系統の電圧・電力計算の例題 その1

系統の電圧・電力計算について、例題として電験一種の問題を解いていく。
本記事では調相設備を接続する場合の例題を取り上げる。

系統の電圧・電力計算:例題

出典:電験一種二次試験「電力・管理」H25問4
(問題文の記述を一部変更しています)

図1に示すように、こう長$200\mathrm{km}$の$500\mathrm{kV}$並行2回線送電線で、送電端から$100\mathrm{km}$の地点に調相設備をもった中間開閉所がある送電系統を考える。送電線1回線のインダクタンスを$0.8\mathrm{mH/km}$、静電容量を$0.01\mathrm{\mu F/km}$とし、送電線の抵抗分は無視できるとするとき、次の問に答えよ。
なお、周波数は$50\mathrm{Hz}$とし、単位法における基準容量は$1000\mathrm{MVA}$、基準電圧は$500\mathrm{kV}$とする。

図1 送電系統図

$(1)$
送電線1回線1区間$100\mathrm{km}$を$\pi$形等価回路で,単位法で表した定数と併せて示せ。また送電系統全体(負荷謁相設備を除く)の等価回路図を図2としたとき、$\mathrm{A}\sim\mathrm{E}$に当てはまる単位法で表した定数を示せ。ただし全ての定数はそのインピーダンスで表すものとする。

図2 送電系統全体の等価回路図(負荷・調相設備を除く)

$(2)$
受電端の負荷が有効電力$800\mathrm{MW}$、無効電力$600\mathrm{Mvar}$(遅れ)であるとし、送電端の電圧を$1.03\ \mathrm{p.u.}$、中間開閉所の電圧を$1.02\ \mathrm{p.u.}$、受電端の電圧を$1.00\mathrm{p.u.}$とする場合に必要な中間開閉所と受電端の調相設備の容量$[\mathrm{MVA}]$(基準電圧における皮相電力値)をそれぞれ求めよ。

系統のリアクタンスの導出

$(1)$
1区間1回線あたりの$\pi$形等価回路を図3に示す。
系統全体を図3の回路に細かく分解し、各回路のリアクタンスを求めた後、それらを足し合わせることで系統全体のリアクタンス値を求めていく。

図3 $\pi$形等価回路(1回線1区間あたり)

図3において、送電線の誘導性リアクタンス$X_L$は、

$$X_L=2\pi\times50\times0.8\times10^{-3}\times100=25.132\Omega$$

次に、送電線の容量性リアクタンス$X_C$は、図3のように送電線の左右$50\mathrm{km}$に均等に分布することに注意して、

$$X_C=\frac{1}{2\pi\times50\times0.01\times10^{-6}\times50}=6366.4\Omega$$

ここで、基準容量$1000\mathrm{MVA},\ $基準電圧$500\mathrm{kV}$におけるベースインピーダンスの大きさ$Z_B$は、

$$Z_B=\frac{\left(500\times10^3\right)}{1000\times10^6}=250\Omega$$

したがって、送電線の各リアクタンスを単位法で表すと、

$$\begin{align*}
X_L&=\frac{25.132}{250}=0.10053\mathrm{p.u.}\\\\
X_C&=\frac{6366.4}{250}=25.466\mathrm{p.u.}
\end{align*}$$

次に、図2の2回線2区間の系統のリアクタンス値を求めていく。

まず、誘導性リアクタンス$\mathrm{A},\ \mathrm{B}$は、2回線並列であることより、

$$\mathrm{A}=\mathrm{B}=\frac{0.10053}{2}=0.050265\rightarrow\boldsymbol{\underline{0.050\mathrm{p.u.}}}$$

誘導性リアクタンスは、$\mathrm{C},\ \mathrm{E}$は2回線並列、$\mathrm{D}$は4回線並列であることより、

$$\begin{align*}
\mathrm{C}=\mathrm{E}&=\frac{25.466}{2}=12.733\rightarrow \boldsymbol{\underline{12.7\mathrm{p.u.}}}\\\\
\mathrm{D}&=\frac{25.47}{2}=6.3665\rightarrow\boldsymbol{\underline{6.37\mathrm{p.u.}}}
\end{align*}$$

各種電力の計算

送電端および受電端の電力の式を求める。
(以降はすべて単位法で記述する)

送電端電圧を$\dot{V_s}=V_s\angle\delta,\ $受電端電圧を$\dot{V_r}=V_r\angle 0,\ $直列リアクタンスを$jX_L$とすると、 端子間の電流$\dot{I}$は、

$$\dot{I}=\frac{V_s\angle\delta-V_r\angle 0}{jX_L}$$

送電端および受電端の複素電力をそれぞれ$\dot{S_s}=P_s+jQ_s$および$\dot{S_r}=P_r+jQ_r$とすると、

$$\begin{align*}
\dot{S_s}=P_s+jQ_s=\dot{V_s}\overline{\dot{I}}&=V_s\angle\delta\times\frac{V_s\angle-\delta -V_r\angle 0}{-jX_L}\\\\
&=j\frac{{V_s}^2-V_sV_r\angle\delta}{X_L}\\\\
&=\frac{j{V_s}^2-jV_sV_r(\cos\delta+j\sin\delta)}{X_L}\\\\
&=\frac{V_sV_r}{X_L}\sin\delta+j\frac{{V_s}^2-V_sV_r\cos\delta}{X_L} ・・・(1)\\\\\\
\dot{S_r}=P_r+jQ_r=\dot{V_r}\overline{\dot{I}}&=V_r\angle 0\times\frac{V_s\angle-\delta -V_r\angle 0}{-jX_L}\\\\
&=j\frac{V_sV_r\angle-\delta-{V_r}^2}{X_L}\\\\
&=\frac{jV_sV_r(\cos\delta-j\sin\delta)-j{V_r}^2}{X_L}\\\\
&=\frac{V_sV_r}{X_L}\sin\delta+j\frac{V_sV_r\cos\delta-{V_r}^2}{X_L} ・・・(2)
\end{align*}$$

