ウッドブリッジ変圧器

鉄道饋電(きでん)用など、三相負荷から単相負荷へ供給する際に使用されるウッドブリッジ変圧器について解説する。

採用の目的

鉄道や電気炉など、断続的にかつ激しい変動のある単相負荷への安定した供給のため、ウッドブリッジ変圧器(またはスコット変圧器)という三相→二相負荷へ変換するための変圧器が用いられる。

このような負荷では、三相系統側に不平衡電流が生ずるため、これを緩和される役割を担っている。

ウッドブリッジ 変圧器の結線

図1にウッドブリッジ変圧器の結線図を示す。一次側は$Y$巻線、二次側のうち二相は等しい巻数の巻線(主座)、残りの1相は巻数比の異なる3つの巻線($T$座)をもち、$\Delta$巻線を背中合わせになるような接続構成の変圧器で、電圧を揃えるために一方の二次回路に付加巻線が設けられる。

図1 ウッドブリッジ変圧器

また、二次・三次巻線を同一容量・同一巻回数とした三巻線変圧器として、付加巻線を外付けの単巻変圧器としたものを変形ウッドブリッジ結線といい、結線図を図2に示す。本記事の解説にはこの変形ウッドブリッジ変圧器を用いる。

図2 変形ウッドブリッジ変圧器

三相から二相電流への変換

左側の添え字は一次・二次・三次の電流であることを示し、各巻線の巻数を$n_1,\ n_2$とする。

一次・二次・巻線のアンペアターン・キャンセルより、

$$\begin{cases}
n_1{_1}\dot{I_a}+n_2\left({_2}\dot{I_a}+{_3}\dot{I_a}\right)=0\\
n_1{_1}\dot{I_b}+n_2\left({_2}\dot{I_b}+{_3}\dot{I_b}\right)=0\\
n_1{_1}\dot{I_c}+n_2\left({_2}\dot{I_c}+{_3}\dot{I_c}\right)=0
\end{cases} ・・・(1)$$

$k\equiv\displaystyle{\frac{n_1}{n_2}}$として$(1)$式を書き換えると、

$$\begin{cases}
k{_1}\dot{I_a}+\left({_2}\dot{I_a}+{_3}\dot{I_a}\right)=0\\
k{_1}\dot{I_b}+\left({_2}\dot{I_b}+{_3}\dot{I_b}\right)=0\\
k{_1}\dot{I_c}+\left({_2}\dot{I_c}+{_3}\dot{I_c}\right)=0
\end{cases} ・・・(1)’$$

次に、主座, $T$座の電流$\dot{I_M},\ \dot{I_T}$について、図2の電流の流れより、

$$\begin{cases}
\dot{I_M}={_2}\dot{I_c}-{_2}\dot{I_b}={_3}\dot{I_c}-{_3}\dot{I_b} &・・・(2)\\
\sqrt{3}\dot{I_T}=\left({_2}\dot{I_c}-{_2}\dot{I_a}\right)+\left({_3}\dot{I_b}-{_3}\dot{I_a}\right) &・・・(3)
\end{cases}$$

$(1)’\sim(3)$式より${_3}\dot{I_a},\ {_3}\dot{I_b},\ {_3}\dot{I_c}$を消去すると、

$$\begin{align*}
{_2}\dot{I_c}-{_2}\dot{I_b}&=-\left(k{_1}\dot{I_c}+{_2}\dot{I_c}\right)+\left(k{_1}\dot{I_b}+{_2}\dot{I_b}\right)\\\\
&=k\left({_1}\dot{I_b}-{_1}\dot{I_c}\right)+\left({_2}\dot{I_b}-{_2}\dot{I_c}\right)\\\\
\therefore\dot{I_M}&={_2}\dot{I_c}-{_2}\dot{I_b}=\frac{k}{2}\left({_1}\dot{I_b}-{_1}\dot{I_c}\right) ・・・(4)
\end{align*}$$

$$\begin{align*}
\sqrt{3}\dot{I_T}&={_2}\dot{I_c}-{_2}\dot{I_a}-\left(k{_1}\dot{I_b}+{_2}\dot{I_b}\right)-\left(k{_1}\dot{I_a}+{_2}\dot{I_a}\right)\\\\
&=\left({_2}\dot{I_c}-{_2}\dot{I_b}\right)+k\left({_1}\dot{I_a}-{_1}\dot{I_b}\right)\\\\
&=\frac{k}{2}\left({_1}\dot{I_b}-{_1}\dot{I_c}\right)+k\left({_1}\dot{I_a}-{_1}\dot{I_b}\right)\left(\because(4)\right)\\\\
&=\frac{k}{2}\left(2{_1}\dot{I_a}-{_1}\dot{I_b}-{_1}\dot{I_c}\right) ・・・(5)
\end{align*}$$

