コンバインドサイクル発電方式

コンバインドサイクル方式の特徴

従来の汽力発電プラントと比較した場合の特徴は下記となる。

 

起動時間が短い

小容量機の組み合わせであることから、負荷変化率が大きくとれるため。

 

また、ガスタービンを使用した小容量機のため、起動時の暖機運転に要する熱量および時間が少なくてすむことから、汽力発電プラントと比較すると起動時間が短い。

起動から定格負荷までの起動時間は、1000MW級汽力発電で8時間停止後の起動時間は約3時間程度であるが、これに対してコンバインドサイクル発電では、8時間停止後の起動時間は約1時間程度である。

 

さらに、負荷変化率は毎分5%程度であり、急速な負荷変化に対応可能である。

 

温排水量が少ない

コンバインドサイクル発電における出力分担は、ガスタービン発電が約2/3、蒸気タービン発電が約1/3となっており、さらに、ガスタービン発電では、蒸気タービン発電のように復水設備を有しないため、使用する冷却水量が少ないためである。

また、蒸気タービンの入口温度条件が汽力プラントに比べて圧力、温度ともに低いためである。

 

このためコンバインドサイクル発電では、同容量の汽力発電に比較して温排水量が6~7割程度と少なくなっている。

 

ガスタービン発電は大気温度の上昇とともに最大出力が低下する

ガスタービン第1段動翼入口温度は、高温部品の耐久性の面から、上限値をもって運転される。

 

一方、圧縮機が吸入する空気の体積流量はほぼ一定であり、大気温度上昇による空気密度の低下に伴って空気の質量流量が低下する。

このことから、投入できる燃料量が減少し、ガスタービン出力が低下する。

 

その結果、排ガス量も減少することから、排熱回収ボイラで回収する熱量も減少し、蒸気タービン出力も低下して、コンバインドサイクル出力が低下する。

この対策のため、圧縮機入口に水を噴霧し、水の蒸発潜熱により空気温度を下げて空気の質量、流量を増加し出力低下を改善する、ガスタービン吸気冷却装置が設置される場合もある。

 

排熱回収方式

ガスタービンの排気を排熱回収ボイラに導き、その熱回収で蒸気を発生し、蒸気タービンを駆動する方式である。

 

コンバインドサイクル発電方式のなかでは最も簡単であるが、ガスタービンと蒸気系との整合性を最適化することによって、コンバインドサイクル発電方式のなかで最も高い熱効率を実現することができる。

 

排熱回収方式の特徴

  1. 蒸気タービンに組み合わせるガスタービン容量が大きい(総合出力の65~75%がガスタービンで発生)。
  2. 熱源の有効利用率が高く、熱効率が高い。
  3. 構成がシンプルで、制御が簡単である。
  4. 蒸気タービンの単独運転は不可能である。
  5. ガスタービンの容量、排気温度によって蒸気タービンの出力、蒸気条件が制約される。
  6. 復水器温排水が、通常の汽力プラントに比べて少ない。
  7. 起動時間が短い。
  8. ガスタービンの負荷変動により、蒸気タービン負荷も変動する。

 

排熱回収方式は、一軸型と多軸型に分類される。

 

一軸型コンバインドサイクル

ガスタービンと蒸気タービンの軸を同一軸として直結したものである。

そして、この軸に発電機が直結され駆動されている。

 

一軸型コンバインドサイクルの特徴

  1. 部分負荷でも発電機の運転台数を切り換えることで、高効率運転を行うことができる。したがって、中間負荷の発電に適している。
  2. 機器構成が簡単であり、建設工期が短い。
  3. 始動時間が短い。
  4. ガスタービン単独での運転ができない。

 

多軸型コンバインドサイクル

ガスタービンの軸と蒸気タービンの軸とが別々にあり、それぞれの軸で発電機を駆動するようになっているものである。

 

また、蒸気タービン発電機1台に対して、ガスタービン発電機複数台を組み合わせ1組とすることもある。

 

多軸型コンバインドサイクルの特徴

  1. 蒸気タービン発電機1台に対してガスタービン発電機を複数台とすると、蒸気タービンの容量が大きくなり、定格負荷(全出力)時の効率は高くなる。したがって、一軸型に比べ、ベース負荷に適している。
  2. ガスタービン発電機と蒸気タービン発電機とで異なる出力で、出力を加減できる。
  3. 発電方式によっては、ガスタービンおよび蒸気タービンそれぞれを単独で運転することができる。
  4. プラント構成が一軸型に比べて複雑となる。

 

 

排気再燃方式

ガスタービンの排気は、高温であると同時に多量の酸素を含んでいるので、ガスタービンの排気をボイラに導き、排熱回収を行うとともに、排気をボイラ燃焼用空気として利用するものである。

ガスタービン排気は高温であるため、一般にボイラで設置される空気予熱器が不要となり、その代わりにボイラ排ガスの熱は給水加熱などにより回収される。

 

排気再燃方式の特徴

  1. 給水加熱のための蒸気抽気量を減少させることができることから、プラント効率が向上する。
  2. ボイラ用燃料は、ガスタービンとは無関係に選定できる。
  3. 発電機を回す動力源として、蒸気タービンのみを利用する既設の汽力発電ボイラのリパワリング(出力増強と熱効率改善)に適する。
  4. 蒸気タービン出力は、ガスタービン出力に比べ、比較的大容量のものに適する。総合出力の70から85%が蒸気タービン側で発生する。ボイラの蒸気発生量も多い。
  5. 高温排気をボイラ燃焼用空気として利用するため、空気予熱が不要となる代わりにガスクーラを設置し、ボイラ排ガス温度を下げる。
  6. 運転制御系が複雑になる。
  7. 補助の押込ファンを設置することにより、蒸気タービンの単独運転が可能となる。
  8. 高温ガスタービンを採用した場合など排ガス中の残存酸素濃度が低い場合は、押込ファンの追設が必要となる。
  9. 起動から定格負荷までの時間並びに定格負荷から停止までの時間が長い。

 

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