
\end{align*}$$
$(21)$式より、導体間の電位差$V^{‴}_\mathrm{ab}$は、
$$\begin{align*}
V^{‴}_\mathrm{ab}&=-\int^{a}_{b}E^{”}\mathrm{d}r\\\\
&=\frac{Q}{2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)}\int^{b}_{a}\frac{\mathrm{d}r}{r^2}\\\\
&=\frac{Q}{2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)}\left[-\frac{1}{r}\right]^{b}_{a}\\\\
&=\frac{Q}{2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{b}\right) ・・・(22)
\end{align*}$$
したがって、図8のの同心球コンデンサの静電容量$C’_\mathrm{\varepsilon12}$は、$(22)$式より、
$$\begin{align*}
C’_\mathrm{\varepsilon12}&=\frac{Q}{V^{‴}_\mathrm{ab}}\\\\
&=\frac{Q}{\displaystyle{\frac{Q}{2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)}\left(\frac{1}{a}-\frac{1}{b}\right)}}\\\\
&=\frac{2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)}{\displaystyle{\frac{1}{a}-\frac{1}{b}}}\\\\
&=\frac{2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)ab}{b-a} ・・・(23)
\end{align*}$$
$(23)$式は、次のように考えることでも導くことができる。
図8の同心球コンデンサは、誘電率$\varepsilon_1,\ \varepsilon_2$の誘電体が充填された同心半球のコンデンサが並列接続されているとも考えることができる。
誘電率$\varepsilon$の誘電体が充填された同心半球のコンデンサの静電容量$C_\mathrm{half}$は、$(7)$式の半分となり、
$$C_\mathrm{half}=\frac{1}{2}C_{\varepsilon}=\frac{2\pi\varepsilon ab}{b-a}$$
上記と同様に考えると、図8の導体間の静電容量$C’_\mathrm{\varepsilon12}$は、
$$\begin{align*}
C’_\mathrm{\varepsilon12}&=\frac{2\pi\varepsilon_1 ab}{b-a}+\frac{2\pi\varepsilon_2 ab}{b-a}\\\\
&=\frac{2\pi\left(\varepsilon_1+\varepsilon_2\right)ab}{b-a}
\end{align*}$$
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