二線地絡故障計算の例題

二線地絡時の故障計算について、例題として電験一種の過去問を解いていく。
今回は対称座標法は使用せず、電圧不平衡回路の計算によって解いている。

二線地絡故障計算:例題

出典:電験一種二次試験「電力・管理」H13問4
(※問題の記述を一部変更しています)

図1のような非接地方式の$6.6\mathrm{kV}$平衡三相配電線($50\mathrm{Hz}$)の$b,\ c$相で地絡故障(地絡抵抗の大きさは$b,\ c$相とも同じ)が発生した。

このとき、健全相の対地電位の大きさが線間電圧の$\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{2}}}$以下におさまるための地絡抵抗値$R$の下限値を求めよ。

ただし、変圧器および線路の直列インピーダンスは無視するものとする。

また、各相の対地静電容量は$C=5\mu\mathrm{F}$である。

図1 事故系統

三相不平衡回路による解法

題意より、「変圧器および線路の直列インピーダンスは無視する」ため、このような問題の場合は各相の電流を求めた後、中性点接地方式に応じた電流の和の式に代入するという「三相不平衡回路による解法」が定石である。

まず、各相の電流$\dot{I_a},\ \dot{I_b},\ \dot{I_c}$は、図1に表記の電圧および回路定数から求められるアドミタンスを用いて、

$$\begin{align*}
\dot{I_a}&=j\omega C(\dot{E_a}+\dot{V_n}) &・・・(1)\\\\
\dot{I_b}&=\left(\frac{1}{R}+j\omega C\right)\left(\dot{E_b}+\dot{V_n}\right)=\frac{1+j\omega CR}{R}(\dot{E_b}+\dot{V_n}) &・・・(2)\\\\
\dot{I_c}&=\left(\frac{1}{R}+j\omega C\right)\left(\dot{E_c}+\dot{V_n}\right)=\frac{1+j\omega CR}{R}(\dot{E_c}+\dot{V_n})  &・・・(3)
\end{align*}$$

また題意より、中性点は非接地であることから、各相電流の和はゼロであることより、

$$\dot{I_a}+\dot{I_b}+\dot{I_c}=0 ・・・(4)$$

$(4)$式に$(1)~(3)$式を代入して、

$$\begin{align*}
j\omega C(\dot{E_a}+\dot{V_n})+\frac{1+j\omega CR}{R}(\dot{E_b}+\dot{V_n})+\frac{1+j\omega CR}{R}(\dot{E_c}+\dot{V_n})&=0\qquad\qquad\qquad\\\\
\frac{\dot{E_b}+\dot{E_c}}{R}+\frac{2+j3\omega CR}{R}\dot{V_n}&=0\\\\
\therefore\dot{V_n}&=\frac{\dot{E_a}}{2+j3\omega CR} ・・・(5)\\\\
(\because\dot{E_a}+ \dot{E_b}+\dot{E_c}&=0)
\end{align*}$$

ここで、求めるべき健全相($a$相)の対地電位は、$\dot{E_a}+\dot{V_n}$となるため、$(5)$式より、

$$\dot{E_a}+\dot{V_n}=\left(1+\frac{1}{2+j3\omega CR}\right)\dot{E_a}=\frac{ 3+j3\omega CR}{2+j3\omega CR}\dot{E_a} ・・・(6)$$

題意より、$(6)$式で表される対地電位の大きさが線間電圧の$\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{2}}}$以下となればよいので、

$$\begin{align*}
\left|\frac{3+j3\omega CR}{2+j3\omega CR}\right|E_a&\leq\frac{1}{\sqrt{2}}\times\sqrt{3}E_a\\\\
\sqrt{\frac{3^2+(3\omega CR)^2}{2^2+(3\omega CR)^2}}&\leq\sqrt{\frac{3}{2}}
\\\\
\frac{9+9(\omega CR)^2}{4+9(\omega CR)^2}&\leq\frac{3}{2}\\\\
\therefore R\geq\frac{\sqrt{6}}{3\omega C}
\end{align*}$$

したがって、地絡抵抗$R$の下限値は、

$$R=\frac{\sqrt{6}}{3\times2\pi\times50\times5\times10^{-6}}=519.8→\boldsymbol{\underline{520\Omega}}$$

 

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