$(4),\ (5)$式を行列表示にすると、

$$\left(\begin{array}{c} \dot{I_M} \\ \sqrt{3}\dot{I_T}\end{array}\right)=\left(\begin{array}{ccc} 0&\displaystyle{\frac{k}{2}}&\displaystyle{-\frac{k}{2}} \\ k&\displaystyle{-\frac{k}{2}}&\displaystyle{-\frac{k}{2}}\end{array}\right) \left(\begin{array}{c} {_1}\dot{I_a} \\ {_1}\dot{I_b} \\ {_1}\dot{I_c}\end{array}\right) ・・・(6)$$

$(6)$式右辺の三相電流を対称分電流に置き換える書き方をすると、

$$\begin{align*}
\left(\begin{array}{c} \dot{I_M} \\ \sqrt{3}\dot{I_T}\end{array}\right)&=\frac{k}{2}\left(\begin{array}{cc} 0&1&-1 \\ 2&-1&-1\end{array}\right)\left(\begin{array}{ccc} 1&1&1\\1&a^2&a\\1&a&a^2 \end{array}\right) \left(\begin{array}{c} {_1}\dot{I_0} \\ {_1}\dot{I_1} \\ {_1}\dot{I_2}\end{array}\right)\\\\
&=\frac{k}{2}\left(\begin{array}{cc} 0&a^2-a&a-a^2 \\ 0&3&3\end{array}\right) \left(\begin{array}{c} {_1}\dot{I_0} \\ {_1}\dot{I_1} \\ {_1}\dot{I_2}\end{array}\right)\\\\
&=\frac{k}{2}\left(\begin{array}{cc} 0&-j\sqrt{3}&j\sqrt{3} \\ 0&3&3\end{array}\right) \left(\begin{array}{c} {_1}\dot{I_0} \\ {_1}\dot{I_1} \\ {_1}\dot{I_2}\end{array}\right)\\\\
\therefore\left(\begin{array}{c} \dot{I_M} \\ \dot{I_T}\end{array}\right)&=\frac{\sqrt{3}}{2}k\left(\begin{array}{cc} 0&-j&j \\ 0&1&1\end{array}\right) \left(\begin{array}{c} {_1}\dot{I_0} \\ {_1}\dot{I_1} \\ {_1}\dot{I_2}\end{array}\right)
\end{align*}$$

$$\begin{cases}
\dot{I_M}=-j\displaystyle{\frac{\sqrt{3}}{2}}\left({_1}\dot{I_1}-{_1}\dot{I_2}\right) ・・・(7)\\\\
\dot{I_T}=\displaystyle{\frac{\sqrt{3}}{2}}\left({_1}\dot{I_1}+{_1}\dot{I_2}\right) ・・・(8)
\end{cases}$$

$(7),\ (8)$式から対称分電流の式を求めると、

$$\begin{cases}
{_1}\dot{I_0}=0\\\\
{_1}\dot{I_1}=\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{3}k}}\left(\dot{I_T}+j\dot{I_M}\right)\\\\
{_1}\dot{I_2}=\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{3}k}}\left(\dot{I_T}-j\dot{I_M}\right)
\end{cases} ・・・(9)$$

さらに、$(9)$式から三相電流を求めると、

$$\begin{cases}
{_1}\dot{I_a}={_1}\dot{I_0}+{_1}\dot{I_1}+{_1}\dot{I_2}&=\displaystyle{\frac{2}{\sqrt{3}k}}\dot{I_T}\\\\
{_1}\dot{I_b}={_1}\dot{I_0}+a^2{_1}\dot{I_1}+a{_1}\dot{I_2}&=\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{3}k}}\left(\sqrt{3}\dot{I_M}-\dot{I_T}\right)\\\\
{_1}\dot{I_c}={_1}\dot{I_0}+a{_1}\dot{I_1}+a^2{_1}\dot{I_2}&=\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{3}k}}\left(-\sqrt{3}\dot{I_M}-\dot{I_T}\right)
\end{cases} ・・・(10)$$

三相電流と主座・T座電流の関係

$(10)$式に基づく三相電流と主座および$T$座電流のベクトル図を図3に示す。

図3 ウッドブリッジ変圧器のベクトル図

同図および$(9),\ (10)$式より、

・主座および$T$座電流の関係は、$\dot{I_M}$が$\dot{I_T}$に対し$\frac{\pi}{2}$遅れている。

・二次および三次は$\Delta$結線ゆえ、零相電流は一次側に発生しない。これは$(9)$式からも明らかである。

・主座、$T$座両方の負荷の大きさが等しくなる場合、すなわち$\dot{I_T}=j\dot{I_M}$の場合は、${_1}\dot{I_2}=0$となるため一次側の逆相電流も発生しない。

一方、主座、$T$座電流の片方がゼロの場合は、${_1}\dot{I_1}={_1}\dot{I_2}$となり正相電流と逆相電流が等しくなる(このときは著しく不平衡な場合となる)。