題意より、送電線の抵抗分は無視できるため、線路損失分は考慮する必要がない。したがって、送電端および受電端の有効電力$P_s$および$P_r$は同一となり、$(1)$および$(2)$式の実部をとって、

$$P_s=\mathrm{Re}\left(\dot{S_s}\right)=P_r=\mathrm{Re}\left(\dot{S_r}\right)= \frac{V_sV_r}{X_L}\sin\delta ・・・(3)$$

また、送電端および受電端の無効電力$Q_s$および$Q_r$は、$(1)$および$(2)$式の虚部をとって、

$$\begin{align*}
Q_s=\mathrm{Im}\left(\dot{S_s}\right)=\frac{{V_s}^2-V_sV_r\cos\delta}{X_L} ・・・(4)\\\\
Q_r=\mathrm{Im}\left(\dot{S_r}\right)=\frac{V_sV_r\cos\delta-{V_r}^2}{X_L} ・・・(5)
\end{align*}$$

各区間の無効電力の計算

図1の系統において、無効電力の流れを図4に示す。
これらの値を順に計算していくことにより、最終的に求めたい調相設備の容量$Q_m$および$Q_r$を算出する。

図4 図1の系統の無効電力の流れ

送電端と中間開閉所の電圧の相差角を$\delta_1$、中間開閉所の電圧の相差角を$\delta_2$とすると、$(3)$式より、

$$\begin{align*}
\sin\delta_1=\frac{P_sX_L}{V_sV_r}=\frac{0.8\cdot0.050265}{1.03\cdot1.02}=0.038275\\\\
\sin\delta_2=\frac{P_sX_L}{V_sV_r}=\frac{0.8\cdot0.050265}{1.02\cdot1.00}=0.039424
\end{align*}$$

中間開閉所から受電端へ流れ出す無効電力$Q_{s2}$ は、$(4)$式より、

$$\begin{align*}
Q_{s2}=\frac{{V_s}^2-V_sV_r\cos\delta_2}{X_L}&=\frac{1.02^2-1.02\cdot1.00\cdot\sqrt{1-0.039424^2}-1.02^2}{0.050265}\\\\&=0.42162
\end{align*}$$

送電端から中間開閉所に流れ込む無効電力$Q_{r1}$、および中間開閉所から受電端に流れ込む無効電力$Q_{r2}$ は、$(5)$式より、

$$\begin{align*}
Q_{r1}=\frac{V_sV_r\cos\delta-{V_r}^2}{X_L}&=\frac{1.03\cdot1.02\cdot\sqrt{1-0.038275^2}-1.02^2}{0.050265}\\\\
&=0.18761\\\\
Q_{r2}=\frac{V_sV_r\cos\delta-{V_r}^2}{X_L}&=\frac{1.02\cdot1.00\cdot\sqrt{1-0.039424^2}-1.00^2}{0.050265}\\\\
&=0.38212
\end{align*}$$

送電線の充電容量$Q_D,\ Q_E$は、充電容量の式$Q=\omega CV^2$より、

$$\begin{align*}
Q_D=\frac{1.02^2}{6.3665}=0.16342\\\\
Q_E=\frac{1.00^2}{12.733}=0.07854
\end{align*} $$

調相設備容量の計算

送電端~中間開閉所区間の調相設備容量

中間開閉所に接続する調相設備の容量を$Q_{cm}$とすると、調相設備が消費する無効電力$Q_m$は、中間開閉所の電圧$[\mathrm{p.u.}]$に注意して、

$$Q_m=1.02^2\times Q_{cm}$$

中間開閉所における無効電力の流れを等式にすると、

$$\begin{align*}
Q_{r1}+Q_D+Q_m&=Q_{s2}\\\\
\therefore Q_{cm}&=\frac{Q_{s2}-Q_D-Q_{r1}}{1.02^2}\\\\
&=\frac{0.42162-0.16342-0.18761}{1.0404}\\\\
&=0.067849\mathrm{p.u.}\rightarrow\boldsymbol{\underline{67.8\mathrm{MVA}}}
\end{align*}$$

中間開閉所~受電端区間の調相設備容量

受電端に接続する調相設備の容量を$Q_{cr}$とすると、調相設備が消費する無効電力$Q_r$は、受電端の電圧$[\mathrm{p.u.}]$に注意して、

$$Q_r=1.00^2\times Q_{cr}$$

受電端における無効電力の流れを等式にすると、

$$\begin{align*}
Q_{r2}+Q_E+Q_r&=Q_{L}\\\\
\therefore Q_{cr}&=\frac{Q_L-Q_E-Q_{r2}}{1.00^2}\\\\
&=\frac{0.6-0.07854-0.38212}{1.00}\\\\
&=0.13934\mathrm{p.u.}\rightarrow\boldsymbol{\underline{139\mathrm{MVA}}}
\end{align*}$$